第1話「追われる者とお姫様」
私は追われている……
何故か? 話せば長くなるが説明するとこうだ。
この世界には四つの国がある。その四国はとても仲が悪く絶えず争っていた、ある日そんな世界に見兼ねた神様が世界に降り一つのゲームを提示した。
それが『魔王討伐ゲーム』であり『神の降臨』と呼ばれた日。
『魔王討伐ゲーム』とは、四年に一度行われ、四年に一度現れる魔王を倒す為に四国はそれぞれ国内から代表を選び、その代表を勇者とし魔王を討伐に向かわせ、一番最初に魔王を倒した勇者の属する国に世界を治める権利が与えられる。
神様がもたらした、このゲームにより四国間が直接争う事は無くなった。ある意味平和になった世界。
そして私は、その四国の一つスベルニア王国の勇者を殺した罪でスベルニア王国軍に追われているのが現状だ!
しかし、残念なことにスベルニア王国領から外に通じている東西南北にある四つ、全ての門が王国軍に押さえられ逃げ道が塞がれている。何処かの門を強行突破するか? いや、それは無理だ自慢じゃないが私は弱い、そう圧倒的に弱いのだ! この国で戦う目的で鍛えられている兵士相手に敵う筈がない。私は、いたって人並みなのだから……。
しばらく隠れながらコソコソと歩き周った末に、私は茂みにカメレオンもビックリする程に見事に一体化しながらスベルニア王国領の外に通じる門の一つ東門の前を警備している兵士達の隙を伺いながら隠れる事に決め込んでから なんと四時間半 それは突然の出来事だった。
「そんな所で何をしているのですか?」
見て分からないのか? 愚かなり、今や私はカメレオンの擬態すらも凌駕する程に茂みと一体化しているのだ。
「悪いが、今は取り込み中だ! 話しなら後にしてくれ」
「ですが、もう四時間以上もそこにいますよ?」
フン、暇な奴め四時間も前から茂みと一体化した私を観察してるとは……待て、こいつ……今なんと言った!? 四時間以上も私が此処に居ると言ったな……いや、それよりもだ! 私の茂みとの一体化を見破るとは、一体何者なんだ!?
私は声の聞こえた方に振り返り自分の顔で最大限の怒った形相で。
「貴様、何奴!?」
「人に尋ねる時は自分から名乗るのが礼儀ですよ」
「……すまない。私はラウル・リリックだ」
「私はルリ・スベルニアと申します。それでラウルさんは、一体何をしているのでしょうか?」
ルリ? はて? どこかで聞いた事がある名前だな……スベルニア!? ルリ・スベルニアと言えばスベルニア王国の国王様の娘の名前と同じ……同性同名……? それはない! スベルニアえを名乗れるのは王族の直系だけだし。私は自称お姫様を眺める。腰までとどきそうな金髪の艶やかな髪に芸術的な輪郭で長い睫毛に大きな金色の瞳、極め付けにピンクのドレスを身に纏っていらっしゃる。やはり間違いない本物のお姫様だ。何故だ、何故に一国のお姫様がこんな所に居るんだ? 理解出来ない まさか、私が勇者を殺した奴だと知っていて声を掛けたのか!? だとしたらなんだ? 私を捕らえる兵士達が来るまでの時間稼ぎか? いや、四時間もあったのに周りに兵士の気配はない。仮に時間稼ぎだとしてもお姫様にやらせる仕事ではない、ではなんだと言うのだ?。
「あの? 私の話し聞いてますか?」
分からない、どうしてお姫様が此処にいるのだ? なるほど、そう言う事か。お姫様はスベルニア王国の勇者が好きだった、そしてその復讐を果たす為に単身で私を殺しにやって来た、そう考えれば納得出来る。我ながら素晴らしい推理力だと言えよう。
そうなると? お姫様は今まさに私が言い逃れ出来ない様に自白を迫っている訳か、チェスで例えるならチェクメイトと言った状態か……絶体絶命じゃないか!? 私の人生は二十年で終焉を迎えたか……想えば短い様で長い人生だったな……。
「大丈夫ですか? 急に泣きだしたりして? そんなに言い難い事だったなんて知らなかったんです。もう聞きません。ごめんなさい」
何故か私に頭をペコペコと下げるお姫様。
そうか……今から殺しますが、もし私が復讐相手じゃなかったらごめんなさいって意味で謝っているのだろう。そうに違いない! 大丈夫です、私が貴女の復讐相手ですから、誇って下さい。
私は泣くのを止め、手で涙を拭き覚悟を決めた。
「大丈夫ですよ、私で正解です、よくぞ見つけました。だから頭を上げて誇ってください。そして、私に止めをどうぞ」
「…………あの、すみません。意味がよくわかりません」
ん……あれ? もしかして復讐じゃない!? ふざけるな! 私の推理は完璧だった筈だ! なんなんだ、一体こいつは!? 復讐じゃないのならそもそもなんだと言うのだ? 訳が分からない……考えても仕方ない、少し探りを入れてみるか。
