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第12話「終焉は新たな旅の始まりを告げる」



私の手にある烙印は、なんとお姫様が施した術だった。この烙印を持つ者を殺した相手は烙印を得る、 その時に魂も一緒に烙印に宿りどんどん蓄積されて行き、最後に烙印を持つ者が呪いで死に今まで蓄積されていた魂が一気に魔王の元に送られる仕組みらしく、つまりライセンを殺しその烙印を受け継いだ私の烙印にはライセンの魂が存在する事になる、お姫様はそのライセンの力を私に継承させようと言い出したのだ。


「そんな事出来るんですか?」

「はい、可能ですが問題もあります。ライセンさんがラウルさんに力を渡す意思がない場合には逆にラウルさんの身体を乗っ取られる可能性もあります」


ライセンに限ってそんな事はしないと思うが、それもいいのかもしれないと思い始める自分がいた。


「面白そうじゃないか。仮にお前の身体がそのライセンとか言う奴に乗っ取られても最悪そのライセンとやらに魔王を倒させれば問題ないしな」

「それは絶対に駄目です! ラウルさんじゃなきゃ駄目ですよ! やっぱり危ないから止めましょう、それに烙印を解除すると私の裏切りがバレてしまい、私を始末しに魔王が来る可能性がありますし」


ライセンは……私になら安心して力を託せると言っていた……私は呪いなんか押し付けやがってなどど思っていたが、あいつはこの事を言っていたのかな? でも、あいつに身体を空け渡すのも悪くないかも知れない……あいつは勇者になるのが目標だった、それにあいつは馬鹿みたいに正義感が強いし、私よりも立派に使命を果たしてくれそうだし……何より私より魔王を倒せる確立が高そうだ。などと私は心の何処かで思っていた。


「……その方法で行きましょう」


お姫様は困惑した様子で私を見ていた。


「駄目です。やっぱり止めました。ラウルさんが戻って来れなかったら私はどうすればいいんですか!?」

「……大丈夫です、信じて下さい。必ず戻ってきます」


……嘘だ、私には初めから戻るつもりはないのかも知れない…………何処かにライセンを殺した罪悪感があるのかもしれない。私の言葉を真に受けたのか魔女は満足そうな笑みを浮かべ。


「いい覚悟だ、私は信じてやる。お前が戻ってくると」


お姫様は思い詰めた顔をして私をじっと見つめながら。


「……わかりました」


おそらく、お姫様は私の意図に気付いている、そんな気がした。

魔女はそんな様子などお構いなしに何かを閃いたのか、妖しく笑いを浮かべ。


「そう言えば、裏切りの女神を始末に来る可能性があると言ったな? ならば女神のお前が此処に居れば、魔王は此処に来るのか?」

「私が居ればおそらく此処に私を始末しに来ると思います」

「そうか、ならば私も魔王退治に参加出来るな。よし、今までの恨みを晴らしてやる」



その後、私達は魔王との決戦に向けて話し合いをした。

その結果、私は烙印開放の儀を受けライセンと対話している間、意識を失い無防備になる。まあ、意識があってもそんなに変わらないかも知れないが……。そして私が力を得て戻ってくるまでの間、魔女とお姫様が時間を稼ぐ事になったが、魔女がそれを拒否し、一人で魔王に挑むと言った。理由は私が戻って来ても『神殺し』だけでは魔王に勝てないから、逆にお姫様の『魔殺し』だけでも勝てない、ならば一人で時間を稼ぎ、戻ってから二人で挑めと魔女は言った。お姫様は魔女を心配しそれを否定しようとしたが、魔女は「私は不死身だ。それに死んでも構わない。もう十分過ぎるほどに生きた」と魔王に一人で挑む決意が揺らぐ事はなかった。それにお姫様は渋々と納得して作戦は決まり最後の戦いに向けて動き出した。



