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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

マンゴージュースと同類

作者: 五月女凛妃

私の目の前にはマンゴージュースがある。コップに詰められているマンゴージュースは辛そうに、早く助けてほしそうな目でこっちを見ている。分かるよその気持ち。私もだから。


私は昨年の秋、病気にかかった。白血病だ。闘病生活は約1年くらいだろうか。私は白血病という有名な病名を医師に告げられた瞬間、心がスカスカになった。私は白血病という病気に対して死ぬ事への恐怖しか考えられなかった。

私は今年の春定期テストで良い.点を取り父からスマホを授かったのだ。その時に、3日間だけ父を神様と讃えようときめた。もうそろそろ話に戻るとしよう。

白血病と告げられて即入院となった私はスマホで白血病について調べまくった。「白血病 死ぬ」という検索履歴が爆発的に多いだろう。怖いんだ。の一言で心が埋め尽くされる。私の心がどんどん虫に食いちぎられていくようだ。

それから2日後抗癌剤治療が始まった。私の腰辺りまで伸ばしていた髪の毛は最後には無くなってしまうとわかっていた。だから朝起きたらすぐ頭を触るという習慣がついていた。髪の毛がまだあると感じたいのだ。つまりただの自己満足だ。

それから1ヶ月がたった。長かった髪の毛は全て抜けた。治療のせいで1日吐きっぱなしの毎日を送っている。まともに白米を食べたことがここ最近ない。食べたいがお腹が受け付けない。食べ物よ、お前は今必要としてない!とでも言われているのだろう。可哀想なことだ。まだこんなくだらない考えが出来るのならばまだ全然大丈夫。

それから2週間が経った。40キロあった中学生の私は20キロ台まで体重が下がっていた。

理由は簡単だ。何も食べてないからだ。今の私は何も考えられない。毎日が辛くて、死にたいんじゃなくて、1度消えたいと思うことが多くなった。だめだと私の心にいる神様が毎回寸止めてくれる。

私の心、体を動かす原動力はその神様だ。その神様の正体は、私が小学4年生の時に交通事故で死んだ私の母だ。母が毎回私を助ける。

だが私の心はそんなに脆くないが、強風に耐えられるような強さもないのだよ、お母さん。

私はお母さんに早く会いたいと思うようになった。そんなこと言ったらわたしの父は怒るだろうな。毎日病室に来て私が笑顔になるような話をして帰っていく。私は父の前では元気な子、強い子でいようと決めていた。

お父さんごめんね。私はそよ風にも耐えられなかったらしいね。と自分の腕に繋げられていた赤い点滴の線、黄色い線。透明の線、全てを肌から抜き取った。そして、起きた時にはらけになっているのかなとか思いながら深い眠りについた。



翌年の冬私の一年忌を迎えた。相変わらず父はめんどくさがり屋だったりする。私のお墓には私の好きな飲み物ではなくマンゴージュースが置いてある。これは父の好きな飲み物でもない。多分家に残っていた飲み物を適当についで持ってきたのだろ。そんな所も私は好きだ。 私は、闘病中少し父に気づいて欲しかった所がある。強がっていた自分が悪いクセにと自分につっこんでしまった。私もこのコップに注がれたマンゴージュースのようだったのかとしみじみ思う。私が全て飲んであげたいと思う。だが、飲んであげようと思い手を差し伸べた瞬間、風が吹きコップが倒れてしまった、中身のマンゴージュースが全てこぼれてしまった。


このマンゴージュースはほんとに私のようだ。だが1箇所違う所がある。

私も手の差し伸べが欲しかった。 私に届かなくても差し伸べようとして欲しかった。私はそう思う。だが私は父が大大大好きだ。

寂しい背を向け黄色がかった透明な階段をしっかりと踏みしめ登って行った。

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