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「茶会、ですか?」
ラウラが去ってから、私達は再びリビングのソファーに座り話していた。
ラウラの事が解決したとは言え、根本的な問題が全く解決していないのだ。
「そう。シアの病気も大分良くなって、前とは比べ物にならないくらい所作も美しくなっている。呑み込みがとても早いんだろうね。お祖母様に教わったことを取り戻し始めているみたいだ」
そう言われ、つい嬉しくなり顔が赤くなる。
私にマナーなどを教えてくださったエレオノーラ様は明後日、またリベルタード公爵家へ来ると仰っていた。やんわりとユーリがエレオノーラ様に私が病を患っていたという事を伝えると、今すぐ行くという返事が入りそこから音沙汰が無いのだという。
明後日というのはお祖母様が住んでいるところからここまで来るのに約1週間かかるだろうという憶測から来ているため、全く当てにはならない。
「エレオノーラ様も来てくださると言うことですし、もう一度確認してもらおうと思っていまして、、。でも、公爵夫人になるためにはまだまだです。それに、、今はユーリの隣に立つことが出来ると、わかっています。昔のようにもう諦めたりはしません」
私の言葉が終わるとともにユーリに抱きしめられる。
「シアは本当に、変わったね。勿論いい意味でだよ。それに僕への愛も伝えてくれるようになって言葉では言い表せないくらい嬉しい」
本当に心の底から嬉しそうな声で言われると何もしていないのにこちらも嬉しくなり、ほわほわとした感情が胸の中でいっぱいになる。
「私は今まで何も返すとが出来ませんでしたし、、。それで、お話は変わるのですがどうして茶会なのでしょう」
本当はこのままこうしていたい気持ちもあるが、それでは話が進まないため先程言っていた茶会の件を問う。
時期公爵夫人として、近いうちには必ず開かなければいけないとは思っていた。
私はカレロ伯爵家の長女とはいえ、ろくに社交界にも顔を出していなかったため情報を得る相手も、相談できる同世代の貴族も一人もいない。だから私主催の茶会を何度か開くことでそのことについても考えようかなと思っていたのだが……。
「その件ね、シアは僕のお嫁さんになるから公爵夫人になるための練習とも取れるんだけど、、実はジュリッサの件が大きな理由なんだ」
ジュリッサ様の名前に過剰に反応してしまう。
「今、社交界で僕たちくらいの年代で最も力を持っている令嬢はジュリッサだと言っても過言ではない。王族の血が入った候爵家の令嬢。だけどシア、君が社交界デビューをしたことによってジュリッサよりも上の存在になった」
それは、、分かっている。時期とはいえもう決まっているも同然のことだ。これから私は社会的に力をつけなければいけない。
「ジュリッサはきっとまだろくでもない噂を流し続けている。僕とジュリッサの関係についてあることないこと言いふらされているんだろう。でもジュリッサは厄介なことに社交界ではとても地位が高いんだ。だから、、難しいんだよ」
はあ、と大きなため息をつく。
ジュリッサ様はユーリと共に改革を進めていたこともあり、同じ令嬢からも、市民や貴族からも尊敬されている。そんな彼女が嘘を言いふらすなんて言っても到底信じないだろう。
「それで、シアにはまず茶会でシアの良さを皆に伝えてほしいんだ」
一気に話がよくわからない方へ飛んでいってしまった。
何故今この流れで私が茶会で私の良さを語る流れになるのか。それではただの自己満足が激しい人と思われるだけではないだろうか。
「ああ、ごめんね。言葉が足りなかった。シアは特に何もしなくていい。必然とシアの良さは伝わるはずだから」
ユーリは時々私に対する評価が以上に高い。だからスラっとこんなことも言えてしまうのだろう。
「シアの事を知れば知るほど、ジュリッサとの言葉の矛盾に気づくものが出てくるはずだ。やはり嘘というのはどれだけ頑張ってもボロが出る。辻褄が合わない嘘は成立しない。それにただ単純にシアのこれからの練習にも繋がってくるだろうし、僕的にはとてもいい案だと思うんだ」
ユーリの言葉を聞き納得する。
確かに嘘というものはとても難しいものだ。私の嘘は私だけが隠しておけばいいものであったけれど、ジュリッサ様の場合は人の心の事であるため、とても難しい。それをあえて狂わせるという案は非常にいい考えだと思われた。
「分かりました。けれど、、私に出来るのでしょうか」
同じ年頃の令嬢なんてラウラしか話したことがない。だから、自身は殆どないといっても過言ではない。
でも、、これはやらなければいけない。
「隣から失礼します。このアニタ、必ずフェリシア様の力になりましょう。招待状やセッティング等はお任せ下さい!!」
ずっと隣でつかえてくれていたアニタの言葉にほっと安心する。そうだ、私はひとりではないのだ。
エレオノーラ様もいるし、分からなければアニタやエリザベタ様に聞けばいい。
「一週間後に一度開きます。あまり時間は開かないほうがいいですよね。出来れば2日に1回、難しくても3日に1日は頑張ります」
「絶対に無理だけはしないようにね。すぐに調子が悪くなったら僕に言うんだよ。じゃあアニタ、頼んだよ。僕はこちらでジュリッサをどうするか考えておくから」
一通り話が終わり自室へ帰る。そうして早速招待状送りに取り掛かった。
高位貴族になるにお茶会を開く連れて回数は多くなっていきます。経済的な余裕の現れです。ジュリッサは毎日開いています。