お姫様が真剣な面持ちで何かを呟き始めた。その直後、私の手に刻まれた烙印が物凄く青白く光を放ち点滅し始め、次第に私の身体が鉛の様に重くなる。それを見たお姫様に私は抱き抱えられ、魔女はその様子に何か言い足そうな様子で黙って見ていた。

その直後、前方から巨大な紫色のブラックホールの様なモノが現れその中からは、一見人間の優男風な姿に見えたが頭から屈曲した真紅の二本の角が生え、背中からは黒い翼が左右に広がり、その姿を見ているだけで死をイメージさせられる程に恐ろしく圧倒的な威圧か感じ取れた。


「女神が裏切るのは予想していたが、そんな貧弱そうな男で我に勝てるのか?」


魔女は感情を抑える事無く苛立ちと怒りを露わにした様な面持ちで。


「フン、お前。随分と昔と姿が違うな、まるで人間の様な姿じゃないか?」

「かつての魔女か、貴様には随分と世話になった、礼を言うぞ。どうやら人間の魂を喰らいすぎて、我も人間の姿になったらしい」


魔女は私とお姫様の前に立ち、魔王と相対している。その様子を見た、お姫様は背中から白い翼を展開し、私を抱えたまま魔王に背を向けて飛び立った。その姿に涙を浮かべながら。その後、魔女と魔王が相対していた場所から離れた場所に降り立ち。私は遂に意識を失った。






真っ暗闇の中に私は居た。これがお姫様が言っていた意識の世界なのか? そんな風に考えていると不意に私の目の前に光の塊が現れ、それは徐々に人の形を形勢していき、それがライセンの魂なのだろうと唐突に理解した。


「ライセン……」

「ああ、こんな姿でなんだが俺だ。お前の今までの戦いを見ていたぞ」

「見られていたのか……恥ずかしい限りだ……私は何時も逃げてばっかりだったろ?」

「確かにな、だがお前がテイルに殴り掛かりに行った時は流石に俺も驚いたぞ?」


表情も姿も見えないが、やっぱりライセンは変わっていない。私がよく知るライセンのままだ。


「あれは、私に何か力があるんなら魔女に頼らなくても私にも何か出来るんじゃないかと思ったから……でも、あれで私が如何に無力な存在なのか思い知らされたよ。ライセンなら王様にも勇敢に向かっていったんだろうが、私には逃げる事が精一杯だった」

「確かに俺ならばテイルといい勝負が出来ただろう。だが、ラウル、お前はお前だ。俺ではない、無理をする必要はない」

「ああ、だから私は此処に来たんだ。お前なら、私よりも遥に魔王を倒せる確率が高くなる。だから世界を救ってくれ……私には無理だ」


光に包まれたライセンの表情を見る事は出来ないがライセンは沈黙していた。

私はライセンになら全てを任せられる。


「……いいんだな? 本当にお前はそれで」

「ああ、お前なら私は安心だ」


……そうだ、これでいいんだ。私が力を得た所であの魔王を倒す事は出来ないだろうから……お姫様にもその方がいいだろうし、魔王を倒せばきっとルリは神界に戻ってしまう……所詮は人間と神、交わる事などないんだ。ならば私と一緒に散るよりはライセンに任せて魔王を倒せる確率を少しでも上げた方がいい。


「……なら、どうしてお前は泣いている?」


気がつくと私は泣いていた。お姫様と別れるのが辛い、別れたくない。でも道は他に残されてはいない。所詮、私は無力なんだと知っているから……。


「……なんでもない。さあ、早く私を殺してくれ」

「嘘をつくな、お前は嘘を付くのが得意だからな。だが、今回は騙されてやらん。それに俺にはもう待つ者もいない……だがお前の帰りを待つ者はいるだろう?」

「でも、私が戻った所で魔王になんか勝てる訳ないだろう! 私の事を見ていたのなら分かるだろう! 私には逃げる事しか出来ないんだ!」

「それでも、お前はテイルに立ち向かった。弱くてすぐに逃げ出す、お前でもテイルの前に立ち一発殴ったじゃないか? 本当に弱い奴はそんな事はしない。もし俺がお前の様に弱かったらあんな真似は出来ない。お前だから出来たんだ! もっと自分を誇れ! お前は弱くない! 俺が保証する。お前は俺に罪悪感があるのかも知れないが、そんな事は気にするな! あれは俺が頼んだ事だし、俺がそもそも気にしてない。なのにお前だけ気にするのはおかしいだろ? それにあの時、約束しただろう? 俺の力はお前に託すって、だから受け取れよ」

