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久しぶりのラウラ登場です。
「あら、お姉様。久しぶりね」
私の妹、ラウラ。私の母が亡くなり後妻として父が連れてきた人の娘。私はリベルタード家へと嫁いだため、ラウラがカレロ家の後継者となっている。一応父の血が入っているため、問題はないのだろう。
しかしまだ女性が当主になることは難しい世の中だ。今日のラウラの装いを見るにこの夜会に相手を探しに来ているのだろうか。
「………久しぶりね、ラウラ」
思い返してみればラウラと二人きりで話をすることはあまりなかった。ましてや夜会等は私は使用人として参加することが多かったため、こんな場所で話をするのはきっと初めてだ。
「少し、外してくれないかしら? 一年ぶりのお姉様との再会だから少し話をしたくて、、」
いつものたおやかな笑みを浮かべ、周りにいるご令嬢達に話しかける。きっとラウラは中心的存在なのだろう。ラウラがそう言うと、笑顔で彼女たちは去っていってしまった。
正直、とても怖い。ラウラと二人きりになるときはいつも決まって機嫌が良くないときばかりだったから。
「お姉様、ここではゆっくりお話できませんし、少し場所を変えませんか?」
にこやかに尋ねてくる。けれど長年一緒にいたからか、彼女への警戒が強くなっているからか、今のラウラは危険だと頭の中で警戒音が響いている。
もうすぐユーリも戻ってくると思われたため、どうにかしてここを動かないようには出来ないかと模索していたが、それはラウラの一言で無意味に終わってしまった。
「ユーリ様とジュリッサ様との本当の関係、知りたいのでしょう? まだお二人は終わっていないわよ」
私にだけ聞こえる音量で、けれどその一言は私を動かすには十分な威力を持っていた。
「…………分かったわ」
少しだけなら、そう思ってしまった。
立ち上がりラウラの後をついていく。
歩いているときはずっと無言だった。綺羅びやかな世界とは切り離されたような、そんな感覚がした。
どれくらい歩いただろう。ついていったことに後悔しているうちにラウラの足が止まった。
そこは人通りが滅多にない庭園のガゼボだった。
重苦しい空気が続いたあと、ラウラが大きなため息をつく。
「はあ、ほんと、なんでもお姉様なのかしら」
その一言で全てが始まった。
「ラウラ、ユーリも心配しているだろうしそろそろ、、」
ここにいては駄目だと、離れようとした。正直ジュリッサ様とユーリについてはとても知りたいが、何かあればきっとユーリが話してくれる。ついてくるべきではなかったのだ。
その瞬間、ガンッと何かを蹴るような音が響く。
ラウラががボゼの柱をヒールで蹴った音だ。
「ユーリユーリうるさいよの!! 何なの? お姉様は私に勝った気になって私をバカにしてるの!?」
「そんなことは……」
「そもそもおかしいのよ!! 私には来なくてお姉様にだけあのユーリウス様から縁談が来るなんて、なにかの間違いだったのよ! だっておかしいじゃない。あのお姉様よ!?」
ラウラの中での私はカレロ家にいたままの私で止まっている。
この一年間で私は変わることができた。ユーリやアニタ、皆のおかげで。だから……
「ラウラ、私はあなたをバカになんてしてないわ。ユーリは私を愛してくれている。もちろん私も。だからそんな相手がラウラにもきっと……」
「出来るわけないじゃない!!」
つんざくような悲鳴があたりに響く。
「シリル陛下はどんな令嬢にもなびかないし、他の公爵家の人たちはもう私よりも10も20も年上、もしくは年下。侯爵家の人達はユーリウス様やシリル陛下ほど顔が良くないもの。私はお姉様よりも良い相手を婿に貰わなければいけないの!!」
なんて返したらいいのか分からず、言葉が出ない。ラウラは私よりも良い相手を探すのに必死になっているのは伝わってきた。でも、私は知ったのだ。恋とはそういうものではないのだと。
「人に愛してもらおうと思うのなら、まずは自分が愛する心を持っていないと駄目なの。私はたぶん、失われていた記憶の中で無意識のうちにユーリを求めていた。それに母の愛も知っていた。ラウラだってお義母様に愛されているじゃない。だから……」
「うるさいわよ!! あなたに何がわかるっていうの!? あなたが出て言ってから家はおかしくなってしまったわ。借金にまみれたお父様は飲んだくれるようになって、お母様は私とお父様をおいてどこかに逃げていった。今日ユーリ様よりも、誰よりもいい相手を連れて帰らないと私、、」
その途端にラウラは泣き崩れてしまった。
借金にまみれているのはきっとお父様が私の仕事の後をきちんとつげなかったからだ。私が家を出ていく前にお父様にちゃんと話しておけばこういうことにはならなかったのだろうか。
いや、きっと無理だった。
お母様がこの世からいなくなって、お父様がファンヌ様に夢中になったその時からこの未来はもう決まっているも同然だったのだ。
「ラウラ、それなら今日は、、」
今家に返してしまってはきっとラウラはこれから先笑って暮らせなくなる。そう思ったために、ひとまずは一緒に家に帰ってユーリ様と相談しようと提案しようとした。
「うるさい!! うるさい、うるさい、うるさい!!! もういいのよ!! 私が誰からも愛されていなかったことにはもう気づいているわ。同情なんて必要ない。だけど私がこんな思いをしてるのにお姉様だけ幸せな思いをしているのもおかしな話じゃない? だからお姉様も一緒にドン底に落ちましょうよ!!!」
まるで壊れた人形のように奇怪な笑みを浮べ、どこかに向かって合図をする。
そうするとガサガサと、数人の男たちが出てきた。
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