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#99

 軽トラックへ乗り込んだ山氏に促され、アヤメが助手席へ、エイイチは荷台に乗り込んだ。名目上、エイイチは荷台に積んだ猟銃などの見張り番である。


「エイイチ様、やはり私が荷台へ移りましょうか?」

「平気ですって。こういうの憧れてたんですよ。吹きざらしってのも気持ちがいい」


 足を大きく広げて、膝を立て。車体に深く背をあずける。荷台が地平線の代わりとなって、視界は山の緑と空の青さだけで彩られる。座り心地は決していいとは言えないが、尻の痛みも気にならない清々しさで満たされる。


「け。ロードムービーじゃねんだぞ」


 エイイチの余裕を消し飛ばしてやろうと、アクセルを踏み込む山氏。だが荷台からは楽しげな口笛が聞こえ、山氏は舌を鳴らした。


「盆地だっつーのに、寒くねぇんかあいつは」

「フ。そんなヤワなお人ではございませんよ、エイイチ様は」


 アヤメが目をかけている男を自慢した瞬間、後方で“ぶえっくしょんッ!”と大きなくしゃみが響き渡った。直後にはずるずると鼻水をすする音。


「……毛布などは積んでいないのでしょうか?」

「ねぇよ」


 高校の敷地外へ出ると、軽トラックは狼戻館とは逆方向の山へと進路を向ける。町は周囲を山に囲まれている。無論、広大な山々のどこだろうと狼戻館のナワバリに違いないが、昨今はあまり足を運んでいない行き先といえる。


「普段はあちらで狩りを?」

「まぁな。けんど、あっちはあっちでうるせぇのがいてよ。古い豪族だか知らねぇが、“雅角(がかく)家”とかいう奴らがでけぇ顔して難癖つけてきやがる」

「雅角……そうですか。まだ、健在で……」

「んだ、知り合いか?」


 アヤメは何も答えなかった。表情の変化は見えないが、口をつぐむには相応の理由があるのだろう。山氏も深入りはしない。すねに傷を持つのはお互い様だ。


「あ。山氏のおっさん、ちょっとそこ曲がってくれない?」


 荷台へ乗っているがために二人の会話は届いておらず、エイイチは緊張感のない声で進路変更を要求した。


「だからドライブじゃねえって言ってるべ!」

「たのむよ。ほんと少し確認するだけだから」


 何をたしかめるというのだろうか。どうせエイイチの希望に沿ってもろくなことにはならない。

 そう確信しているのだが、助手席のアヤメが“エイイチの言う通りにしろ”と睨みつけてくるため、山氏は本日何度目かの舌打ちをしてハンドルを切る。


 細い私道を進んでいくと田園風景が広がり、ここでエイイチは車を停めるよう車体をノックした。荷台に立って、少し離れた田んぼの中心を凝視している。


「こんな、なんもねぇとこで。どういうつもりだあんにゃろう」


 ウインドウ全開の窓枠に肘をかけ、苛々とハンドルを叩く山氏。

 アヤメも疑問には思うのだろう。固まったように動かないエイイチへと、つい声をかける。


「エイイチ様……?」


 変わらずエイイチは一点を見つめている。視線の先には何もない。静かな田んぼには、今は鳥や虫の飛ぶ姿さえない。

 しかしエイイチが見つめる先には、あのギャルシスター、シオンが住んでいるという教会がたしかに在ったのだ。幾度か訪れたエイイチの記憶違いではなく、確実に先日までは存在していた。