「ライセン……」


……そうだった、ライセンはこんな奴だ。いつもいつも、自分の事より私なんかの事を気にする、変な奴だったんだ。


「それに、何が悲しくて俺がお前の様な男か女なのか分からん身体なんぞ使わないといけないんだ? そんな身体に入るぐらいなら俺は死んでた方がマシだ」

「……それは悪かったな」

「ああ、悪い。俺の力を受け取りさっさと戻れ、俺は天国で早くハーレム生活を送りたいんだよ! だから魔王を倒せ、お前が負けたら俺の魂は魔王に喰われちまうからな、だから俺の野望の為にも勝てよ」


相変わらずライセンは、私と違い嘘をつくのが下手だな……。


「ありがとう」

「いきなりなんだよ? 気持ち悪いな、お前なんかに礼を言われる筋合いはない」

「いいんだ、言わせろ。ありがとう」

「フン……勝手にしろ」


直後、目の前の光の塊は私の身体に取り込まれ、温かな気持ちに包まれて一つになった。

そして次第に頭が覚醒するのが分かる、私はゆっくりと瞼を開き意識を覚醒させた。







「ふぅ、戻って来たか……」

「ラウルさんですか? もしもライセンさんならば今度こそ殺しますよ?」


今まで泣いていたのか、お姫様の目は赤く充血していた。しかもいきなり物騒な事を言われた……ライセンに代わってたらライセンはいきなり、お姫様に殺されていたのか……とりあえずからかって見ようと私は思ってしまった。


「残念ながら私はライセンです」

「ラウルさんが戻って来てくれて本当によかったです。ラウルさんはてっきりライセンさんに身体を差し出すつもりなんじゃないのかってずっと思っていたんですよ!?」


そう言ってお姫様は私に抱きついてきた。やはり気付いていたのか……ライセンに身体を譲ろうとしていた事に……。再びこうしてお姫様の温もりを感じられる、やはり戻ってきてよかった……ありがとう、ライセン。


「……そのつもりだったんですが、お前の身体に入るなら死んでた方がマシだと断られましたよ」

「それはよかったです。では、行きましょう。ユレアちゃんが心配です」

「そうですね」


こうして意識の世界から帰還した私はお姫様に抱き抱えながら魔女の元へ急ぎ戻った。

魔女の前に戻った私達が見た光景はあまりも無惨なものだった。魔女は血まみれになり、身体には無数の剣が刺さっていた、普通ならば死んでいてもおかしくない状況にも拘わらず、魔女は魔王に向かい立っていた。


「ようやく来た、貴様等が戻ってくるまで暇だったので、こいつに掛けた呪いはそのままにして遊んでいたが、そろそろ飽きて来た所だ」


そう言い放った直後、魔王の立っていた場所の地面から無数の剣が現れ、魔王はその中から一本を抜き、魔女目掛けて投げ付けた、ボロボロになり全身が血まみれの魔女にはそれを避ける事が出来ずに身体に突き刺さり、声を上げる事もなくその場に倒れた。それを見たお姫様は物凄く怖い顔をして魔王を睨み、敵意を向けるが、魔王はそれを気にする様子もなく平然としている。


「さて、貴様等に我が倒せるかな?」

「絶対に倒します! そしてレファイアス兄さんを開放させて貰います」


レファイアス? 以前一度、お姫様が呟いていた言葉だ……そうか、この世界に現れた神様はお姫様の兄だったのか……それは助けないとな、魔王に取り込まれたままではお姫様もいい気分ではないだろう。それにライセンが天国でハーレムなるモノをつくるには魔王を倒さなくてはな。


