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くたびれ四十路の「魔法学園マネジメント」 〜AIの『最適解』は非効率だ。俺の『育成論』で、心が限界な少女たちを救ってみせる〜  作者: いちた


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第二話:雨と打算と、ほんの少しの同情と



AI『アルカディア』から、理不尽極まりない「実証実験」を宣告されてから数日。



オレは放課後の校舎を、品定めでもする専門家のように、目的もなく歩き回っていた。



いや、目的はある。



オレのクソみたいな二度目の人生を、記憶消去というバッドエンドから救い出すための、「被験体」探しだ。



「……どいつもこいつも、帯に短したすきに長し、だな」



廊下ですれ違う生徒たちを、オレは元人事コンサルの目で冷静に分析する。



あいつは魔力量は多いが、見るからにプライドが高すぎる。オレのような胡散臭い男の助言など、素直に聞く耳を持つまい。却下だ。



そっちのグループは、仲は良さそうだが、全員が中途半端なところで満足している。向上心のない人間に何を教えても無駄だ。これも却下。



オレが探しているのは、ダイヤモンドの原石なんかじゃない。


石ころでいい。いや、泥にまみれた、誰からも見向きもされない石ころの方がいい。


崖っぷちで、藁にもすがりたい。そんな、心に「隙」のある生徒。



そういう人間の方が、こちらの育成理論を素直に吸収し、劇的な「成功事例」になる可能性を秘めている。


そうやって、獲物を探すハイエナのように校内を徘徊していた、雨の日の放課後だった。


中庭に面した渡り廊下で、オレは足を止めた。


ザーザーと降りしきる雨の中、ずぶ濡れになりながら、一人、魔法の練習を繰り返している生徒がいたからだ。







「……見つけた」

思わず、口からそんな言葉が漏れた。



オレの生存戦略の、最初の駒。


高坂陽菜。クラスメイトの、確かそんな名前だったか。

彼女は、小柄だった。


雨に打たれた短い黄色の髪が、白い頬に張り付いている。


校舎の中からでもわかるほど、その体は小さく震えていた。


寒さのせいか、あるいは、別の何かなのか。


腕を組み、何かを睨みつけるようにして、呪文を呟いている。


その瞳には、勝ち気で、意地っ張りな光が宿っていたが、その奥に、今にも泣き出しそうな脆さが透けて見えた。



小動物みたいに、全身で威嚇しながら、その実、何かに怯えている。そんな印象だった。


彼女が放つ魔法は、ことごとく安定しない。


小さな光が生まれ、すぐに霧散する。そのたびに、彼女は唇を噛みしめ、「……もっと!」と自分を叱咤する。



それは、練習というより、ほとんど自傷行為に近かった。

――最高の「被験体」だ。



親友が成績不振で退学になったという噂も聞いている。AIの評価に怯え、精神的に追い詰められているのは間違いない。



ここから彼女を更生させれば、AIへのこれ以上ないプレゼンテーションになる。



冷たい打算が、オレの頭を支配する。



そうだ、あいつを利用するんだ。そうすれば、オレは助かる。


そう思った、はずだった。



だが、彼女の、雨に濡れて震えるその後ろ姿が、どうしても、あの日の後輩と重なって見えた。

「すみません」と、消え入りそうな声で謝ることしかできなかった、あの不器用な後輩の姿と。



「……クソ」


胸の奥が、チリリと痛む。


四十年間、とっくに捨てたはずの、面倒くさい感情。


後悔、という名の、最も非効率なガラクタ。


オレは舌打ちを一つすると、雨が降りしきる中庭へと続く扉に、手をかけた。


平穏な生活は、どうやら、この世界でもオレには許されないらしい。

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