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第7話「真実と絶望」

私が意識を取り戻し気がついた時には……森に居た。まぁ、当たり前なんだが、そこで違和感に気付いた。

あれ……? ボロボロになった服の下には身体中に包帯が巻かれ手当てが施されていた、念のために左目を触ってみたが眼帯らしきモノが装着されていた。 自分でやった記憶はない! 寝ながら自分で手当したのか? そんな器用に寝れる奴は世界中捜してもいなし、無理だろ? いや、ない。

それ以前に私は包帯を所持してないし、考えられるのは……たまたま通り掛かった親切な人が倒れている私を見て親切に手当してくれた? いや、この森に入れるのは勇者だけだし勇者なら……倒れてる他国の勇者を見つけて、止めは刺すかも知れないが助けはしないだろう……考えても分からないなら仕方ない、諦めよう。


「ありがとう。親切な人」


誰だか分からないし、近くで見てる可能性もないが、とりあえずお礼が言いたかった。

立ち上がり、ふと気付いた。私が倒れていた近くには親切に食料が置いてあった……私は親切な人に更に感謝した。


食料を食べ歩きながら、森をしばらく進んで行くと薄気味悪い木々に囲まれた中にポツリと不自然に木造の小屋が建てられていた。とても大きな犬小屋に窓を一つ付けたような感じの小屋だ。とりあえず、小屋の玄関まで忍び寄り玄関を軽くノックする。


トントン


「誰か居ますか?」

「ああ、居るぞ?」


小屋の中から妖しげな女性の声が聞こえた。


「少し、休憩させて貰えないでしょうか?」

「ああ、いいぞ。中に入る勇気があるのなら」


「…………やっぱり、止めときます」

「まあ、待て道化。冗談だ、いいぞ休憩させてやるよ」


そう言って玄関の扉は開かれた。小屋の中にはランプに明かりが照らされ、ベッド、本棚、テーブル、ソファ等が目に入った。そしてソファに座っているこの小屋の持ち主がいた。小柄で紫色の長い髪、紫色の妖しい瞳に黒いローブを纏っている、その雰囲気は神秘的で私はその姿に目を奪われていた。


「まあ、座ったらどうだ?」


私はテーブルを挟んで彼女と向かい合わせの席に座った。


「私は、ラウル・リリックです。貴女は?」

「私か? 私は魔女だ」

「いきなりですが魔女さんはさっき、なんで私の事を道化と呼んだのですか?」


いきなり気になっていた質問をぶつけてみた。この魔女は、いきなり私の事を道化と呼んだ……まさか私の事を知っていると言うのか。


「そんな事は簡単だろう? 勇者など、所詮は道化に過ぎんのだからな」


そう言う事か……別に私の事を知っている訳ではなかったか、まあ、当たり前だな。それにしても、勇者が道化? どう言う事だ?。


「何故、勇者が道化だと?」

「お前は何も知らんのだな、この魔王討伐ゲームと言うシステムを」

「システム……?」

「特別に教えてやろう」


そう言って魔女は魔王討伐ゲームの事を話し始めた。


魔王討伐ゲームとは、争う人々に見兼ねた神様が世界に降り、一つのゲームを提示した。これが魔王討伐ゲームの始まりと言うのが一般的に知られている。これが『神の降臨』と呼ばれた日だ。

そして魔王討伐ゲームは四年に一度行われ、一番最初に魔王を倒した勇者が属する国が世界を治める権利が与えられる。


だが、魔女は違うと言った。魔女の話しはこうだ。


争う人々に見兼ね神が世界に降臨し、世界に平和に導いた此処までは、正しいらしい。

だが、その四年後に魔王も世界に降臨し、魔王は魔物を率い世界征服に乗り出した。これを危惧した人々は力を合わせ立ち向かったが、魔王の圧倒的な力に敵う筈もなく絶望の淵に追われていた所に再び神が現れ人と神は協力して魔王と激闘を繰り広げ、なんとか封印する事に成功した。だが封印は四年周期にその力が弱くなりることが判明された。そこで封印の力を強める為に強い力を持つ人間の最低でも四人の魂が必要になった。それで誕生したのが魔王討伐ゲームと言う名の生け贄だと。