「確かに一人であんたを倒すのは無理かもしれない……だが、私とルリが力を合わせればあんたなんかに負ける訳がないだろう?」

「ほう、では二人まとめて掛かってくるがよい」


私は魔女に貰ったナイフをポケットから一本だし構え、お姫様は黒い剣を構え、私達は戦闘体制に入った。魔王はその様子を見ても特に変化を示さなかった。私とお姫様が魔王の懐まで走って行き、魔王に切り掛かったが魔王は地面に刺さっている剣を抜き、一閃し私達を同時に吹っ飛ばした。魔王はその場所から一歩も動いてはいない。


「その程度か、二人の力とやらは。正直、失望したぞ」


だが、お姫様は怯む事なく無数の光の矢を自身の周りに展開してそれを魔王に向けて一斉に発射した、魔王は回避する様子も見せずにその場に佇んでいる。そして無数の光の矢を浴びた魔王は煙りに包まれ姿が見えなくなった。お姫様はその間に違う術を繰り出そうとしているのか何かを呟き始めた。そして煙りが消えると同時に。


「光よ集い閃光となりて適を射よ」


お姫様の手から白い光の太い線の様な鋭い光線が魔王に向かい凄まじい勢いで一直線に向かって行くが、魔王はそれをデコピンで軌道を反らし、反らした光線は木にぶつかりその木を消滅させて消え去った。私は次元が違う戦いにア然としていた。いくら力を得たと言ってもライセンは人間だ、私の身体能力が少し向上した程度だ……こんな戦いの戦況を覆す程の力はない! 断言する。


「もう終わりか? では次は我の番だな」


魔王が、そう言った瞬間に全て終わっていた……神速? 何も見えなかったが、私もお姫様も身体中を無数に斬られていた、魔王にとっては準備運動程度なのだろうが、次元が違い過ぎる……私達はその場で倒れた。


「興ざめだ、どうやら我は強くなりすぎた様だな」


そう言って動けないお姫様にゆっくり近づき、ボールを片手掴むかの様にお姫様を顔を鷲掴みにして薄気味悪い笑いを浮かべた。


「我は女神である貴様が気に入っているから殺しはせん、だが貴様が私のモノになるにはあの男が邪魔の様だし殺そうかな?」

「……ラウルさんを殺すのなら私も自害します……」

「ならば、あの男を見逃したら我のモノになるか?」

「…………」

「……ならば仕方ないな、殺すか」


その場にお姫様を投げ棄て私に向かい魔王がゆっくりと歩いてくる。


「……わかりました……ラウルさんを見逃してくれるのなら……私は貴方のモノになります……だからラウルさんは殺さないで下さい……」


お姫様は起き上がり、今にも泣きそうなのを我慢しながら魔王に言った。魔王は立ち止まり、薄気味悪い笑いを浮かべたまま私に。


「よかったな、見逃してやる」


そう言って私に背を向けてお姫様に向かい再び魔王は歩いていった。


な……なんだよ、私は結局、枷にしかならないんじゃないか! いつも私は足手まとい……私は結局、無力なんだ……私は誰も助けられないんだ。ライセンに力を貰っても何も変わらない……無力なまま……またお姫様を泣かせてしまった……。


魔王は再び、お姫様の顔を掴み上げて、いやらしく笑みを浮かべていた。お姫様は全て諦めたのか、涙を零しながら無表情だった。魔王はお姫様を掴んだまま、魔女の方に歩んで行き。


「こいつには、とどめを刺しておくか」


そう言って持っていた剣で魔女を刺そうとしたが、魔女はそれを寝返りをしてそれを回避し、起き上がり刺さっている剣を全て抜いた、抜いた先から血が渋きが上がり飛び散っている。


