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第3話「驚愕の事実」

闇夜の中、劇的な脱出に成功した私達は逃げている。逃げる、逃げる、とにかく逃げる。追っ手が来たら きっと、いや、確実に負ける。だから、逃げる。しかし、この光景をあらためて見ると、私が城に囚われのお姫様を連れ出した様にも見える。……自惚れるな私よ、私は、お姫様を守るナイトにはなれない。何故ならば弱いからだ! 一体あと何回言うんだ! この台詞……ふさぎ込んでもしょうがない、これから魔王を討伐しに行くのだから……。


「此処まで来れば追っ手の心配もないと思いますし、少し休憩でもしますか?」

「そうですね」

「では、あそこで休憩しますか?」


そう言って私が指を指した先には木に囲まれた茂があった。隠れて休むには申し分ない場所だ。


「……本当に好きなんですね。茂」

「…………」


なんとでも言ってくれ。そうさ、私は茂が大好きだ、愛している。いや、ごめん、言い過ぎた。実はそんなに好きではない。なんか、お姫様と居ると調子が狂うな、私のキャラが崩れていく……そんな感じがする。


しばらく、茂に隠れながら休憩する事、なんと五分。お姫様は眠っていた。その寝顔がとても可愛いと思い見つめていた。あえて言おう。決してやましい感情はないと思うと。

お姫様は国を逃げ出し追われる身となった。追われると言っても連れ戻す為に娘を心配する親なら当然なのだろう、少々過保護な気もするがお姫様と言う立場なら当然なのかも知れない……それでも、そう、それでもお姫様は魔王討伐ゲームに参加した、本来の勇者なら国を挙げて応援や祝福を受けて魔王討伐へ旅立つ、だが、お姫様の戦いは孤独だ、誰からも応援や祝福もない。魔王を討伐して戻ればみんな喜んでくれるだろう。だが、そんなに世の中上手くはいかないモノだ。もし倒せなければどうだ? 勇者が殺されたから国を見捨てて、逃げ出したお姫様と罵られるのがオチだ。本来、勇者とはその国で最強の強者に贈られる称号でもある、その勇者でさえ魔王城に辿り着く前に力尽きる者も居ると言うのに……鍛えてもいない、お姫様が到底倒せるとも思えない……故に無謀。そう、無謀と知りながら何故、私はお姫様にパーティーに入れて下さいなどと言ってしまったのだろうか? 私は、決してお人よしなどではないし、無謀と勇気を履き違える愚か者でもない。正直スベルニア王国がどうなろうが知った事ではない。スベルニア王国の勇者を殺したのは私なのだから……ならば何故だ? 償いか? 罪の意識か? そうなのかも知れない、勇者を殺した償い。お姫様を手伝う事によって私は勇者を殺した罪から逃げ出したいだけなのかも知れない……。


そんな事を考えてから、しばらくしてお姫様は目覚めた。


「すみません、ぐっすり寝ちゃいました」

「構いませんよ。私が見張ってますから、少々頼りない見張りですが」

「いえ、駄目です。今度はラウルさんが休んで下さい。私が見張ってますから、私が見張りをしても意味があるとは思えませんが……」

「では、お言葉に甘えて、お任せし……」


その後、私はどうやら、かなり眠っていた様だ。何故なら私が目覚めた時、お姫様が私を埋めようしていたからだ……後少し目覚めるのが遅かったら私は永眠していただろう……危なかった。目覚めた私を見たお姫様は泣きながら私に抱き着いて来た。これはかなり嬉しい出来事だったのだが、悲しい事に寝ぼけていて余り感触を覚えていない。その後、お姫様は顔を赤面させながら私に何度も謝って来た。お姫様の話しだと私は二日位寝てたらしい。我ながらよく寝たと思う、原因はおそらくスベルニア王国の脱出の時からの睡眠不足だろう。それで揺らしても叩いても目覚めない私を、何を思ったのかお姫様は死んだと判断し、埋めようとした……そこで目覚めた私を見て嬉しくて泣きながら抱き着いて来たと言う事らしい。


「そうですか、なら仕方ないですね。でも私は、お姫様の率いる勇者パーティーの一人ですから、仮にもし私が死んでたら、お姫様も死んでますよ?」

「あっ!? 確かにそうですよね! 一度パーティーを組んだ者を外すとそのパーティーは全員死ぬ。このルールに引っ掛かります!」

「そうです。だから私達は運命共同体と言う事です。お姫様が生きている限り、私も生きていると言う事になります」


そう、私達は運命共同体。私が死ねばお姫様も死ぬ、お姫様が死ねば私も死ぬ。


お姫様は笑顔で嬉しそうに微笑みながら。


「そうですね。運命共同体です。だから、私達、死ぬ時は一緒です」


そう言い終えた、お姫様は私に手を伸ばし、私はその手を握り、私達は握手を交わした。


言葉にしなくてもいい。これは同盟、私達は運命共同体なのだから。


「では、そろそろ行きますか?」

「はい、行きましょう」


こうして、私達は一時の休憩は終わりを告げ、魔王を目指し再び動き始め……。


「ラウルさん。そう言えば魔王って何処に居るのでしょうか?」


私は柄にもなく転んでしまった……。お姫様は、今なんと言った? 魔王って何処に居るのでしょうか? クイズ? あれ? 違う? 何これ? ギャグですか? そうだギャグに違いない。


「アハハ。……冗談ですよね?」

「はい。勿論本気です!」


真面目な顔できっぱりと言われた……。

此処に来て、驚愕の事実が発覚した。私は、てっきりお姫様が魔王の居場所を知っていると思っていた。だって、そうだろ? 魔王を討伐する為に国を抜け出し一人で魔王に向かって行くつもりのお姫様なのだから、魔王の居場所を知っていると思っても不思議ではないだろう!。


「もしかして、ラウルさんも魔王の居場所、知りません?」

「はい。勿論知りません」

「困りましたね。どうしましょう?」


相変わらず、全く困った様子に見えないお姫様、それどころか私をからかって楽しんでいる様に見える……いや、気のせいだ、お姫様はあれできっと、本当に困っているのだ。そうに違いない。それよりも進むべき道を見失った私達は、これから何処に向かって歩いて行くのだろうか……考えても仕方ない、明日の事は誰にもわからないのと同じ事だ。わからないから進む、この一歩が魔王の居場所に繋がる一歩になると信じて……。


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