 エイイチは田んぼから目をそらさず、人差し指で自身のこめかみをトン、トン、と打つ。


「…………そっか。まだ、わからないのか」


 誰にともなく、エイイチが呟いた。のどかな田園は何も応じることはない。


「いい加減にしろやエイイチ! 遊びじゃねんだぞ!」

「ごめんごめん。よし、行こう」


 待ちくたびれたように軽トラックが急発進したため、エイイチは無様に荷台へ尻餅をついた。

 後ろへ振り返ったままの姿勢で、アヤメは固唾を飲む。身を案じる言葉を投げるのも忘れて、エイイチの横顔に見入っている。深い洞察へと沈んでいる、あれはそういう瞳だ。彼方へ手が届きそうで、届かない。もどかしさの中で真実(こたえ)を探すエイイチの表情は、滅多に見せるものではなかった。その真摯な仕草はどこか、アヤメの胸を打つものだった。




 一度国道へ出たものの、軽トラックはすぐにまた私道をまたぐ。民家も途切れ、しばらく砂利道に揺られれば、軽トラックでは進入が不可能な林道へ差し掛かった。

 下車した一行は、猟銃を担いだ山氏を先頭に山へ分け入っていく。


「――見ろ。くくり罠を仕掛け直した痕跡がある。ジェイクがここに来てた動かぬ証拠だべ」


 カムフラージュ用に被せられた落ち葉の状態からみても、直近の仕掛けであることは疑いようがない。付近の獣道に誘引餌として撒かれた糠も同様に新しい。


「ジェイク様はともかく……クロユリ様が一緒におられる、という確証はまだ得られませんね」

「知るか、そりゃおめぇらの都合だ。おらぁこのまま山さ登る」


 山氏は言葉通りに傾斜をずんずん上がっていく。同行者を気にもとめない速度だが、さすがにアヤメは息も切らさずついていく。

 エイイチも口数は激減したが、なんとか食らいついている。今日は朝からマリと全力疾走した経緯もある。普段だらだらと過ごしている分、よけいにしんどそうだ。


「遭遇戦に備えて、余力を残した速度で登るのがよろしいかと。それとも、猟幽會(同胞)の絆は私が想像していたよりもずっと固いということでしょうか」


 エイイチを気遣い、山氏の歩行速度を少しでも緩めようと画策したアヤメの発言だった。


「……おらぁもジェイクも戦士だ。相手が誰だろうと、やり合って命を落とすのは惜しくねぇ。だがよ」


 山氏の返答は、おそらく誰も予想できなかった意外過ぎるものだ。


「ここは学校からそんな離れちゃいねぇべ。近くに住んでる生徒だっていんだ。訳のわかんねぇのに居座られっと、あいつらに被害が出ちまう可能性があんだよ」


 だから急ぐのだと。血みどろの争いに明け暮れていた男にも、真実を知り己を見つめ直す時間が等しく与えられていたのだ。

 逆に足が止まってしまったアヤメを、山氏が呆れ顔で振り返る。


「もう疲れたべか? 狼戻館のメイドが聞いて呆れる」

「なにを馬鹿な。かつての猟幽會のイメージと、あまりに異なる言動に少々驚いたまでです」

「勘違いすんな。前はイレヴンの意のままに動かされちゃいたが、今はそうじゃなくなったってだけの話だ。おめぇらの味方になったわけじゃねぇべ」


 月の民による、地球の支配を目論んでいたイレヴン。思想を継ぐ者が現れておらず、組織を強固にまとめる者も不在であれば、結局のところ狼戻館にとって危険視するほどの相手足り得ない。この点、館の住人の見解は一致している。自由意志で各々好き勝手に生活を送る分には、猟幽會といえどそこらの異形と変わりない。


