表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/19

10 アタック

 12時30分、急いで昼食を食べ終えたラガはインスピの世界にINしてくると、そのまま風の回廊に向かった。

 いつもの運動があることを考えると今回、攻略するために風を待てるのは一時間程度だ。それ以後になるとワイバーゲンの時間と被ってしまい風の回廊に多くのハンターが集まってしまう。

 風に舞う葉っぱはプレイヤーに触れると消滅する。それは午前中の検証で追いかけている時に急に吹き返してきた風に流された葉っぱに当たってしまったことで自身が実証している。それに、ほかのハンターが邪魔でターゲットを見失ってしまうリスクもある。

 ワイバーゲンタイムを避けて風待ち時間を更に遅らせると、風が吹いたとしても攻略途中で風の回廊を出なけれならなくなる。

 そのためラガは全力で走った。


 そして、風の回廊の入り口についた瞬間に風が吹いた。


「ダメだ、弱い!」


 頬を撫でる程度の風は葉っぱはおろか砂埃すら起てずに静かに風の回廊に吹き込んだ。

 それから五分くらいで再び風が吹いたのだが、その時は砂埃バージョンだった。それから更に二十分程で強い風が吹いた。

 葉っぱを舞い上がらせたその風に気がついたラガは、意識を集中させて花びらを探した。しかし、見つけることはできなかった。

 それから、十分程で再び強い風が吹く。今回も葉っぱが舞うバージョンだ。そして、その中に運良く青い花びらを見つけることができた。

 ラガは花びらを見失わないように気をつけながら花びらを追って風の回廊に入っていった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 風の回廊内では花びらと一緒に入った葉っぱは他の道に入っていたり、壁に当たって引っかかったり地面に落ちたりしてその数を減らしていったが、花びらだけは順調に風に流されて回廊を進んでいく。

 そして、ある通路に来たところでラガは気がついた。


「この先は確か……」


 午前中に体験したことが思い返される。その経験をもとにラガは花びらを見失わないギリギリまで距離をとるといつでも体を反転させられるように体勢を整えた。

 そして、奥の行き止まりの壁が見えた直後、今まで追い風だったのが急に向かい風に変わった。

 猛スピードで体に向かってくる花びらをラガは体を反転させてうつ伏せになることでかわす。

 そして、花びらが通り過ぎた後すかさず立ち上がると急いで追いかけた。


 しばらくラガは普通に花びらを追っていたが、先の通路の壁の布を見た瞬間、花びらとの距離を詰めた。

 布がバタつくほど強くはためいていたのだ。 

 そして、花びらがその通路に入った途端に横から吹いている強風にのって猛スピードで流されていく。それは事前に強風に気がついていなければ消えたと錯覚してしまうほどの速さだった。

 花びらを追ってラガも急いで強風の通路に入る。奥の壁の見え方からして通路の長さは十メートルほど、幅は二メートルとちょっとといったところだが、通路の途中には二本の石柱が立っている。