魔王を討伐して戻ってくる勇者は神の部下が変装した姿だと言う。

優勝する国は人口の一番少ない国になる、何故なら負けた国は次の魔王討伐ゲーム迄の間、毎月交代で魔王封印を維持する為に数人の生け贄を捧げ続けなくてはならないからだ。

これが魔女が言った魔王討伐ゲームの真実。

更に魔女は『冒涜者』も魔王討伐ゲームの副産物だと言った。


魔女が言うには『冒涜者』は歪みで生まれた力。神は魔王討伐ゲームを滞りなく進行する為に世界規模の一種の洗脳行為をおこなったとされる、でなければこんな馬鹿げたゲームが世界で認知される筈はないと。そして神の術も世界規模のせいなのか完璧ではなかった、だから神の洗脳に掛からない者が稀に現れ、洗脳行為の副作用なのか洗脳に掛からない者、神のルールに縛られない者は皆、特別な力を得てしまう。それが『冒涜者』と呼ばれる者。神からすればイレギュラー、当然だ自分の思い通りにならないばかりか、厄介な力まで備えているのだ。だから神に忌み嫌われ、それ力を持つ者を排除させるために洗脳状態の人々に命を狙わせる。




これが真実だと言うのか!? ならば勇者は必ず死ぬ運命にあると言うことか、しかも逃れることも抗うことも出来ない死の運命。頑張って頑張ってやっとの想いで勇者になり、自分の生まれた国からの期待を一身に背負い勇者になった者はその期待に応える為に魔王を討伐に向かい生け贄とされる……これは……これではあんまりにも残酷で報われないのではないか? なんて世界は残酷なのだろうか。

私は世界は等しく平等なのだと思っていた……でも、この世界は間違っている、神によって捻じ曲げられたこの世界は……だけど現実は残酷だった。神はいるが万能ではなく神よりも強い魔王が存在する、それによりこの構図は仕方がないと諦める事しかできない自分もいる……神を責めるのは間違いだと分かっている……神がいなければこの世界は魔王に滅ばされていたのだから……。


「わかったか? 所詮、勇者とは道化に過ぎんのだ」

「こんな真実なら、いっそ知らない方がよかったな……」

「それで、お前はこれからどうするのだ?」

「その前に一つ聞きたい」

「なんだ?」

「貴女は何者だ? どうしてこんな事を知っている?」


魔女は私を感心したような表情で。


「私は神様に、この森に囚われている……私も昔は勇者だった……魔王を討伐する為に魔王に挑んだ、そして魔王を圧倒した。フン、と言っても本物の魔王ではないぞ、本物の魔王は封印されている魔王城に居るのは神の創りだした化身に過ぎん、その神の化身を私は倒した。そこで神の部下にと名乗る奴から魔王討伐ゲームの真実を聞かされた……当時、私もショックだった、魔王討伐ゲームが生け贄の為に創り上げられたのだからな、だが世界の為なら仕方ないと思い自害して魂を捧げようとした時に、協力を持ち掛けられたんだよ。その強さを活かし魔王城に向かう勇者を殺してくれとな……それが世界の為になるのならと喜んで協力した。それから私は森に現れる勇者とその仲間を次々に殺していった、だが私は気付いた 世界の為とは言え、同じ世界の為に魔王を討伐しに森にやってくる奴らも私と同じ想いで戦っているのだと、気づいた時にはもう数え切れない程に私は殺していた……だから思った死のうと、そして自害しよう自分の心臓を剣で貫いた……だが、痛みはあるのに死ぬ事は出来なかった……その後何回も何回も自分を貫き殺した……だが死ねない。ならば森を去ろうとしたが去ることもできなかった……そこで私は思ったこれは呪いだと数多勇者を殺した償いなのだと……」


魔女は無表情のままどこか遠くを見つめ、話し終えた。一瞬だが、魔女が酷く悲しそうな表情をしていたように見えた。

この話しが嘘ならばあんなに悲しそうな表情はしないだろう。


「これで、満足か?」

「その話しを聞く限り魔女は私を殺すのか?」

「フン、私は殺すのを止めた。それにその烙印があれば烙印がいずれ貴様を殺す」


私の左手を見て魔女は詰まらなそうに言った。


これは呪いか……ライセンも厄介なモノを私に押し付けたモノだ。



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