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第13話 砕け散った相棒





 帝都からの帰還後、私はすぐに格納庫へ向かった。

 北極海での無茶な機動、そしてリクを囮にした際の大出力の「歌」。

 愛機への負担が限界を超えていることは、操縦していた私自身が一番よく分かっていたからだ。


 格納庫の空気は重かった。

 整備班長のガンツが、腕組みをして私の竜を見上げている。

 その背中は、いつになく小さく見えた。


「……ガンツ」

「おう、帰ったか。お姫様」


 ガンツは振り返ったが、いつもの軽口には覇気がない。

 彼は噛んでいた葉巻を床に吐き捨て、竜の首元を親指で指した。


「結論から言うぞ。……こいつはもう、空を飛べねえ」


 予想していた言葉だった。それでも、心臓が凍りつくような衝撃が走る。

 私は竜の鼻先に手を伸ばした。

 いつもなら甘えるように鼻を擦り寄せてくるはずの相棒は、ピクリとも動かない。瞳は濁り、荒い呼吸だけが規則正しく繰り返されている。


「神経系が焼き切れてやがる。お前の『歌』の負荷に、脳と筋肉が耐えきれなかったんだ。……今のこいつは、心臓が動いてるだけの肉塊だ」

「……治せるんでしょう? パーツなら交換すればいい。魔石コアだって新品を――」

「無理だ」


 ガンツは私の言葉を遮った。


「機械の部分はどうにでもなる。だが、こいつは生き物だ。魂が壊れちまったもんは、俺の手には負えねえよ」


 私は唇を噛み、竜の冷たくなった装甲に額を押し当てた。

 私のせいだ。

 私が生き残るために、無理やり歌を聞かせ、こき使ったから。

 北極海でリクを犠牲にした報いが、こんな形で返ってきたのだ。


「……廃棄処分か」

「ああ。明日には処理班が来る。部品取りカニバリされて、残りは焼却炉行きだ」


 戦場の掟だ。

 使えない兵器に価値はない。

 私は拳を握りしめ、震える声で呟いた。


「……ごめんね。今までありがとう」


 それが、私に許された精一杯の弔いの言葉だった。


「――感傷に浸っている暇はないぞ、特務少尉」


 背後からヴォルゴフ少佐の声。

 彼は死にかけの竜を一瞥もしない。


「貴様には新しい辞令が出ている。帝國技術局・第9開発室へ出頭しろ。……そこで、貴様のためにあつらえた『新しい玩具』が待っている」


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