「すみません、頭が少し混乱していた見たいです。私は、こうみえても無類の茂み好きなんですよ、ですからこうやって茂みと一体化しながら茂みを観察していたんです」
「そうだったんですか、茂みが好きだったんですか。私は、てっきり門を警備している兵士さん達の隙を伺っているのかと思ってました。勘違いですね、ごめんなさい」
な……なんなんだ一体!? この女、鋭い。まさか気付いていて私をからかっているのか? くっ、どうする? 敵意は感じないが、このまま城に戻られるのは危険の可能性が出て来たな、城に戻り不審者を見たと言われのも面倒だ。話題を変えるしかない!。
「所でルリさんはどうして此処に?」
「実は私スベルニア王国から抜け出したくて、でも門には兵士さんがいっぱいで……」
「なるほど、それで私に声を掛けたのですね?」
「はい、そうなんです。私と同じくスベルニア王国の外に出たい方かと思いましたので……一緒に連れて行ってもらおうかと思っていたのですが……」
お姫様が自分の国から外に出たい、しかも単身で……ほう、家出と言った所か。上手く立ち回ればスベルニア王国の外に出る為に、このお姫様は利用出来そうだな。私にもようやく運が向いて来たな。
フッハハハハハ。私は心の中で自身の企みに満足して笑っていた、此処からは慎重にいかなくては、相手に私の企みを悟られる訳にはいかない、私は頭を切り替えいい人を演じる事にした。
「私でよければ国の外に連れて行って差し上げましょうか? お姫様」
「!?……私の事をご存知だったのですか?」
自身でスベルニアを名乗っておきながらこの反応 鋭いと思っていたが勘違いだったか……いや、決めつけるのは早計だ、私にそう思い込ませる為にわざと驚いた可能性も考えられる。試されている? この私が? 面白い!。
「先程の自己紹介の時にスベルニアと名乗っていたので、この国でルリ・スベルニアと言えばお姫様しかいませんよ」
「なるほど、確かにそうですね 納得しました。私を国王の娘だと知っていながら、それでも私を国の外に連れて行って下さるのですか?」
「ええ、私のエスコートでよろしければ」
「これは、私の独断ですよ? 失敗すれば国王の娘をさらった重罪人になりますよ?」
「訳ありなのは覚悟の上です」
私は既に重罪人なのだから、これ以上罪が重くなることもない。
「そうですか、ありがとうございます。よろしくお願いします」
そう言ってお姫様は、私に深々と頭を下げた。
「一つ聞いてもいいですか?」
「はい、なんでしょうか?」
「お姫様はどうして国の外に出たいのですか?」
お姫様は真剣な表情で私を見つめながら言った。
「……既にご存知かも知れませんが、この国の勇者……ライセン・セルフは何者かに殺されました……国の勇者が出発前に殺された場合は王家直系の者に勇者の権利が移る事が可能です……お父様は既に現役を引退した身ですし、直系の者は私しかいません、ですがお父様は私が勇者になるのを反対で……」
なるほど、大体の事情はわかった。娘を心配する親は普通だと思うが……ゲームに敗れた国の扱いを考えれば例え娘でもゲームに参加させると思ったが、やはり王とは我々民の事など考えてはいないと言うのか……それとも、この『魔王討伐ゲーム』には何かあるのか……。
「なるほど、大体の事は わかりました。お姫様は殺された勇者の代わりに、この国を守る為に勇者になり魔王を討伐に行くんですね?」
「はい、そのつもりです。私が魔王を倒せるなら死んだって構いません」
お姫様の瞳に揺るぎはなかった。
勇者を殺した張本人の私が言うのも難だが、立派な覚悟だと素直に思う とても私には真似する事は出来ないだろうから、だから……私は土下座してこう言った。
「私をスベルニア王国の勇者パーティーに加えて下さい」
お姫様は驚いていた。その驚きは私が勇者を殺した者と知っていての驚きなのか……いきなりパーティーに加えてくれと言われた事に対する驚きなのかは、私にはわからない。
「顔を上げて下さいラウルさん。はい、これから よろしくお願いしますね」
お姫様は優しい口調でこう言った。
この作品をお読み頂き、ありがとうございます。
m(_ _)m
とりあえず自分のペースで連載して逝きたいと思います。
とりあえず目標は完結です……消して完結しないまま終わった作品が多数存在するので……
相変わらず最初に想定した形から随分掛け離れた作品になって来ましたが生暖かい気持ちで見てもらえれば幸です。
続きでまたお会い出来る事を祈りつつ。