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第128話 高熱源体


 ドォォォォォォンッ!!


 炎の竜巻を突き破った黒銀の弾丸アヴェンジャーが、ウリエルの巨体に激突した。

 質量がぶつかり合う、耳をつんざくような金属音。

 だが、弾き飛ばされたのはウリエルの方だった。


『なッ……!? バカな、炎を突き抜けてきただと!?』


 ゲイルの驚愕の声。

 ウリエルは数メートル後退し、足元の凍土を削りながら踏みとどまる。

 その目前には、全身から湯気を上げ、装甲を赤熱させたアヴェンジャーが立ちふさがっていた。


 ジュッ、ジュウウウゥ……。

 アヴェンジャーの黒い装甲が、高熱でドロドロに赤く発光している。

 普通なら、内部の電子機器が焼き切れて機能停止するはずだ。

 だが、この怪物は止まらない。

 むしろ、先ほどよりもエンジンの回転数が跳ね上がっている。


「カイル、熱量変換コンバート! 全部吸い取って!」

『無茶言うな! ……畜生、ラジエーター逆転! 外部熱源を炉心へ直結する!』


 カイルが絶叫しながらキーを叩く。

 ブオォォォンッ!!

 アヴェンジャーの全身にある吸気口が全開になり、周囲の熱気を掃除機のように吸い込み始めた。


 私の体感温度は、もはや痛みを超えていた。

 皮膚が焼ける匂いがする。

 けれど、それ以上に、体の芯から湧き上がる爆発的なエネルギーが心地よかった。


「あぁ……美味しいッ!」


 私は操縦桿をねじ込んだ。

 アヴェンジャーが踏み込む。

 その一歩だけで、雪原がマグマのように溶解する。


『貴様……その機体、何をした!? 我が聖炎をエネルギーに変えているのか!?』


 ウリエルが再び火炎放射器を構える。

 だが、遅い。


「お代わりよ!」


 ガシィィィッ!!

 アヴェンジャーの左手が、ウリエルの火炎放射器ごと右腕を鷲掴みにした。

 接触。

 熱伝導。

 ウリエルの高熱装甲から、さらに直接、熱を奪い取る。


『離せッ! この……汚らわしいハイエナがッ!』


 ウリエルが抵抗し、左手の巨大なヒート・メイスを振り上げた。

 直撃すれば、アヴェンジャーの頭部など容易く粉砕する質量兵器。


「重い攻撃ね。……でも」


 私は背中の翼を羽ばたかせた。

 赤黒い光が噴出する。

 ミカエルの魔力と、ウリエルの熱エネルギー。

 二つの兄弟の力を合わせ飲んだ今、その出力は臨界点を超えていた。


「今の私は、もっと重い!」


 ズズズンッ……!!

 重力制御グラビティ・プレス

 振り下ろされようとしたメイスが、見えない鎖に引かれたように空中で静止し、そのまま地面へと叩きつけられた。


『ぐぅッ……機体が、動かん……!?』


「さあ、ご馳走の時間だ」


 私は無防備になったウリエルの胸板――その奥にある動力炉ハートに向けて、右腕を引いた。

 先端が溶解したタングステンのパイル

 それが今、吸収した膨大な熱エネルギーを帯びて、太陽のように白く輝いている。


『やめろ……来るな……ッ!』


「いただきまァすッ!!」


 ズドォォォォォォォォッ!!!!!


 至近距離からの、全力のパイルバンカー。

 白熱した杭が、ウリエルの分厚い増加装甲に突き刺さる。

 貫通音ではない。

 「溶解音」だ。


 ドロリ。

 数千度の熱を持った杭が、帝國自慢の超硬合金を飴細工のように溶かし、その奥へと侵入していく。


『ギャアアアアアアッ!! 熱いッ! コクピットがッ!』


 ゲイルの悲鳴が響き渡る。

 だが、まだだ。

 ウリエルの装甲はあまりにも分厚い。

 ミカエルの時とは違い、一撃では炉心まで届かない。


「硬い……! さすがは重装甲ね!」

『当たり前だ! ウリエルは難攻不落の要塞! 貴様のような小汚い牙で噛み砕けるものかッ!』


 ウリエルが全スラスターを逆噴射させ、アヴェンジャーを強引に引き剥がそうとする。

 杭が抜けかかる。

 チャンスは一瞬。


「噛み砕けないなら……飲み込むまでよ!」


 私はさらにアクセルを踏み込んだ。

 機体の全エネルギーを、右腕の杭一点に集中させる。

 アヴェンジャーの腕が、過負荷でバチバチと火花を散らし、黒い外装が弾け飛んだ。

 中から剥き出しになったシリンダーが、筋肉のように脈打つ。


けぇぇぇぇッ!!」


 ジュワァァァァッ!!

 二度目の爆発的な加圧。

 杭がさらに奥へとねじ込まれ、ついにウリエルの強固な胸部装甲を「溶断」した。


 バキィィィィンッ!!

 装甲板が砕け散り、ウリエルの内部フレームが露わになる。

 そこには、赤く脈打つ巨大な動力炉が、恐怖に震える心臓のように鎮座していた。


「見えた」


 私は舌なめずりをした。

 メインディッシュが、湯気を立てて私を待っている。


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