挨拶回り
「次は、お前のことをよく思っていない先輩たちに挨拶だ。けちょんけちょんにしてやるといい」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! もう少し説明してくれないと、意味が分からないぞ!?」
カイトは慌ててリーファの話を止める。
自分のことをよく思っていない先輩?
どうしてそんな存在にわざわざ会わせようとするのか。
この場合の挨拶とは、社交辞令というより宣戦布告的な意味を含んでいる。
自軍の中で揉め事を起こすのは普通嫌がりそうなものだが、リーファは全く違った。
いや、むしろその逆。
揉め事を推奨しているのだ。
「そもそも、よく思われてないってどういうことなんだよ。俺はまだ入ったばかりの新人だろ?」
「そりゃ、他のやつらは必死に試練を乗り越えて魔王軍に加入したのだ。人間が魔王直々にスカウトされたと聞いたら怒るだろ」
うっ……と、カイトは言葉に困る。
魔王軍にも加入試練というものがあるらしい。
その試練がどれほどの難易度を誇るのかは知らないが、カイトはそれを無視して加入した。
いくら魔王からの特別処置だといっても、納得できない者がいるのは仕方ない。
ここは超実力主義の空間。
力ずくで納得させる必要がある。
「どうした。怖いのか?」
「怖いというか……俺のことをよく思ってないやつって誰なんだ?」
「んー、何人もいるだろうなぁ。まあ、今回会うのはその代表みたいなやつだ。そいつを倒せば、自然に周りのやつらもカイトの力を認めるであろう」
「手合わせするのは確定なんだな……」
カイトは一つため息。
まさか加入してすぐさまこんなことが起こるとは。
こういう部分も人間界とは大きく違う。
もし負けたらどうなるんだろう。
自分のことをよく思っていないやつらは大量にいるとのこと。
一番最初に舐められたら、その後はずっと舐められ続ける。
つまり、負けたらカイトの立場がかなり悪くなってしまうということだ。
リーファの期待に応えるためにも、絶対に勝たなくてはいけない。
「場所は我が軍自慢の特製闘技場だ。カイトは期待の新人だから、観戦者は多いと思うが気にするでない」
「いや、気になるよ」
「あ、別に観戦者に配慮する必要はないからな。好きに暴れるのだ」
「そういう意味じゃないけど……まあいいや」
こうして、カイトは渋々了承の意を示す。
どちらにせよ断るという選択肢はない。
それなら、何も言わずに受け入れておくのが今後のためだ。
思えば人間の世界で自分は本気を出したことはなかった。
理由は……周りのみんなが気味悪がって逃げていくから。
勇者パーティーの中でも、敵を倒すために必要最低限の力で対処していたことが多い。
だが、今回はそんなこと考えなくてもいいらしい。
むしろ、力を出し惜しみする方がマイナスになる。
人間界では考えられない空間だ。
「準備はできたようだな。今から闘技場に向かうぞ」
「ああ。実力を見せればいいんだな」
カイトはそう意気込むと。
手袋を付けて、袖を折る。
ここで勝つか負けるかによって、自分の未来が変わると言っても過言ではない。
人間界では失敗してしまったが、ここでは絶対に成功させる。
そう決意するカイトを見て、リーファはニヤリと笑ったのだった。
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