「なかなか、難しいな」


 想像以上の強風にラガは押し流されてバランスを崩したが、途中の石柱を掴えて体を預けることができたため体勢を整えることができた。

 花びらはすでに見失っているが、ここで諦めるわけには行かない。ラガは呼吸を整えると一気に石柱から離れると風に乗りながら一気に通路の終わりを目指す。


「うお、っとっと、うわぁ」


 どんどん目の前に迫る壁の迫力に思わず目をぞ向ける。そして、全身に軽い衝撃が走った。

 上手くバランスを取ることができたため転ぶようなことはなかったが、風に乗ったスピードをうまく処理することができずに壁に激突してしまったのだ。


「ふー、びっくりした」


 衝突の衝撃以外の痛みなどの苦痛は感じなかったがHPが減少していた。

 しかし、今はそんな事を気にしている場合ではない。


「花びらはっ」


 風が抜ける通路の続きを見てみれば、その先の曲がり角のところで渦が発生しているようで花びらがグルグルと回っていた。

 ホッと花びらを見つけて安心したラガだったが、触れるわけにもいかないのでHPを回復させつつ花びらの動きを見守った。

 それから十数秒後、花びらは渦を脱して再び回廊内を風にのって進んでいく。


 花びらを追って壁を登りその上に隠れていた通路を通った。

 花びらを追ってモンスターが寝ているそばをスキル『忍び足』を使ってそっと通り抜けた。

 花びらを追って脇道に見つけた宝箱を泣く泣く見逃した。


 大変ではあったが順調に花びらを追いかけていると、ようやく外への出口へとたどり着けた。

 花びらはフヨフヨと緩やかな風にのって、出口の方へと飛んでいく。ラガもそんな花びらの進行に合わせて足を進めた。

 そして、出口をくぐった瞬間み視界がホワイトアウトした。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 白い視界に金色の文字で『風の故郷』という文字が現れ、次第に視界は色を取り戻していく。

 

「うわぁー」


 ラガは目の前に広がる光景に思わず声が漏れた。

 地面一面に広がるのは青空のような爽やかな青色の花の絨毯。空から降り注ぐ夕暮れの赤みを帯びた光の中でもその青さははっきりとしていた。

 そして、その花びらが風に舞っている。


 風の踊り場では強い風で巻き上げられた砂埃が四方八方から吹く強い風で踊るよう次々形を変えていた。

 一方風の故郷の花びらは緩やかな風で舞っている。

 例えるなら風の踊り場はの砂埃の踊りは見ていると心が奮い立つタンゴのように激しいダンスで、風の故郷の方の花びらの踊りはワルツや日本舞踊のようにゆったりとしたもので見ていると心が落ち着いていく。


 しばらく景色に見とれていたが、クエスト目標が更新されていることに気がついた。クエスト内容は風の故郷に咲いている花『スカイパンジー』を採取してワンオに渡して報告すること。

 ラガは指示に従って歩みを進めると足元のスカイパンジーを丁寧に掘り起こすと一株採取した。

 その後、目の前の景色をスクリーンショットして保存しようとしたときだった。


「このエリアではカメラ機能を起動することはできません」


 ブーという音とともに視界にその文字が現れた。


「マジか。あ、動画カメラも停止している」


 視界の端に映画カメラのようなアイコンに斜線が入っている。

 どうやらこの景色を見るためには自分の足でここまでたどり着く必要があるようだ。

 (記録で残せないなら、記憶で)とラガが目の前の光景を目に焼き付けるように眺めてた。その後、風の故郷を出ようとしたときだった。


「またおいで」


 風音とともにそんなか声をかすかに聞こえた。

 すると、ピコーンといつもの甲高い電子音がなり新たなスキル「風に身を任せて」を習得したというメッセージが流れた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


スキル・風に身を任せて……風に身を任せて歩みをすすめるスキル。スキル発動中、風の精霊の加護を得て風属性の魔法やダメージを無効化する


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ラガはとりあえず新たなスキルの説明だけを確認すると、もう一度だけ風の故郷の景色を眺めてから風の回廊へと戻った。

 帰りは風の踊り場と同じようにの通路を通ると簡単に回廊の入り口にたどり着いた。


 回廊を出る頃には空はすっかり暗くなっている。


 ピピピ、ピピピ、ピピピ……


 現実時間15:30、いつもより余裕をもたせて設定したアラームが鳴り響く。

 この後、いつもの足のトレーニングを終えたら今回のプレイは終わりである。しかし、ラガの心は今までにない達成感で満ちていた。六大絶景の一つを目にすることができたのだから。

 風の故郷は六大絶景に数えられるほどとても神秘的で美しいところだった。しかし、惜しむべきは時間帯だ。あの光景は青い空の下でこそ映えるであろう。

 ラガは再び風の故郷を訪れることを心に誓いながら、テント、結界を設置するいつもの場所に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