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不良少年は悪くない? ファンタジーワールド  作者: maon
第一章 はじまり
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第1章5 ジェームズ

 オーランド襲撃より翌日、オーランドにより殺されたジェームズとロバートの葬式を学園で行っていた。奴隷紋のあった者たちは戻ってこなかったが、学園関係者や、貴族たちは戻ってきていた。


「父さん? 母さん? どうしてここに?」


 エマとウィルと一緒に葬式に参列していると、そこになんとブラッドの父親と母親が現れた。


「無事か? ブラッド?」


「オレを売ったのは、父さんと母さんだろ? 今さらどうしてここに?」


「違うんだブラッド。聞いてくれ」


「何が違うってんだ!」


「……ジェームズと私は兄弟なんだ」


「は? 何? 何言ってんの?」


 父の言葉に理解出来ず、ブラッドは混乱し聞き返した。


「この葬式に参列するのも、兄弟が死んだからだ」


「ウソだ……。ならどうして?」


「ジェームズは、私の兄で転生者だったんだ。自分と同じ転生者だったブラッド、お前のことを、ジェームズは心配してたんだ。転生者には転生者にしかない苦しみがある」


「父さん、オレが転生者だって知ってたの?」


「当たり前だろ。オレは、ジェームズの1番の理解者であり、お前の父親だ。気付かないわけがない」


「なら、ならどうしてオレは売られたんだ?」


「転生者の苦しみ、それは、孤独だ。前世の記憶を引き継いだ者は、いつも理解してもらえない孤独と戦っている者が多い。もちろん全員がそうではないがな。ジェームズもそうだったが、ジェームズにはオレがいた。でもブラッド、お前は、オレたちに打ち明けることすら出来なかったろ? 前世の記憶のせいかお前は、ジェームズよりも孤独だったはすだ」


 ああ、そうか。そうだったな。とブラッドは思う。集団リンチで前世で死んで、異世界に急に連れて来られて、意味もわからず、ただただ生活をして、正直、自分が生きているという感覚がなかった気がする。泣いて笑って、自分のやりたいように生きる。そんな自分というものを無くしていた気がする。そもそも、集団リンチにあったのも、前世から1匹狼で、孤独だったから、この世界に来て、孤独の抜け出し方すらわかってなかったのだ。


「お前を売るという行為は、お前を大いに傷つけただろう。それに対して許してくれとは言わない。ただオレたちはブラッド、お前にお前の人生を歩んで欲しかったんだ。だからオレたちは黙ってジェームズにお前を預けることにした。転生者だったジェームズのやり方に任せることにした。ジェームズはずっと、お前のことを心配していた。オレのことは良いからジェームズのことは勘違いしたままにしないでやってくれ」


「これは?」


 父は、手紙の束のようなモノをブラッドに見せた。


「アイツ、オレたちが心配してると思って、毎週、毎週、お前のことを手紙を書いて寄越してたんだ」


 そう言えば言ってたな。親に手紙書けって。ひねくれた言い方だったけど。言われた言葉をブラッドは思い出す。


「もうお前は独りじゃない。そうだろ? 転生者と分かっていても、付いてきてくれる仲間がいる。自分の力で守りたいって思える仲間が出来たんだろ?」


「でも、でも、お父様、わ、私たちが魔法で……」


 気付けばエマは涙を、流しながら震えながら言葉を発していた。


「……それ以上は言わなくて良い。内容は全て、魔法捜査官から聞いている。キミたちは悪くない。辛い思いをしたのはキミたちなんだから。アイツもキミたちを守れて誇らしかっただろう。素直じゃなくひねくれたやつだったけどね」


 エマはひたすらボロボロと大粒の涙を流していた。父の話しを聞き、感情を抑えられなくなっていた。


「ブラッドも大丈夫か?」


 気付けばブラッドにも涙が流れていた。そうか、自分はずっと独りじゃなかったのか。と。両親に見守られ、叔父に見守られ、自分は生きていたのだ。


「大丈夫。大丈夫だよ。オレは今、元気に生きている」


 涙を流し、笑顔で、そうブラッドは答えた。


 ***


「キミがブラッドくんだね?」


 坊主頭だが紳士風の男がブラッドに話しかけてきた。


「あー私はジェイソン。魔法捜査局長のジェイソンだ」


「そのジェイソンさんが、オレに何か用?」


「今回のオーランド襲撃事件について聞きたくてね。今少し時間良いか?」


「それについては、昨日、アンタの部下に説明はしたけど」


「一つだけ直接聞きたくてね。まぁ襲撃事件の内容自体は、報告をもらってるから、どうでもいいんだ」


 そう言うとチラリと、ブラッドの腰にぶら下げている白虎の刀に視線を向けた。


「報告にあがってた内容だが、そいつが白虎なのか?」


「そうだけど何か?」


「今回の事件の証拠品として白虎を預かりたい」


「は?」


「そいつでオーランドを斬ったんだろう? 今回の件について、学園に戻ってきた者たち、そして、キミたちから聞いた情報として、オーランドに責任があることはわかった。しかし、そんな危険なモノを一個人の人間が持つべきではないとも思っている。それも含めた上で、証拠品として白虎を預かりたいと言っているのだ」


「あっそう。それでこんなこと言ってるけど、白虎はどうする」


『断る』


「そういうわけなんで、さようなら」


「ま、待ちなさい」


「何?」


「白虎を持つということは、いろんなやつに狙われるということだぞ? それを分かっているのか?」


「そうだな。例えばアンタとか?」


「キミたちが何の罪にも問われないように、簡潔に処理をしたのは私だ! 私は敵じゃない!」


 そう言ったジェイソンの顔は真っ赤になっている。


「だから何? 関係ないね」


 そう言い放ち、ブラッドたちはジェイソンから離れた。


「なんだアイツ? 嫌なやつだな」


 ウィルは、顔を真っ赤にして怒っているジェイソンを見て言った。あえて聞こえるように。


「無駄な喧嘩を売るな。ウィル」


「はいはい。……てか考えごとか? ブラッド?」


「いや、こうやって狙われるから、ジェームズは、オレに白虎を渡せと言わずに、白虎の契約を破棄すべきだって言ったんだろうなって」


「ああ。うん。私もそう思う。多分これから色んな人に、色んな理由で白虎を寄越せって言われるんだろうなって思う。襲われるリスクもあるかもしれない」


「そう、だな。でもだからと言って、簡単にこいつは渡さない」


 ギュッと白虎の刀をブラッドは握りしめた。


「そういや、これからどうするか? 2人は決めてるのか?」


「いやー……まさか学園が閉鎖するなんて、つい昨日まで思ってなかったから何も」


「私もそうね。ブラッドくんは……その……一度帰るの?」


「帰らない。いや、帰れないかな。白虎のことで、家に迷惑をかけたくないから」


「そっか。なら3人でギルドに登録しない? 生活費稼がないといけないし!」


「そうだな! それが良いよ!」


「悪くないな」


 3人は先についての計画を立てる。まさか葬式の場で、その計画を誰かに聞かれているとも思わずに。

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