「……お前、私の呪いを解いたな……」

「まさか意識があったとはな、だか呪いにより生きながらえていた貴様は、その傷ではどのみち我が手を下す必要なく死ぬだろう」

「……待っていたよ。お前が呪いを解くのを……」


魔女は私の方を一瞬向き、何かを言い足そうにしていた。私は気付いていた……これは魔女が私の為にくれた最後のチャンスだと、しかし情けない事に私にはもう一歩も動く力もない、それに動けたとしてもあんな強大な相手に勝てる筈がない……こんな弱音を吐いたらライセンは怒るな……ああ、間違いなく怒るな……ハーレムがどうのとか言って……それにあんなに小さな女の子(魔女)があんなに傷つきながらも立ち上がったんだ。男の私が此処で立ち上がらないでどうする?……私は必死に立ち上がりポケットから残りの二本のナイフを最後の力を振り絞り魔王に向けて投げ付けた。ナイフに気付き魔王は私に振り向き、回避するでもなくそのままの体制で私を見つめていた。ナイフは魔王の身体に当たる直前に威力が無くなった様にそのまま落ちていった。

やっぱり無理だよな……と下を向き、諦めて死を悟った。


「貴様っ!」

「お前っ!」


魔女と魔王が同時に驚いていたので視界を魔王の方に向けて驚いた。


「……これで貴方はラウルさんに勝てなくなりましたよ……」


なんと私が投げたナイフのもう一つがお姫様に命中していたのだ……私のナイフに命中したお姫様は白い純白の光に包まれ半透明になっていた、そして魔王の手から逃れ、今にも消えそうな手で私に抱き着き笑顔で笑いながらお姫様は光の粒になり消えて言った……。

『神殺し』の能力、私の攻撃が一度でも当たれば女神であるお姫様は死ぬ……。


なんだよ……なんなんだよ! なんで……なんで、お姫様が、消えるんだ……あんまりじゃないか? どうして、どうして……私が大切に想ってる人は……私が殺さなければいけないんだ……? 結局……私には誰も救えない……むしろ大好きな人を殺す疫病神……ライセンをお姫様を大切な人を必ず殺してしまう……疫病神……ピッタリじゃないか?……なのになんで二人とも最後に笑顔で私なんかを見る……?。



私の周りに漂う力に魔王が恐怖感を抱いたのか私の周りに黒い光の槍を無数に展開して一斉に私目掛けて襲いくるが、私には避ける必要がない。魔王の放った槍は私に掠り傷一つ付ける事なく私に当たる直前に粉々に散っていた。


「効かぬか……この私に恐怖を抱かせるとは貴様何者だ?」


お前なんか、今はどうでもいい、私は大切な人を殺してしまった……もうこんな戦いに意味はない……もう私が生きている理由もない、でも魔王が憎い、魔王さえいなければルリは死ななかった。自分で殺しておきながら、八つ当たりなのは分っている。


「なんだ、だんまりか? ならば消えろ目障りだ!」


魔王は私に向けて黒い焔の竜の放ったが私はその竜の首を片手で掴み首をへし折り、消滅させた。

魔王は強大な力を持った私に震えていた。

おそらく私はお姫様の思っていた以上に強くなったと思う。『神殺し』 『魔殺し』二つの力が私の中で反発しあい、生じ目覚めた力。それが破壊神、その力は全てを一撃の名の元に破壊する。その力を通し頭に流れてくる、既に魔王など相手ではないと。


「お前はこの一撃で死ぬ、例外はない」

「フン、調子に乗るな。ちょっと強くなったぐらいで力を過信するとは女神も力を託す相手を間違えたな」


私はお姫様の使っていた黒い剣……を呼び出しそれを握り、空間を利用して魔王の後ろに一瞬で転移し黒い剣を魔王の身体に突き刺し、魔王は何が起きたのか分からないまま……呆気ない程に簡単に死んだ。その様子を見た魔女は私に恐怖したのか脅えていた。


