表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/4

最終話 願いを捨てた国の末路

かつて、聖女ラナのいた国――ガルセリナ王国。


民は繁栄を謳い、王族は贅沢を重ね、

その中心にいた少女の存在を、誰もが忘れたふりをした。


彼女がいなくなってから、一年。


国は静かに、だが確実に、崩れていった。



最初は些細な変化だった。

作物が育ちにくくなり、井戸の水が濁った。


だが、それが“彼女がいなくなったせい”だと気づく者は少なかった。


それでも、崩壊は加速した。


王族たちの病が次々と悪化し、

貴族の財産は不自然なほど目減りしていった。


「ラナ様の“願い”が、私たちを支えていたのでは……」

「いや、まさか……」


気づいたときには、遅すぎた。


セシリアは夜な夜な鏡を見て、泣き喚いた。


「こんな醜い顔……私じゃない……!!」

「どうして!? あの女を捨てただけなのに!!」


アレスト王子は、床に伏していた。


「ラナ……戻ってきてくれ……なあ……ラナ……」

「もう、お前の願いにすがらないと……生きていけない……」



やがて、民は国を捨て始めた。

病と飢えに耐えきれず、隣国を目指して逃げ出す者も現れた。


そして噂は流れた。


「隣国には、天女のように美しい姫がいる」

「彼女は、ただ微笑んでいるだけで――花が咲き、国が富んでいく」


それがラナだと知った者たちは、恐怖に震えた。


自らが捨てた少女が、

世界を照らす“希望そのもの”だったのだと。


取り返そうとしても、もう遅い。


ラナは、“幸せになる”ことを選んだ。

誰の願いも叶えず、ただ“愛されて、愛する”ことで。


それが、世界に祝福をもたらし、

ラナを捨てた者たちには、破滅を落とした。


――こうして、ガルセリナ王国は滅んだ。


「願いを叶える少女」を、

最後まで道具としてしか見なかった者たちに、救いなど、与えられなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
隣国の天女の噂が流れてきた時にはもう奪い返そうとする気力もなかったか 素晴らしい因果応報
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