第126話 極北の火葬場
ドォォォォォン……!
最後の1機が、アヴェンジャーの裏拳で弾き飛ばされ、岩肌に激突して爆散した。
戦闘時間、3分。
一方的な蹂躙だった。
『……反応なし。全機沈黙を確認』
カイルの声にも、安堵より呆れが混じっている。
雪原には、無惨にひしゃげた鉄屑と、黒いオイルの染みが点々と広がっているだけだ。
私は右腕のパイルバンカーを一度も使わなかった。
使うまでもなかったのだ。
「……不味そう」
私は足元に転がる残骸を見下ろして吐き捨てた。
彼らの機体から漏れ出る魔力は、薄くて、臭くて、雑味だらけだ。
今の私の舌を満足させるには程遠い。
「行きましょう。
こんなところで道草を食っている暇はないわ」
私はスロットルを開いた。
アヴェンジャーが再び浮上し、吹雪く峠を越える。
数十分後。
猛烈な風雪がふと止み、視界が開けた。
「……あれか」
眼下に広がる光景に、私は目を細めた。
すり鉢状の盆地の中に、鋼鉄と氷で作られた巨大な要塞都市が鎮座している。
帝國北都、ガレリア。
無数の煙突から白い蒸気が立ち上り、都市全体が巨大な工場のようだ。
だが、私の目は街の明かりなど見ていなかった。
都市の中央。
帝國軍の司令部があるあたりに、とてつもなく巨大で、強烈な「熱源」が渦巻いているのが見える。
『おいおい……なんだあの数値は』
カイルが息を呑んだ。
レーダーの熱源反応が、真っ赤に振り切れている。
『都市の暖房設備じゃない。
たった1機……いや、1個の反応炉が、街全体を温めるほどの熱量を垂れ流してやがる』
「見つけた」
私は思わず、コクピットのガラスに手を這わせた。
間違いない。
この匂い。この圧力。
ミカエルと同じ、いや、それ以上に暴力的で純度の高い魔力の奔流。
ウリエルだ。
あそこにあるのは、ただの兵器じゃない。
地上に縛り付けられた太陽だ。
「……いい匂い」
私の胃袋が、ゴクリと鳴った気がした。
背中のミカエルの翼が、共鳴して微かに震えている。
寒い。外はマイナス30度だ。
けれど、あの中心部だけは、きっと肉が焦げるほど熱いのだろう。
「カイル、招待状を送る必要はないわね」
私はニヤリと笑った。
向こうも気づいているはずだ。
この極寒の空に、同族を喰らった「異物」が近づいてきていることに。
「正面玄関からお邪魔しましょう。
……冷めないうちに、いただきに行かなくちゃ」
私はアヴェンジャーを急降下させた。
黒銀の怪物が、雪の要塞都市へと舞い降りる。
静かな夜は終わりだ。
これより先は、焦熱の晩餐会となる。




