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16 ワールドウォーイベント・襲撃フェーズ

 ラガは草原を走っていた。そして、彼の後ろを二十匹近くの様々なモンスターが追いかけている。そのモンスターの中に騷魔の兆しモンスターも何匹か混じっていた。


「はぁはぁはぁ、確かこの辺にも居たよな」


 走り続けながらも記憶を頼りに周りを見回す。すると、三匹の騷魔の兆しモンスターが歩き回っている。 

 それを確認したラガはスリングスタッフを装備すると小さめの石をどっさりと装填し、「せいっ」と通り過ぎざまに雑に投げつけた。

 雑な投げ方に小さめの小石。これからのせいで大したダメージが入らないが、攻撃されたという事実がモンスターたちの怒りというヘイトがラガに向かい、三匹がラガを追いかける群れに加わった。

 ラガはモンスターたちの怒りを持続させてヘイトを維持し続けるために時折小石を群れに投げながら走り続ける。そして、大牧場の近くまで来ると旗が一本立ってた。


「やっと着いた」


 追われるというシチュエーションは精神的な負荷がかかり、通常以上にスタミナを消費する。これはプレイヤーの意識が直でゲームに反映されるフルダイブ型ゲームの仕様である。

 旗を発見したラガは残ったスタミナを使い切る覚悟でスピードを上げて、旗を通り過ぎるように走った。そして、ラガが旗を通り過ぎ、モンスターの群れが旗の位置に差し掛かった瞬間だった。


 「ドーン」という空気の振動を全身で感じさせるほどの轟音が鳴り響き、次の瞬間には数匹のモンスターが断末魔を上げながら吹き飛ばされていった。

 いきなりの攻撃に立ち止まるモンスターたちだったが、まだ攻撃は続く。

 「ヒュン」という風切り音とともに先頭のゴブリンの腹部に人間の腕ほどの風穴が開き、その後ろの狼モンスターの頭部には親指よりも太い矢が深々と刺さっていた。そして、すぐにこの二匹は消えていく。


 未知の攻撃によりモンスターたちはラガへの怒りよりも恐怖が勝ち始めたようで、散り散りに逃げ出そうとするのだが、それを許さないかのように二回目の轟音が鳴り響く。それと同時に「ヒュルルルルルー」という音を鳴らしながら一筋の煙が放物線を描いてモンスターへと向かっていく。そして、煙の先端が地面に接触した瞬間「ドゴーン」と鼓膜を破るような轟音を伴って爆発し、爆煙を巻き上げた。


 煙が晴れると地面には小さなクレーターが出来ており殆どのモンスターは消えており、生き残ったモンスターも爆風で吹き飛ばされて満身創痍の状態だ。

 ラガはスリングに鉄球を入れると、生き残ったモンスターの急所を的確に攻撃をして粛々ととどめを刺していった。



 ラガがモンスターのとどめを刺し終えて大砲のところまで戻ってくると、そこには小さな人だかりができていた。


「ああ、戻ってきたね、おつかれさん。で、威力の方はどうだった?」


 ラガに気がついたラピスラズリが話しかけてきた。


「十分通用してましたよ。それで、この人だかりは?」

「生産職のプレイヤーだよ。スノーちゃんとモノクロちゃんに兵器の使用感とかを教えてもらってたんだ。私達は作った側だから兵器の仕様や癖とか分かってしまうからつ、いそれを踏まえて最適に動いてしまうんだよね。何も知らない人の意見って結構ありがたいんだよ」


 集まっている生産職の方々がラピスラズリの言葉に「うんうん」と頷いている。ただ、スノーたちはモノづくりをする人の熱意に押されて少しクタクタになっているように見えた。

 そして、ラガもその熱意の坩堝に巻き込まれていった。


 兵器の改善案などを話し合っていると、意外なところからの苦情が舞い込んできた。それは、牧場からだった。

 大砲の音が大きすぎて、音に驚いた家畜がパニックになったということだ。

 防衛する牧場に被害が出ることは、ラガもラピスラズリたち生産職も望んでいないため最優先で対策を練ることになった。

 全ての大砲に消音措置を施すと使い勝手が大きく変わってしまう。更にそれなりの数があるため手間がかかり時間も材料も足りない。

 そこで、畜舎に防音対策を行うことで、大砲を使う襲撃中は家畜たちをその中に避難してもらうことになった。


 こうして準備が進んでいく。ラガも消費アイテムの補充やいつもの運動をこなして準備を整えていく。

 他のプレイヤーたちも襲撃時間が迫るにつれてどんどんINしてくる。


「よし、間に合ったな」


 仕事を終えたさくたんとカワノも合流した。

 そして、ついに襲撃が始まる。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 襲撃フェーズ開始の時間。まだ昼の時間帯だというのに辺りは毒々しい紫の靄がかかって薄暗くなり、様々なモンスターの鳴き声が響き始める。

