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02 金策

 ラガは再びログインすると前回ログアウトした宿屋のベッドに寝た状態でで再開された。

 視界の隅表示するように設定した現実時間は9:18になっている。昼食を食べることを考えて、アラームを11:40に設定をする。

 あまり遊べる時間はないが、今回は旅に出るための資金稼ぎをするのが目的だ。とりあえず目標金額としてNPC製の武具・防具を一式揃えられるくらいだ。

 序盤の金策方法は、街の外に出てモンスターを倒して素材などを売却する方法と依頼掲示板の依頼をこなして報酬をもらう方法の二つあるのだが、今回は時間がないこととインスピ世界での動き方を確認するためにモンスターを倒すことに決めてある。

 諸々の準備を終えたラガは宿屋から出るとそのまま街の出入り口の門に向かった。



 街を守る衛兵に挨拶をして門を出ると、そこは見通しの良い平原となっていた。頬を撫でる柔らかな風の感触まで表現されている。

 よくよく目を凝らせばピョンピョンと跳ねながら移動するスライムや野外活動するキャラクターもポツポツ見受けられる。

 ラガは他のキャラクターたちの邪魔にならないような場所に居るスライムに狙いを定めると、まずは観察した。

 スライムは40センチほどの大きさでほぼクリアブルーの粘液で構成されており、体の中心部にはピンポン玉程度の核が見られる。ズリズリと移動する際は若干粘液が後方に伸びるようで、それをもとにすればスライムの視界の向きも把握できそうだ。


 ラガがスライムの動きを見ながらそ~とスライムの背後の回っていると、不意にピコーン音がなって目の前にウィンドウがあらわれた。


「スキル『忍び足』を習得しました!」


 突然のことで驚いたものの、声を出さないようにしたためスライムには気づかれずに済んだ。とりあえず覚えたスキルの確認は後回しにして目の前のスライムに集中する。


 今のラガは攻撃スキルを持っていないし、武器も装備していない。それでもインスピでは攻撃はできる。素手で殴ったり蹴ったりすればそれが攻撃判定になるし、そこら辺に落ちている枝でも手に持てば装備扱いになる。

 ラガは落ちている石を拾い上げると、スライムに向かって投げつける。

 投げた石はスライムの手前で落ちてしまったが勢いはあったため転がってスライムに当たった。すると、ピコーンと再び音がなるとスキル『投石』を習得したというのお知らせウィンドウが展開された。

 石が当たったスライムは石がぶつかった方向に意識を向けたようで、その延長線上にいたラガも認識したようだ。ピョーンピョーンと大きく跳ねながら襲ってきた。敵対したスライムの頭上には敵対関係を示す赤枠の白い矢印とHPバーが表示されている。

 このままスライムに近づかれると不利なのでラガは距離を取りながら、石をいくつか拾い上げる。

 そして十分距離をとってから攻めに転じる。


「投石!」


 狙いをつけると意識しやすいようにスキル名を口に出してスキルを発動させてる。すると投げた石は先程とは異なりシューという風を切り裂く音を立てながら勢いよく真っすぐ飛んでいく。そして、石は見事跳ねたスライムに命中し、HPゲージが1/5ほど削れた。

 ダメージを受けて怒ったのか、スライムの動きが大きく速くなった。



「クソ、なかなかタイミングが掴めんな」


 ラガの投石はスライムの動きの変化についていけず当たらない。攻めあぐねてスライムから距離を取り続けていると、とある瞬間に気がついた。

 それはスライムが着地した瞬間だ。その瞬間は着地の衝撃を受け流すのと次に跳ねるために力を貯めるためにスライムが平たくなっている。すなわちスライムの核を守る粘液が薄くなっているのだ。


「もしかして、一気に近づいて核に直接石を叩き込めば良さそうじゃね?」


 そう考えたらラガは距離を保つのを止めてタイミングを見計らう。一気に近づける場所にスライムが着地する瞬間を。

 スライムの跳ねる距離は大体70センチほどで高さもそのくらい跳ねている。ラガは野球のピッチャーのように体を左側をスライムに向ける形で構える。そして、スライムが目星を付けた場所に向かって跳ねた瞬間に左足を大きく踏み出し、つぎに右足を強く蹴り上げて体を反転させる。すると、右足が前に出たその足元にスライムもちょうど着地をした。


「と・う・せ・きっ!」


 平たくなって、守りが弱くなっている核を目がけて力いっぱい石を投げつけた。

 石はカチンと音を鳴らして書くに命中すると、その核を砕いた。スライムのHPバーは一気に空になり、スライムはパーティクルエフェクトとともに消えてドロップアイテムに変わった。


 スライムを倒して一息ついたラガは手に入れたものを確認する。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


アイテム・スライムまんじゅう……スライムのドロップアイテム。食料、武器の材料、薬の触媒と様々なものに使用する。


スキル・忍び足……音を立てずに歩く歩き方。音では相手に気づかれにくくなる。

スキル・投石……石を投げる際、体の動きが適切化される。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「なるほど」


 ラガは一言つぶやくと、投石スキルを外して石を何度か投げてみた。すると、石は狙ったところにはなかなか当たらず、石の勢いもスキルを使ったときより弱い感じがする。

 次にスキルを発動させて石を投げてみる。投げる際に違和感はないものの石の勢いは確実に増しており、命中率もかなり上がっている。

 再びスキルを外して投げてみると、スキルを使って投げるときより体の動かし方がバラバラでうまく連動されていないことに気がついた。つまるところ投石のスキルはうまく投げられるだけのスキルのようだ。