「……全て終わりましたね」

「……ああ、そうだな……」

「立場が逆になりましたね」

「……すまん。だが、お前は突然強くなり過ぎだ」

「すみません」

「い、いや別にいいんだがな……」


その時、突然魔王の死体から光の粒子が舞い上がり、丸く集まり光の球体が現れた。


『我が名はレファイアス。お主の活躍のお陰で、魔王から離れる事ができた、礼を言うぞ』


球体からではなく、周辺に響くように声が聞こえた。レファイアス、魔王に囚われていたお姫様の兄……。


「貴方に礼を言われる筋合いはありません。私は貴方の妹を殺してます……」

『知っておる。だが、それはルリが望んだ事だ、私がとやかく言う筋合いはない。それにお主とルリの融合は不完全な形のようだしな』

「不完全?」


私には意味が分らなかった。


『本来、神を殺した相手とその神は完全に融合するのだが、お主とルリは完全に融合を果たしていない』

「まて、よく分からんが、お前と魔王は完全に融合していたのか?」

『魔の者と神は融合出来ぬ、魔王は我を勝手に取り込みその力の一部を使っていたに過ぎぬ』

「なるほど。ならば何故、こいつらが融合してないと分かるんだ?」


魔女は神に動じる事なく普通に話している、さすがは魔女と言った所だな。しかも私より話を理解している……。


『神と融合した者は神になる、だがおぬしからは神の力を感じぬ』

「だが、こいつはお前が敗れた魔王をあっさり殺したぞ?」


魔女は私に指先、光の球体に訴えている。


『先ほどの力、もうお主に出せないだろう?』


そう、魔王を倒す前から、少しずつ極限まで上がった力は急速に減っていった、だから魔王を倒すのを急いだのだ。そして今はもう空っぽの状態で全く力を感じられない。


「はい、極限まで上がった力が急速に減っていくのを感じたので魔王をさっさと殺したぐらいです」

「そうだったのか……ならば今は私より弱いのか?」

「……多分」

『それはルリがお主の中に入った時に、お主の力とルリの力が反発して生まれた力だろう』


確かにそうだ、反発して生まれた力だと私は理解していた。


『ルリがおぬしの中に入り安定した今、お主はただ人間だ。神と融合すればおぬしは人で失くなる。瑠璃はそれを危惧して融合を最小限に抑えたのだろう。そしてお主も心の奥底からルリとの融合を拒んだ、だから今の状態なのだろう』

「なら、ルリは生きているんですか?」

『おぬしの中で眠っている状態だな。ルリの身体に近づければ共鳴して、元の姿に戻るだろう』


ルリは助かる? 私に生きる希望が生まれた。


「それで、ルリの身体はどこにあるんですか?」

『神界にある』

「まて、それは無理だろう? こいつは人間だ、神界には行けないんじゃないのか?」

『一つだけ方法があるにはあるが……お勧めは出来ぬ』


ルリの顔がもう一度見られるのなら私は何だってする。ルリがいない世界に意味はないから……。


「ルリが助かるならなんだってやります、死ねと言われば死にます」

『……そこまで言うのならばいいだろう……我と融合しろ』

「はっ?」


いきなり融合とか意味が分らん。


「なるほど。こいつが神になれば確かに行けるな。たが、その方法はお前が死ぬんじゃないのか?」


私には理解出来ないが魔女は理解しているらしい……。


『我もルリが助かるのならば死んでも問題はない。だが、おぬしにその覚悟はあるのか? 我を殺し融合すれば、おぬしは本当の意味で神殺しとなる、神殺しは神界の中でも禁忌中の禁忌と呼ばれお主は神に命を狙われる、いやその力を奪おうとする者にも一生涯、命を狙われる続ける事になる。その覚悟はあるのか?』


ルリに会えるのならば、迷う必要はない。例え命を狙われ続けても私がそれに負けなければいいだけだ。


「覚悟はあります」

『だが、直ぐにルリに会える訳ではないぞ?』

「なんだ? 違うのか?随分と勿体振るじゃないか」

「何だっていい、ルリが助かる方法があるのなら、私はその方法でいい」

『そうか、ならば我を殺し、神殺しとなり世界を周り、四つの『世界の宝玉』を手に入れろ、そうすれば神界への道は開ける、この世界の宝玉は魔王が持っている。残り三つを集めよ』

