第4話「死の森」
かっこよく、歩く理由を決めた私は早速 魔王に繋がる第一歩を踏み込んだ。まさに、その時だ。まるで見計らった様に計算されたタイミングで
「あっ! 思い出しましたぁ!」
と笑顔で言われた。この時 私は核心した。そう、オチは読めた。この展開に何度も振り回される私ではない! フン、どうせ魔王の居場所を思い出したと言うのだろう! だが、しかしだ。今回はオチが読めているのだから私は決して驚かない!。
「何を思い出したのですか?」
一応、誘いに乗ってみる。
「なんと、魔王の居場所を思い出しちゃいました!」
フッハハハ。まさに予想通りの展開だ。お姫様には残念だが、今回は私の勝ちだ。
「そうですか、それで魔王は何処に?」
素っ気なく振る。
「魔王は魔王城にいます!」
「なるほど。魔王城ですか」
「はい。では目的地も思い出しましたし早速、魔王城に向けて出発です!」
私はお姫様の何時も、いきなりくる発言に普段より驚く事もなくやり過した。
フッハッハハ。勝った
私は遂に勝ったのだ。
こうして私達の目的地も決まり魔王城へ向けて進んで行く事になっ……。
「ラウルさん。そう言えば魔王城って何処にあるのでしょ?」
えっ? しまった!? まさかの二段構え!? いや、私が迂闊だったと言える。冷静な私なら読めていた展開だった筈。これは、一段目が囮だと見抜けず油断が招いた失態だ。やるな、お姫様。私も男だ、負けを認めよう……いや、勝ち負けはこの際どうでもいい……まさか、やはり結局は魔王の居場所は解らないと言う訳か……。
「……つまり、魔王城の場所は知らないんですよね?」
「はい。勿論知ってますよ」
はぁ、やっぱり知らないのか……待て、待ってくれ、待って下さい。
今のは何? きっと私の聞き間違いだ そうだ、そうに違いない。
「……今なんて言いました?」
「はい。勿論知ってますよって言いました」
「……」
なんですと! 多分私はこの時、物凄くマヌケな顔をしていただろう。
この時、私の目にはお姫様が物凄く勝ち誇った顔をしている様に映った。しばらくして落ち着いてか。
「それで、魔王城は何処にあるんですか?」
何時になく真剣な表情でお姫様は語り始めた。
「四つの国の中心部に位置する つまり世界の中心にある深き森を抜けたその先に魔王城はあります。ですが、一つ問題があります 魔王城に行くのに必ず通らなくては行けない森 その森は、死の森と呼ばれる森なのです。これまで数多の勇者が死の森で力尽きたと言われる程に危険な森なのです」
「でも、お姫様は行くんですよね?」
「私が一人だったのなら迷わず向かってたと思います。ですが私達は運命共同体です。だから私はラウルさんの意見に従います」
「私はお姫様の枷になる為に運命共同体になったつもりはありません。お姫様の役に立つ為に私は此処に居るんです。だから私の意思はお姫様と同じです。行きましょう! 死の森へ」
「ありがとうございます……そして……さい……」
お姫様のありがとうの後の言葉は聞き取れなかった、とても悲しそうな表情だったので聞き返す事も出来なかった。
そして私達は世界の中心に聳える死の森を目指して進み出した。
時が過ぎ去るのは速いモノだ。何事もなく私達は死の森の前にたどり着いていた。
「……意外とスベルニア王国から近場なんですね。死の森」
私達が休憩して居た場所から徒歩十分で到着しました。
「この壮大に広がる深き森は、ぐるっと円形になっているんですよ だからスベルニア王国に限らず他の国からも近くにあるんですよ。違うのは入口だけです」
「と言う事は他国の勇者が中に居る可能性が高いと言う事ですか?」
「可能性が高いと言うか、必ず居ると思いますよ」
「もし、出会えば襲ってきたりするのでしょうか?」
「それは、勇者の人格によると思います。ただ、襲ってくる可能性の方が高いと思いますね」
「やっぱりですか……他の国の勇者に魔王を討伐された負けですしね。万が一に備えライバルは削っておくって考えなんですかね?」
「そうだと思います」
「なら、出来れば出会いたくない相手ですね。仲間同士で殺し合うなんて私には出来そうもないですから……」
それ以前に私は弱い、出会ったら確実に死ねる。
「フッフフ。そうですね、私達ならすぐに殺されちゃいますね」
「でも、弱い私達が魔王に勝てるんですかね?」
私の言葉にお姫様はしばらく神妙な表情で沈黙してから、笑顔で
「……大丈夫です。私には『魔殺しの剣』がありますから……」
と言ったが、私の見る限りでは、お姫様は剣など持ってはいない。とりあえずお姫様には何か秘策があるのだと思う事にした。
「なら、大丈夫ですね」
『魔殺しの剣』の事を詳しく聞いて見たかったのだが、この質問をする事が何故か出来なかった……。
「はい。だから大丈夫です」
「なら、あんまりのんびりして他国の勇者に先に魔王を倒されてしまっては困るし、そろそろ行きますか?」
「そうですね」
そして私達は死の森にあと一本で入れる距離に迄近づいた。
「……レファイアス……」
森を見つめながら、お姫様は小さな声でレファイアス? と言ったのだけ聞き取れた。レファイアスって何? まあ、いいか。私も男だ、此処は先に森に入り安全を確認してからお姫様に来てもらおう。
「私が先に森に入りますね」
そう言って私は森に足を踏み入れた。後ろからは お姫様の声が聞こえる
「気をつけて下さい。この先は危険ですから、魔王城に近付く者を殺そうとする危険な魔物もいます。ですが、私は信じていますラウルさんなら魔王城に必ず辿り着けると。だから……」
辺りを見てくるだけなのに お姫様は大袈裟だなと思って一歩ニ歩と歩いていた途端に、いきなり光りに包まれて気が付いたら森の中に居た。森の外はまだ明るいと言うのに森の中は薄暗い見渡す限りに木木木 と木が不揃いに列んでいる。入口付近とは全く違う景色だし お姫様も居ない。
おそらく私は森の入口付近から森のどこかに転移されたのだろう。そしてお姫様はこうなる事を知っていた だから最後に
《だから、私は魔王城で待っています》
と、言ったのだろう。
光り包まれる中で私が最後に見た お姫様は泣いていた。女の子を泣かせたままと言うのも後味が悪いし、さっさと約束の魔王城へと向かうとしますか。