幸せ捕まえた
沈黙に耐え切れず、声を殺して話し出す。
「将来の夢とかあるの?」
5分後生きているか怪しいこの状況で、我ながらナンセンスな質問だとは思っている。しかしながら沈黙の方がナンセンスだ、今日行った遊園地の乗り物待ちの2時間も終始『2人共待ってる乗り物乗りたくないコント』をしていた。
「力士」
こいつ、また。
「…なれないよね。だって私、女の子だもん」
楓は泣きじゃくる真似をしている。
「あぁ、現実はそうあまくない、お前が力士になれる可能性は、ゼロパーセントだ」
俺はパソコンを打ちながら、眼鏡をあげる仕草をする。
「私ってバカね。データキャラにこんな話して。…本当、バカ。涙ツー」
「ただし!無理だと分かっても!諦めないその姿勢!100パーセントだ!!」
あえて楓のほうを見ずに夕日に向かって叫ぶ。夕日ないけど。
楓がお腹を押さえて爆笑している。「意味分かんない」と言いながらヒーヒーいってる彼女をみていると、こんな薄暗い倉庫でも日常を感じられる。
ふと騒ぎ過ぎたと思い、恐る恐る殺人鬼の方を覗く。
よかった、ちょうどワイヤレスイヤホンでAVのサンプル再生してるところだ。
まだまだ予断は許さないな。
かくれんぼはまだまだ続く。