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《???》



 ……。

 …………。

 ……………………いやあ。


 参ったねぇ、どうも。


 あ。唐突にすまんね。

 どうも、神様です。

 まあ、悪魔でもなんでもいいんだけどね。


 いやいや。

 なにが参ったって、あなた。

 皆さんも聞いてたでしょう?

 あの小っちゃなクズの聖女だよ。


 引っ込んでなさい! だってさ。


 いやはや。

 そりゃあねぇ。こんな仕事してればさ、感謝されたりキレられたりしたことはあったし、祈りを捧げられたり呪いの言葉をかけられたりすることもあったけどねえ。

 あんな風に()()()()のは初めてだったよ。


 まあ。どうでもいいけどね。


 そんなこと言われなくたって、私が手を出したのは最初の一回だけだよ。

 最初に界渡りがあった時さ。

 言っとくがそれだって私がやったんじゃない。ただの自然現象だよ。

 まあ、私が見たのも随分久しぶりだったけどね。ちょうどいいやと思ったんだ。


 その中からちょちょいとね。名前がそれっぽい二人を選んでチートをあげて、こっちの世界の崩壊を防いでもらおうってね。

 別に滅んだなら滅んだで仕方ないが、私だって見てて気持ちのいいものとそうじゃないものがある。救えるものなら救ってやりたいと、そう思ったんだ。

 ただね。こっちにだってコンプラってもんがあるんだ。そんな誰も彼もに便利な力なんかあげるわけにはいかなかったんだよ。巻き込まれた他の子たちには申し訳ないがね。


 ご褒美だってそうさ。

 こっちのルールでね。界渡りでこっちに来ちまった人間には、こっちの世界で積み上げた功徳に応じて願いを叶えてやることになってるんだ。

 あの勇者と聖女がちゃんとシナリオ進めてれば、約束通り元の世界に帰してやるつもりはあったんだよ。

 それがねえ。

 そりゃ敵を殺す分には構わないよ。やりすぎはよくないけど、少しくらいなら多めに見るさ。けどねえ。あんななって味方を大虐殺なんてされたら、こっちだってフォローできないよ。


 ああ。そうだった、そうだった。一個前の来訪者はね。ギリギリ功徳が足りたからね。一個だけ願いを叶えてあげたのさ。

『桜が見たい』ってさ。最期に言ってたから、特別にね。

 まあ、こっちの世界の風土には全っ然合わなかったから、魔力を循環させて無理やり植え付けたんだけど、流石に繁殖できなかったねぇ。



 おっと。いやいや。話が逸れた逸れた。


 何はともあれ、手出し無用と言われた以上は、こっちだって何もするつもりはないよ。言われなくてもしないけどね。

 成り行き任せ。

 歴史の流れに委ねるさ。


 ふむ。

 前回シーンから二週間後。

 グリフィンドルは予測通りに侵攻を始めたよ。


 三悪党は戦争再開と同時に各地で戦果を挙げる。

 そりゃあね。もう彼我の兵士たちのモチベーションが違うさ。

 場所によっちゃあ、篠森潮が名乗りを上げた途端に降伏する奴らまで出る始末でね。

 凍倉美園も、楠蓮太郎も、国の内外でやりたい放題の暴れ放題。


 敵方のグリフィンドルでは内乱も起き始めてね。

 とても戦争なんて言ってらんなくなっちまった。

 結局、帝都襲撃から一年後、最後の会戦でスリザールは見事に勝利を収め、随分と有利な条件で停戦条約を結ばせることに成功したんだ。

 大陸中が震撼したよ。

 まさか、あの愚王がのさばるスリザールが! ってね。

 三悪党とその引率者の勝利だ。


 やあ。やっと話が冒頭のシーンに戻ってきたよ。


 めでたしめでたし。


 ……え?

 あっけなさすぎるって?


 あはは。歴史なんてそんなもんだろう。

 そう。

 なんだって記録にしちまえばあっけなく見えるさ。

 それにね。歴史がどうなるかなんて、その当時の人たちには誰にも分からなかった。

 後になって見直してみれば、まあそうなるだろうなと、必然に思えるようなことだってね。当事者になってみれば予測なんかできるはずがない。


 ()()()()のことだってそうさ。

 今までは特別だよ。冒頭で歴史の事実を確認させて、そこに追いつくように話を進めてきたんだからね。

 ()()()()()はそうはいかない。

 誰にも予測できない、歴史の流れに身を投じてもらおうじゃあないか。


 うふふふふ。


 さっきも言ったが、私は最後まで手出ししないよ。

 最後の最後までね。



 ああ、ついでに一つだけ。

 とある二人の人間の会話をお届けして、今回のところはお暇するとしよう。


 場所はスリザールの端っこ、ホグズミード領。

 時は終戦後まもなく。あっという間にスリザールに取り戻されたホグズミードから、グリフィンドル兵が撤退するタイミングだ。


 それでは皆様、よい物語を。


 ……。

 …………。


「今まで、お世話になりました」

「……なんとも返答しづらいな。君との縁こそ、奇縁というのだろうね」

「そうですね。ええ」

「君さえ良ければ、このままグリフィンドルに来てもらっても構わんのだが……」

「いえ。私にはまだ、やるべきことがありますので」

「ふむ。吾輩には、君の気持ちを推し量ることはできん。だが、勇者殿なら、きっと君が――」

「どうか、そこまでに」

「……失敬した」

「いいえ。こちらこそ。合縁奇縁ではありましたが、どうか幸多きことを、お祈りいたします」

「君にも。と、言いたいところではあるのだが……。そうもいかぬのであろうな」

「どうぞ、お暇なときにでも祈ってくださいませ。私の道に、苦難の多きことを」

「……」



「あの悪党どもを皆殺しにする日まで」


明日より最終章の投稿を開始致します。

つきましては年内完結を目処に、昼と夕の一日二回投稿となりますので、宜しくお願い致します。

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