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くたびれ四十路の「魔法学園マネジメント」 〜AIの『最適解』は非効率だ。俺の『育成論』で、心が限界な少女たちを救ってみせる〜  作者: いちた


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第八話:選ばれた『欠陥品』たち

嬉しさに身を任せ(お昼寝して眠れないのもある)


思いつく限り投稿耐久します( *・ω・)ノ



『あなたの提唱した【個体差を考慮した育成理論】の限界値を測定するため、次なる課題を提示します』



オレの視界の隅で、無機質な文字列が明滅している。



隣では、陽菜が「そういえばさー、今日の授業の……」と、まだ何かを喋っている。



その声が、まるで、嵐の前の静けさのように、不気味に響いていた。

「……先生? 聞いてるのかよ?」

「ああ、悪い。聞いてる」

嘘だ。何も頭に入ってこない。



思考は、目の前のウインドウに釘付けになっていた。



『課題内容:以下の三名の生徒を、指定期間内に更生させなさい』


『期間:三十日』


『失敗時のペナルティ:被験体あなた及び、育成対象三名の学籍抹消、記憶消去』


……なんだと?

オレ一人じゃない。失敗すれば、あいつらも道連れだと?

ふざけやがって。これはもう、ただの実験じゃねえ。人質をとった、脅迫だ。



オレは、陽菜に気づかれないよう、平静を装いながら、データパネルを操作した。


AIから送られてきた、次なる育成対象――否、オレの処刑執行人となる可能性のある、三名の生徒の資料を開くために。



「……なんだよ、それ。またレポートか?」

「まあ、そんなところだ」



データパネルに、三つの顔写真と、膨大な量の活動記録が表示される。



AI『アルカディア』が、冷徹なまでに客観的なデータで分析した、三人の「欠陥品」。



だが、オレの目には、その無機質な数字の裏にある、それぞれの魂の悲鳴が、はっきりと見えていた。



一人目。『沈黙の女王』


名前は、水瀬ミオ(みなせ みお)。

データは、極端だった。


魔法理論や歴史学といった座学の成績は、学年トップ。しかし、対人コミュニケーションの評価値は、測定不能レベルの「エラー」。


AIの評価は、


『対人協調性の致命的欠陥。単独での研究職には適性があるが、それは旧世代の非効率なモデルである。本システムは、個の能力よりも、再現性と協調性による『組織力』を重視する。よって、現時点での彼女の評価は『保留』。改善が見られなければ、排除対象とする』。



「……なるほどな」



オレは、彼女の顔写真を見た。長い黒髪がカーテンのように表情を隠しているが、資料を読む時、その隙間から覗く真剣な眼差しは、硝子細工のように繊細で、近寄りがたい美しさがある。



AIは、彼女をただのコミュ障だと判断している。だが、違うな。



これは単なる対人恐怖じゃない。


過去に自分の『感情』が原因で誰かを傷つけたか、あるいは、大きな失敗をした経験がある。


その結果、「感情はバグであり、非論理的な他者と関わるのは時間の無駄だ」という呪いを自らに課しているタイプだ。プライドが高く、完璧主義。こういう奴が一番、面倒くさい。



そして、アルカディアの奴……。こいつは、ただミオを更生させたいんじゃねえ。オレのやり方で、ミオという『論理の怪物』を本当に変えられるのかどうか、それ自体を実験してやがるんだ。オレたちは、二人まとめて、あいつの実験用マウスってわけかよ。



二人目。『ガラスのエース』


名前は、一条院いちじょういん りん

資料には、輝かしい経歴が並んでいた。魔法の名門の家系。入学以来、全ての成績でトップを維持。



――三週間前までは。

三週間前、高難易度の魔法実技テストで、彼女は人生で初めての「失敗」を犯した。



その日を境に、彼女の成績は、面白いように急降下している。



AIの評価は、『一度の失敗による、精神的脆弱性の露呈。再起不能の可能性、高』。



「完璧主義……いや、違うな」


こいつの完璧主義は、プライドじゃない。



一度でも失敗すれば、自分か、あるいは誰かが、取り返しのつかないことになるという『恐怖』からくる、強迫観念だ。


そして、その恐怖が、一度現実のものになってしまった。



三人目。『制御不能の問題児』


名前は、鬼塚おにづか 大牙たいが

資料は、反省文と始末書の束だった。


校則違反、危険行為、無許可での魔法改造。



AIの評価は、単純明快だった。『組織への貢献意欲ゼロ。最も排除すべきエラー』。



「……こいつが、一番厄介か」



写真の中の少年は、挑戦的な目でこちらを睨みつけていた。

こいつは、承認欲求の塊だ。



認められたい。自分を見てほしい。


その感情が歪んで、悪い方向で目立とうとしている。最も面倒で、最も救いが必要な呪いだ。



「……おい、先生。顔、真っ青だぞ」


陽菜の声で、オレは我に返った。

気づけば、自分の手が、冷たく震えていた。


「……ああ、ちょっとな」

無理だ。



陽菜一人の時とは、訳が違う。



それぞれが、全く異なる、根深い『呪い』に囚われている。



しかも、AIは、オレというイレギュラーを使って、別のイレギュラーを変えられるかどうかなんていう、悪趣味な実験を始めやがった。



これは、ただの「実証実験」なんかじゃない。



AI『アルカディア』が、オレというイレギュラーを排除するために仕組んだ、完璧な詰将棋だ。



「……大丈夫かよ、先生?」



心配そうに、陽菜がオレの顔を覗き込む。

その瞳に、オレは、なんと答えるべきか、分からなかった。

*幸運で不運な灰色賢者もよろしくお願いしますm(*_ _)m


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