 アヤメと山氏が立ち話をしている間に、エイイチが息を切らしながらも二人へ追いついた。


「感動した、はあ、はあ、なんて生徒想いなおっさんなんだ、用務員なのに」

「け、うるせぇ。おめぇのことはとくに許してねぇからな、エイイチ」

「でも、じゃあ盗撮なんか尚更やめるべきだ! 大事な生徒をそんな使い方すんのは違うだろ!」

「ああ!? 盗撮ぅ!? ぶっ殺すぞおめぇ!」


 あらぬ濡れ衣を着せられ、激昂した山氏が散弾銃の銃口をエイイチへ突きつけた、そのときだ。


「――し。お二人とも、お静かに」


 警告を発すると同時、アヤメは脇の茂みに身を隠す。山氏も状況を理解したのか、傍らの大木へと背をあずける。

 エイイチは二人の間をおろおろと右往左往し、最終的にその場へ伏せた。何もしないよりはマシ、という程度の身の置き方だった。


 山頂付近の、木々の途切れた場所である。三名の前方、陽光が差し込む丘に何かがいる。光はその何かを透過する際に屈折し、まるで蜃気楼のごとく対象を浮かび上がらせている。透明だが目視可能な揺らぎ。


「……光学迷彩か? おめぇらんとこの、蛾の異形も似たようなことやってたべな」

「目の前のアレが、マリ様の仕業だとでも? ご冗談を」


 山氏ことY氏とマリが、ボイラー室で繰り広げた死闘。マリは鱗粉を利用して、環境に擬態する能力を行使していた。だが近年でマリがあの能力を披露したのは、Y氏との一戦のみだ。

 表向きツキハのような策略家を気取りながら、マリは往々にして腕っぷしで解決を図る。なぜか? ガチンコの腕力で制圧した方が勝った気になるからだ。近しい者にはよく知られた待雪マリの本質である。


「先にぶっ放す。文句ねぇな?」


 返事は待たず、山氏は猟銃を肩越しに構えた。片目を閉じ、透明に揺らいだまま動かない対象へ狙いをつける。

 アヤメも異論はないようで、状況を見守りつつ、メイド服のスカートをたくし上げてガーターベルトのナイフに手を伸ばす。

 伏せたエイイチからは、ストッキング履きのアヤメの尻が丸見えだった。だが生い茂る草が邪魔だった。頭をぐりぐり左右に振って必死に草の根を掻き分けている。


 静寂を破り、ドン! ――と腹に響く重低音。

 リーサル型のスラッグ弾が射出された瞬間、対象の位置で土が横にバッと跳ねる。身を躱したのだ。


「擬態も見えてちゃ意味ねぇぞ!」


 猟幽會のY氏といえば、銃弾の軌道を自在に変化させる。飛行するマリをも追い詰めた実績がある。

 草花を撒き散らして移動する対象へ、弧を描くスラッグ弾が側面から突き刺さった。金属製の弾頭が割れ、無数の破片が対象をズタズタに破壊する。――だが、結果は覆された。


 人の大きさほどの対象に命中したスラッグ弾は、輝く金属片をパラパラと地に落とす。致命傷を与えることなく、足止めすら叶わず。瞳がどこにあるかもわからないが、対象はゆらゆらとまるで漂いながら、たしかに山氏をじっと見ていた。


「当たったはずだべ……ッ」


 アヤメがすぐさま駆ける。逆手にはすでに抜き取った銀のナイフを握っている。遠距離が駄目なら近接にて確実に急所を狙う。

 目眩ましに投げた棒手裏剣は、スラッグ弾同様に地へ落ちた。構わない、本命はこちら。一瞬のフェイントを挟み、アヤメが振るうナイフが対象の頭と思しき部位へ突き立った。


「――く……っ!」


 感触はある。けれど刃先は透明な対象の奥まで入らない(・・・・・・・)。力を込めるアヤメの手だけがぶるぶると震えている。

 対象が腕のようなものを反撃に用いた。一、二、三、四連目の打撃を腹部に受け、アヤメが呻き声をもらしながら後方へ飛び退く。

 何なのだ、これは。人か、動物か化物か。それも定かではない。


 猟銃の発砲音が轟き、スラッグ弾が対象に再び命中した。ダメージはなくとも、敵意を引くには十分だ。


「行け! メイド! こいつはおらぁが引き受けてやらぁ!」


 合理的な山氏の判断だった。そうする他なかった。敵は得体が知れな過ぎる。勝ちの線は薄いが、こんなもの(・・・・・)がいるのなら目的のジェイクやクロユリが先で身を隠しているような可能性はある。もちろんすでにやられていることも考えられるが、それはそれだ。