 こうして色々と確認していると空はいつの間にか茜色に染まっていた。

 前回も街を散策していると昼から夕、そして夜と時間の変化を体感し、時間帯ごとにそこで生活するNPC達の活動の変化も目の当たりにした。

 では時間帯の変化は街の外ではどのような変化があるのか。ラガはヘルプメニューを開くと時間について調べ始めた。


 ヘルプメニューによればインスピは四時間で一日の流れであり、モンスターもNPCと同じく時間帯によって活発に動き回ったり、眠ったりするようだ。一部、どの時間帯でも行動を変えないモンスターがいたり、特定の時間帯で強化されるモンスターも居るようだがこのイチイの街付近では遭遇しないようだ。 


「暗くなると周りが見えにくくなるようだけど、ま、大丈夫かな?」


 ラガは情報を精査した結果、引き続きスライムを討伐することにした。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 夜とはいえ月明かりが明るめに設定されているようでそれなりに周りを見通せたのだが、影は昼間よりも濃くなっておりスライムを探すスピードはかなり落ちてしまった。更にスライムの核も見えづらくなったため、戦闘時間も長くなった。

 その影響もあり現実時間の一時間で十体ほどしかスライムを討伐できなかったが、それでもそれだけ倒せればレベルも二つ上がって3になり、投石の威力も上がったため一撃とはいかないもののかなり短時間で倒せるようになっていた。


「うーん、戻るか」


 現実時間がすでに11時を過ぎており昼食のためのログアウトまでの時間では討伐が中途半端になりかねない。そう考えたラガはいったん街に戻って素材を換金することにした。



 街に無事たどり着けたラガだが、肝心の素材の換金する場所がわからない。


「あのぉ、すみませんがどこか素材を買い取ってくれるとことしりませんか?」

「おお、何を売るんだ?」

「スライムまんじゅうを幾つか」

「スライムまんじゅうかぁ。色んな事に使えるから大抵の店で買い取ってもらえるが、冒険者協会ならどの素材でも安定した価格で買い取ってくれるぞ。ちなみに、冒険者協会はあの大きな建物だから、迷わずにいけるはずさ」


 ダメ元で門番に聞いてみると、以外に丁寧に教えてくれた。

 冒険者教会の場所まで教えてもらったラガは門番にお礼を言うと、教えてもらった建物に向かった。



「ここが冒険者協会……」


 周りに比べると一際大きな建物を目の前にしてラガはその存在感に少したじろいだ。

 冒険者協会の周りはインスピの世界が夜の時間帯でも様々なプレイヤーが行き交っており昼間と変わらない賑わいをしていた。このまま眺めていても意味はないので、とりあえず行き交う人の合間を縫いながら冒険者協会に入る。


「こんばんは、どのようなご用件でしょうか?」


 協会に入るとすぐに目の前にあるカウンターの受付嬢に話しかけられた。


「えっと、倒したモンスターの素材を買い取って欲しいんだけど……」

「素材の買取ですね。それでしたら一度建物から出ていただいて、左側にある扉から中にはいってくだい。そちらが買取部門のカウンターになります」


 はじめは驚いたもののラガは場所を教えてくれた受付嬢にお礼を言うと早速向かった。


 場所はすぐに分かった。教えてもらった扉とは別に見上げるほどの大きな戸が併設されており、それが目について見逃すことがなかった。

 中に入ってみれば大きな戸の意味が予想できた。

 この部屋は、解体作業場のようで、大きな戸の奥にはよく磨かれて石台が設置されている。石台はそれなりに使い込まれた様子はあるのだが、今はまだ使用する人はいないようだ。

 そして、部屋の隅にはカウンターが設置されており、そこにはパイプを加えたて新聞に視線を落とすNPCの男性が座っていた。


「あの、すみません」


 ラガは思い切って話しかける。


「おう、解体台の使用なら奥に行きな」

「いや、そうじゃなくて、モンスターの素材を買い取って欲しいんだけど」

「何だ、買取か。何を買い取って欲しいんだ?」

「『スライムまんじゅう』を十個ほど」

「スライムまんじゅうか…… それなら一つ2スピルで買い取るがそれでいいか?」

「はい」

「十個程度ならこれに全部乗るだろう」


 そう言って男性はカウンターの中から一枚のトレイを渡してきた。ラガはそれにスライムまんじゅうを全部乗せて戻した。


「よし、査定するから少しまってな」


 男性はそう言って素材を載せたトレイを奥の職員へと渡すと、再びパイプを咥え直して新聞に視線を落とす。手持ち無沙汰のラガはとりあえず再び男性に話しかけた。


「あの、防具を揃え要素思うんだけどどのくらいお金が必要ですか?」

「ん? 防具を買いたいのか? この街でそれなりに身を守れる防具を一揃するなら二千スピルはかかるだろうな」


 なにげに聞いたことだったが、意外と会話がつながった。


「結構かかりますね」

「そうだな、スライムまんじゅうで稼ぐのはちょっと大変だろうな」


 男性がニカッと笑って返してきた。男性に設定された性格なのだろうか、絶妙なラインで皮肉ってくる。

 ラガは少し顔がひきつったが皮肉を笑顔のまま受け流した。


「まぁ、無理をしないのはいいことだな。命あっての物種とも言うし、金なんて依頼もこのしていけば少しずつ溜まっていくものさ」


 ラガの笑顔の歪みに気がついたのか、フォローもしっかししてくれた。

 こうして会話しているうちに奥から職員がトレイを持って来るとカウンターに置いた。トレイには硬貨二十枚がきれいに並べられている。


「20スピルだ。また売りたいものがあったら持ってきてくれ」


 ラガはトレイに並べられた20スピルを受け取ると解体場を出た。

 時間もちょうどよく、そのまま宿屋に向かういログアウトをした。

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