「なんだか気が遠くなりそうな旅だな? それでも行くんだろう? お前は」


私は魔女に無言で頷き、決意を固めた。


その後、レファイアスは魔女と私の怪我を完全に治してもらった。

そして私はレファイアスを殺し神となり、永遠と思われる時間と神の力と知識を得て本当の意味で神殺しとなった。ルリとの再開を胸に誓い。

私はレファイアスから得た知識と力を確認し、魔王の死体をまさぐり、『世界の宝玉』を手に入れ旅立ちを決めた。

神殺しとなった以上はこの世界に長く留まれない、私の力を狙う強大な存在が現れ、この世界に迷惑が掛かる。魔女は私に向かい、なにか決意した面持ちで。


「もう、行くのか?」

「はい。どうやら神の力を得た事で異世界に転移出来る様になったので、それに此処に長く留まると迷惑が掛かりますし」

「私も連れて行け」

「でも、この世界を離れると魔女の能力は消えますよ? まぁ、私もですが」

「フン、なあに、こんな能力に頼らなくても、私は強いんだよ」

「気持ちはとても嬉しいですが、でも、転移は私一人しかできません。だから無理です……」

「なあに、私をお前の使徒にすればいいだろう?」

「なんでそんな事知っているですか?」

「伊達に長く生きてはいないさ。なんだ? それとも嫌なのか? こんな可愛い美少女を使徒にするのが」

「いや、でも使徒になると、私が死ぬまで死ねませんよ?」

「あいにく不死身の身体には慣れている」


観念した私は、魔女の心臓に手を伸ばし、それを私の身体の中に納めた。


「ほう、これが使徒か? あんまり変わらんな」

「私にはよく分りませんが」

「それより、これから楽しそうじゃないか? 異世界の冒険だろ?」

「そうですね、これからよろしくお願いします」

「ああ、任せろ」


こうして私はこの世界での旅は終わりを告げた。

これでこの世界はあるべき姿を取り戻し、世界は平等になった。

多分この世界ではまた遠からずに争い始めるのだろう……でも、それがあるべき姿なのなら私や神がその事に手を出すべきじゃない、それが世界。

世界は平等であるべきだ……神がそれを悪い事だと決めて縛る権利はない。




旅は終わり新な旅が始まる。


ルリとの再開を胸に誓い。



また笑顔で再開する日を待ち焦がれながら。



私は歩んでゆく……ルリに繋がる一歩を……
















最後まで「勇者を殺せし者」をご覧頂き本当にありがとうございました。


m(_ _)m



こんな所まで読んで下さった方が居るかは微妙ですが、本当にありがとうございました。


m(_ _)m



一応、これで終わりです……完結出来てよかったです。


目標は達成しました。

この物語を通して私は色々と勉強になりました。

途中から、多分3話辺りからずっと物凄く物凄く……三人称で書きたくなったのを抑えていたり。


話しが途中で予定とズレたりと……。


1番ズレたのが11話です……書き始めた当初からあの場面でラウルがお姫様を殺すと言う概念を持って書いてましたが……なんなのこの展開? と言ったお姫様の言葉は私の心境ですね。


10話まで読んで頂いた読者の方々(居るかわかりませんが)も多分11話で読むのを止めるんじゃないか? と想いつつもズレたまま投稿してしまいました……。


読み直して見るとおかしな部分が大量に見付かったり、表現が甘いヵ所は数え切れません!


なによりも背景描写が少ない!


等と色々と自身がまだまだ未熟なんだな……と再確認出来た(元々未熟者ですが……)


最後の愚痴にまで付き合って貰い。


本当にありがとうございました。


m(_ _)m



では、次回作品でまたお会い出来る事を祈りつつ。



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