 山氏の言葉に嘘はない。戦いの中で果てるなら本望なのだ。


 同じく合理性を好むアヤメも、意図を汲み取って対象の隙をうかがう。


「おらどうした! かかってこいや木偶!」


 スラッグ弾の一撃を、対象はうざったそうに今度は払い落とした。土くれを蹴り、山氏へと一直線に向かっていく。

 ここを逃すまいと、エイイチを連れていくためにアヤメが振り向いたときだった。


「こっちだあああああ!! 来おおおいッ!!」


 山彦が生じるほどの大声で、エイイチが叫んだのだ。


「な――」


 敵に集中していた山氏まで振り返ってしまう衝撃。対象は山氏の脇を駆け抜け、標的をエイイチへと変えたようだ。


「エイイチ様!」


 アヤメが悲痛に名を呼んだ。それはそうだ、無謀が過ぎた。狼戻館の住人と猟幽會のエージェントが揃って歯が立たない相手なのだ。


 等間隔に土が舞い、透明な揺らぎが眼前に迫る中、エイイチは馬鹿みたいに棒立ちだった。勝算もなく敵の気を引く無能。無意味に命を散らす愚行。空々しい自己犠牲は誰も幸せにならない。


 見ていたならわかるはずだ。今、この山を支配しているのがどんな化物であるか。否、わかっているからエイイチは呼び寄せたのかもしれない。


 山の――古からの本当の支配者を。


「おまえじゃない」


 空が、黒く陰った。太陽を背に、漆黒の塊が真っ逆さまに落ちてくる。

 縦に回転しながら急降下する黒毛の大狼――ガンピール。黒狼は遠心力を最大限に活用し、咥えた剣を対象に叩きつけた。


 地面の広範囲が深く抉れる。落ち葉も草花も土も、噴水のごとく高く舞い上がる。雨みたいな土くれを浴びながら、エイイチはにっこりと微笑んだ。


「よぉ~どこ行ってたんだよガンピール! 最近見なかったからさあ!」


 誇らしげに咥えた剣を掲げるガンピールを、エイイチがわしゃわしゃ撫でまくる。エイイチは言わずもがな、泥だらけながらガンピールも「へっへっ」と口角を上げているようである。


 駆けつけたアヤメと山氏が地面を見下ろすと、そこには透明化が解除された“対象”が横たわっていた。

 緑に色づく毛で覆われた猿のような外見。腕は左右に二本ずつ、計四本。太い牙に、三つの瞳。異形の猿は、真っ二つに断ち斬られて絶命していた。


「ひとつ聞くが、地球上にこんな動物いんのか? もしくは名のある化物か?」

「いえ……」


 山氏の疑問に短く答え、エイイチと戯れるガンピールへと視線を移すアヤメ。咥えた剣はガンピールが見つけたお宝、ツキハをして地球上で見たことがないと言う金属や宝石があしらわれたものだ。