 そして、靄の奥から様々なモンスターの影が現れ始めた。


「来たよ、用意はいいか」


 ラピスラズリが声をかけてきた。ラガを始め戦闘職のハンターはいま兵器を発射できるような状態でモンスターが射程に入ってくるのを待っている。

 ラピスラズリたち生産職は望遠鏡の倍率を変えながら正確に敵との距離を測り、担当する兵器を扱うハンターに発射の合図を送るタイミングを測っている。


「今! てー!」


 ラピスラズリたちの声とともに轟音を響かせて大砲が火を吹き、砲弾がヒュルルルという音を上げながら弧を描いてモンスターの大群に跳んでいく。


「弾着確認。効果は……」


 望遠鏡を覗くラピスラズリが状況を説明する。


「効果はあり。しかし、モンスターの侵攻を遅らせるまでには至ってない」


 土埃かの奥から現われるモンスターの影を正確に伝える。

 その声とともにバリスタが攻撃を開始する。

 大砲は威力は高いが、砲弾の装填に時間がかかる。その時間をバリスタが補う形なのだ。

 殲滅力は大砲より劣るが、装填速度が早いため次々にモンスターを射抜いていく。


「てー!」


 装填が完了したタイミングでラピスラズリが号令をかける。それを皮切りに次々に大砲が火を吹く。砲弾は大群の真ん中に着弾すると爆発して土埃を巻き上げる。

 更にダメ押しとして、移動式連射砲を起動させた。

 連射砲はババババという破裂音を響かせながら敷かれたレールの上を移動していく。砲身の向いた先頭のモンスターが次々に倒れていく。

 しかし、貫通力のない連射砲ではモンスターの侵攻をはおさえられなかった。倒れたモンスターを踏み越えて新たなモンスターが侵攻してくる。そして、ついに設定した防衛ラインを越えられた。

 ここまで近づかれると兵器の効果が薄い。すなわちここからがハンターたちの出番である。


「行くぞー、こっからが俺らのポイントの稼ぎどきだ!」


 誰かがそう鼓舞すると自然に「おー」と声が上がる。

 ラガも声を上げはしなかったが、気持ちが高ぶっていた。


「俺たちも行くぞ」


 さくたんはラガに声をかけると、一人向かっていった。


「今回はパーティーじゃなくてソロでの戦闘だけど、フォローが必要になったら教えてね」


 カワノがレベルの低いラガと後衛職のモノクロとスノーに伝えると、モンスターの群れに突っ込んでいく。


「わたしたちも行きましょう」


 まるで遠足に行くような口調のモノクロだったが、その手にはしっかり弓が握られている。

 スノーも武器となる法珠を取り出すと魔力を操作しながらモンスターへと向かっていく。


「よし、俺も行くか」


 一人で気合を入れ直すと、ラガも戦闘地へと赴く。


「いっけー」


 ラガはモンスターと一定の距離を保つように投石で戦っている。

 投石で相手の機先を潰すしていく戦い方のラガは複数戦が苦手である。だからこそ様々なアイテムを大量購入しており、それらのアイテムの出し惜しみをしない。


 メインで消費しているのは重量のある鉄球なのだが、遠くまで投げるためにはスリングで振り回さないといけない。そのためどうしても次を投げるまでに少し時間がかかってしまう。

 その隙を突いてジリジリとモンスターが距離を詰めてくる。

 五メートルほどまで敵が近づいてくるとラガはスリングを仕舞い、新たなアイテムを取り出す。

 そして、勢いよく両腕を開く動作で持っているアイテムを投げた。


「てやっ」

「Gigya?」


 ラガを取り囲もうと広がっていたモンスターが一瞬叫び、倒れた。しかし、倒れたモンスターは消えずビクビクと痙攣している。

 それらモンスターの胸や腕などには串のようなものが刺さっていた。


 ラガが用意していたアイテムの一つ、『棒手裏剣』だ。手裏剣は持ち方や投げ方が独特なため投()スキルは発動しないが、強力な麻痺毒を塗布した手裏剣を一気に投げっられるため、短時間で多くの敵を行動不能に出来る。

 向かってきていたモンスターを一通り行動不能にしたラガは倒れたモンスターにとどめを刺していった。

 一通りとどめを刺し終えたラガは周りを見る余裕も出てきた。

 より多くのモンスターを受け持った他のハンターたちの戦いが目に映る。


 遠くで巨大な水のクジラが跳ねた。スノーの魔法は相変わらず目立つ。

 視線を動かすと懸命に弓を引く幼女モノクロが居た。可愛らしい姿だが、幼女が矢を放つとその矢はドリルのような螺旋の衝撃波を放ちながらモンスターを跳ね飛ばしていく。バリスタ以上の貫通力のある攻撃で敵を殲滅していく。

 他の場所で何かが光った。そこには光の斬撃で前方の敵を切り伏せるさくたんがいた。

 その奥でカワノが大きく天に跳ねると、光るほど槍先に魔力を溜めた槍を大地めがけて投げた。槍はまるで彗星のように光の尾を纏い、地面に突き刺さると大砲の炸裂弾のように大きな爆発を起こした。


 他にも筋骨隆々で半裸のハンターが両手を広げて竹とんぼのように回転しながらモンスターの大群に突っ込んで次々に弾き飛ばしていったり、身長ほど太刀を持ったハンターがモンスターの攻撃を回避した後流れるような動きのカウンターで切りつけたりしている。

 気がつけばあたりに立ち込めていた紫の靄もだいぶ薄くなり、モンスターの影も疎らになってきたいる。


「そろそろおわりかな?」


 ラガが全体の様子を見てそうつぶやいたときだった。


「Guroaaan」


 戦闘域に地の底から響くような低い雄たけびが響く。

 それと同時に疎らだったモンスターたちがある場所を目指して移動し始めた。


「おうラガさん、大丈夫だったか?」

「さくたんさん。どうにかやり過ごせたけど、結構アイテムを消費したから懐が痛いです」


 さくたんの問に笑って答えることで、深刻な問題ではないことを伝える。


「そうか、もうひと踏ん張りできそうか? おそらくレイドボスが来る」

「れいど、ぼす?」

「複数パーティーで挑む強力なボスモンスターだ」


 そんな会話をしているうちに、四メートルほどの高さの人影が足元にモンスターを従えて現われるのだった。

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