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帰りの馬車の中では沈黙が続く。

お互い疲れていたこともあるが、やはりどこか腑に落ちないところがあるからだろう。


「……これで、良かったのでしょうか」


無意識にぽつりと言葉が出てしまう。


「良かったのだと、思うよ。シア自身が害されたことには僕もとても怒りを感じたけれど、その他にも彼女達は色々とやりすぎた。後継者であるヴァルトの軽視、ジュリッサの嘘、どれをとっても罪の大きさはとても大きくなる」


私のことだけならばきっと自宅謹慎くらいですんでいるだろう。言ってしまえば痴情のもつれだ。婚約騒動で国外追放になっていればこの国から貴族はいなくなってしまう。


「まあ、僕はシアが無事ならそれでいいんだ。ワインを被せてしまったけれど、、本当にごめんね」


「いえ、そのくらい大丈夫です。まだ寒い季節ではありませんし、それに誰かが乾かしてくれたので」


ユーリが微笑む。どうやらユーリは私のドレスを乾かしてくれた相手を知っているようだ。だが教えてくれる気配はないため、そのまま聞かないことにする。


がたんと軽く馬車が揺れる。リベルタード邸についたようだ。


「今日はもう疲れているだろうからゆっくり休もう。まだ全て解決したとは言えないけれど、これで大きな問題はなくなったはずだ」


「そうですね」


ジュリッサ様の件で私達が頭を悩ましていたのは事実だ。確かにそれが解決したことはとても大きいことなのかもしれない。


おやすみ、とユーリが私のおでこへキスを落とす。

まだこういうことにはあまり慣れていないため、またもや顔に熱が集まるのが分かった。


ユーリが去っていくのを見送り、思わず言葉が漏れてしまった。


「……アニタ、私は、、いつになったら慣れるかしら」


後ろに仕えていたアニタがほほえみを浮かべながら答えてくれる。


「フェリシア様は純粋でいらっしゃいますからね。おそらく歳をとってもまだ同じことをしているように思いますが、、」


生憎私も同じ考えだった。

この先20年後も30年後ももしかしたらもっと先までこんな幸せが続けばいいと願う。

ジュリッサ様の件は喜ばしいことではなかったが、それでも受け入れなければいけない。国外に出ても運良く生き残って小さな幸せでもいいから見つけてほしい。自分勝手な願いだが、祈らずにはいられなかった。







◇◇◇


〜数年後〜




穏やかな日差しが降り注ぎ、思わずうとうととしてしまう。もう、こんなにも暖かくなったのかと気づく。


「シア、目がとろんとしているね。眠たい?」


柔らかい笑みで見つめ返してくるユーリの瞳は昔からずっと変わらない。


「こんなにも暖かいのですもの。眠たくならないほうがおかしいと思います」


私の言葉に同調するかのようにお腹の中からぽこんと返事が返ってきた。


「ほら、カイもそうだと言っているようではありませんか」


「カイにまで言われては何も言い返せないなあ」


カイ。私達の新しい宝物。

5ヶ月ほど前に体に異変を感じ、すぐに医者に見せたところご懐妊です、と伝えられた。

その時のユーリの姿はきっと今でも忘れられないだろう。私自身も初めは何を言われたのか分からなかったが、理解していくと同時に嬉しさが込み上げてきてついユーリに抱きついたことはまだ記憶に新しい。


「でも暖かいとはいえまだ少し冷えるだろう。せめてブランケットでもかけて」


そう言ってブランケットをかけてくれる。と同時に私の隣へと座った。


「幸せだなあ」


そうですねと同意する。


「……あの時、生きるのを諦めていた私をユーリが見つけてくれなかったら、、今の私はこうして穏やかに笑っていることも出来ませんね」


本当に、奇跡だと言っても過言ではない。

ユーリが見つけてくれなかったら、アニタが諦らめていたら、私はもうきっとこの世にはいないのだ。だからこの幸せは奇跡で出来ているのだと心からそう思う。


「シアがいなかったら僕はきっと今の僕のようには生きていられない。これから会うカイにだって会うことは出来ない」


私のお腹をそっと撫でる。最近はカイも私達に反応してくれているのか、よく蹴り返してくれるようになっていた。それがああ、私のお腹の中でちゃんと生きてくれているのだなと思うと、酷く嬉しい気持ちになる。


「どんな子が生まれるだろう。シアに似た優しい子になって欲しいな」


「私はユーリのような、強くて大事な人を守れるようになって欲しいです。きっと、生まれてくる子は素敵な子でしょうね」


さらさらと流れる風が気持ちいい。


「そろそろ中に入ろうか。僕が温かいお茶を入れるよ。最近やっと上手に入れられるようになってきたんだ」


あまり動いてはいけない私に代わって最近はユーリがお茶を入れてくれるようになった。


「それはとても楽しみです」


ふふ、と笑みがこぼれ差し出された手をとる。



きっと、こんな幸せな日々はずっと続いていくのだろう。

そんな気がしながらフェリシアはユーリと共に屋敷の中へと入っていった。



END

完結!!

前作では予想以上に読んでくださる方が多くて本当にびっくりしました。そして番外編も最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございます(_ _)


ちょっとだいぶ期間があいちゃったんでめちゃめちゃ書きにくかった……。今度から番外編を書くときは本編解決してからすぐに書こうと心に決めてます( ・´ー・`)



面白かったと感じていただけた方は是非評価していただけると嬉しいです(_ _)


追記:ブクマ、評価、誤字報告ありがとうございます。励みに繋がっております。これからもどうぞ、よろしくしお願いします。

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