《公式動画配信》
不思議の国のアリスをテーマにした庭迷宮。今ここは公式側の設定で一時的にプレイヤーと魔獣が出入り禁止となっています。
整えられた緑の草に生える白と赤い薔薇を背景に、
アリスはトリコロールワンピースに身を包みこれを見た人はまず服の宣伝かファッションモデルだと思う事でしょう。
アリス本人はもじもじしながら俯いていますが、
と画面の外から愛らしい声で画面に映る少女を叱咤する声がスマホから聞こえてきます。恐らくパソコンで見ている人もこのサイトで公式生放送をクリックした人は皆見ている事でしょう。この先の展開を知る者ならばこの実況動画はSNSで切り抜きされ面白おかしく拡散されるまでがデフォですね。
『アリス! こっち向きなさい!』
ビクッと怯え、そして撮られている事に気づいたのか赤面して「やめて、やめて」と顔を見られないように両手で隠すアリス。
『も、もう撮ってるんですか?』
そんなアリスに叱咤するのが友人のアゲハであります。
『せっかく公式マスコットに選ばれたんだからちゃんとして?』
アゲハの態度に文句を言おうとするも「んっ」と睨まれたのですかさず白旗をあげます。正直アリスの今の心境は逃げたい一択の絶望感でうちひしがれていた事でしょう。だがアゲハの目からは逃げられそうにないのでスイッチを切り替える事にします
『わ、分かりましたから! 怒らないで下さい! お願いしますから!』
「よろしい」と機嫌を治したアゲハがカメラ・・・という見た目はルービックキューブみたいなのを操りアリスの全身が映る丁度いい距離で静止させます。
二度わざとらしく咳き込みます。今までが茶番であった事を示すための切り替えでしょう。
今いるのはファッションモデルの撮影でも、服の宣伝CMでもありません。ここはゲームです。
アリスがすぅーっと息を吐く。真剣な顔つきに変わり、アゲハは「うんうん、やっと役者の顔になったな」とカメラを回してルービックキューブが高速でシャカシャカと一人でに回り、面が全て揃うと。
アリスは心の中で「せーのっ」と掛け声を出しました。
『〈クリエイト・オンライン〉の公式動画の視聴者様方、いつもご視聴ありがとうございます。この度は〈クリエイト・オンライン〉の1プレイヤーであるアリスが公式宣伝マスコットに選ばれました』
アゲハが茶々を入れます。
『イェーイその調子その調子』
アリスは無視します。
『〈クリエイト・オンライン〉とはVRMMORPGの中で『創造』をテーマに自由な発想が出来るゲームーーーとは建前で実際はキャラゲーの乙女ゲーギャルゲーです』
アゲハが茶々入れます。
『イェーイ核心つくねえ!』
くるりとアリスが一周回ります。
回って広がったワンピースが優雅さを演出します。
『ですが〈クリエイト・オンライン〉に制限はありません。私のアバター、私のこの服。この服はゲームでだって作れるんです! ねっ? 凄いでしょ?』
アゲハが揶揄います。
『あざと可愛いねえ!』
アゲハの声が聞こえていてもキリッとした顔つきでアリスはこのゲームの良さ・・・恐らく公式側が「違う、そうじゃない」と言いたくなるような「アリスに任せたらこうなる」という事を予見していたのか少なくとも後者ではある確率が高い事でしょう、アリスにとっては重視する事はそこ以外ありえないですから。
『作るのは楽しいですし、作業ゲーですけど自分が作った服が着られますしゲームだから何回も失敗が許されて何回も成功が出来ます。現実だと失敗したら新しく作り直さなきゃいけません。ゲームだったら修正箇所だけなんです!』
『ちなみにその服のスキルは?』
アゲハに聞かれ「知ってる癖になんで聞くんでしょう?」と思いつつ指を折り天を見上げます。
『えっと光属性、格闘属性、悪属性の力が秘められています。効果は氷属性、岩属性、鋼属性、異常属性、不死属性に対し五十%の確率でクリティカルダメージと四十%のダメージ軽減できます。スキルはアクセルブレイクとナイトバーストと怒りの前歯です。アクセルブレイクは弱点をつきますと、与えるダメージが一.三倍になります。ナイトバーストは五十%の確率で相手の命中率を下げます。怒りの前歯は相手の残りHPを半分にします。です』
アゲハが写りにきます。鎧の下にゴスロリを着ているのはファンタジーを思い起こさせる姿に視聴者たちは本来ならこうであるべきだと誰もが思った事でしょう。そして実況配信はもう終わりと告げるようにアリスの肩に両手を置きます。それは姉妹に見えた人もいる事でしょう。アゲハがアリスの役割を引き継ぎます。
『ま、この通り生産職のチーターですが『チート使ってません』このゲームは戦闘職にも生産職にも皆んなに【創造】が与えられています。戦闘職ならオリジナルスキルーーーユニークスキルって言うのかな? それが出来たり、生産職なら作り上げた物にユニークスキルが付与されたり。とにかく遊び方はさまざまだから。間違っても』
ニコニコ笑顔が突如ドアップでしかも怒りがこもった声でスマホ視聴者やパソコン視聴者ならその場で転倒したかもしれない人もいた事でしょう。
『間違ってもファンタジーの世界観を壊す事だけはするなよ』
ブツン
〈クリエイト・オンライン〉三十五回目の公式動画配信。
これは色んな方向でバズりましたとさ。