「その剣は、いったい」


 アヤメが呟いたのち、猿の異形は粒子となって大気中へと霧散した。もはや化物の痕跡は何も残っていない。


「うわぁ……ホラーだなぁ、これ」


 この場においてはさすがのアヤメも、エイイチの感想を否定するだけの材料は見つけられなかった。




 三人に狼を加えた一行は、そのまま山頂へ向かった。そして岩場の後ろで糸の切れた人形のように座り込む、捜索していた二名を発見する。


「ジェイク! 何があった!? おい!」


 山氏がジェイクの頬を叩き、脈を取る。気を失ってはいるが目立つ外傷もなく、息はあるようだ。


 歩み出たエイイチがもう一人の失踪者、クロユリの前へと立ち尽くす。こちらも意識はなく、はだけた桜柄の着物から褐色の肌が覗いている。


「こ、これは」

「エイイチ様……」


 よく見たら下駄の鼻緒も切れている。山道を逃げ惑ったのかもしれない。クロユリの苦難を思ってなのか、エイイチは微かに震えて言葉を絞り出す。


「か……褐色合法ロリ」

「は?」


 周囲の怪訝な視線に気づいたのか、エイイチはハッと口もとに手をあてるがもう遅い。取り消せない失言を恥じるように取り繕う。


「あ、あれ? なんで俺こんな下品な台詞を! ち、違うんですこんなこと言うつもりじゃ……!」

「……ひとまず車に運びましょう」


 エイイチにホラーを忘れさせるのは簡単かもしれない。アヤメはクロユリを抱えつつひとり納得するのだった。



◇◇◇



 放課後となり、夕暮れの田んぼ道を下校するマリの前に、ひとりの少女が立ち塞がる。

 派手なグラデーションカラーの髪色、修道服にブーツの異色な出で立ち。

 マリはスクールバッグをアスファルトに置き、肩を回して臨戦態勢へと移行する。少女の正体を察したのだ。驚きの速さで背には翅も展開している。


「泥棒猫。あなたが、エイイチくんの」

「わお。怖っわぁ。問答無用って感じぃ?」


 言葉とは裏腹にシオンは笑みを浮かべ、片手で指輪っかを形作った。


「雑召ょーか――」


 言い終わらない内に空間が歪む。ブラックホールのごとき穴がシオンの顔、すぐ隣に出現する。


「――……え?」


 驚愕に目を見開いたのはシオン本人(・・・・・)だった。なぜなら術はまだ発動していない。穴を振り向き、次の瞬間には咄嗟に顔面を腕で庇う。

 穴から飛び出してきた真っ赤な拳に殴りつけられ、シオンは後ずさりしつつ体勢を整えた。


「ベストタイミングってやつだろ。なあ、マリ」


 空間から出現したのはセンジュだ。トレーニングウェアで地上に降り立つセンジュは、マリに並ぶと不敵な犬歯を見せつけて笑う。

 何しに来たの? とマリはセンジュを一瞥するも、まあいいかとシオンへ向き直る。


「狼戻館の異形が二人、かぁ。手っ取り早くていいね」


 赤く手形の残る腕をさすり、シオンは半目ながらも圧のある眼光で二人を見据えた。

 マリは当然怯みなどみせず、正面から応じる。


「ふ。あなたが相手してるのは、エロゲーのヒロイン二人だよ。気をつけた方がいい」


 センジュは思わずマリを二度見した。何を言ってるのだろうかこいつは、正気か? と耳を疑った。


 どうしてマリがこんな珍妙な発言をするに至ったのか。先にも述べたマリの本質に起因する。

 マリは戦闘において直接的な暴力を好む。好むが、本人は策略家を常に気取っている。有り体に言えば無意識にツキハの真似事をしている。

 そして不服なことではあるが、シオンはエイイチと関わりのある女である。多少強引でも周囲からエロゲー色に染めていけば、巡り巡ってエイイチを騙す際のひと押しとなるはずだと。

 つまりは、マリなりの搦め手なのだった。


「ね。センジュ」

「あ、え!?」


 しかし事前にそんな話も聞かされていないセンジュは狼狽するしかない。真剣なマリの顔と、半目で何を考えてるかわからないシオンの顔。二つをせわしなく見比べて、覚悟を決める。


「あ、う、ああ! え、えええっちなゲームのあたしら相手に、パパパンツ脱ぐくらいで済むと思うなよああッ!?」


 耳の先まで真っ赤に茹であがってまで、どうしても言わなければならない台詞だったのだろうか。涙目になったセンジュは労しい限りだが、マリはなぜか得意気に腕を組んでいる。


 まるで意味がわからないながら、シオンは思う。

 この二人に負けたら何をされるのだろうか、少し怖いな……と。


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