006話 新しい階層 新しい仲間
産気付いたゴブリナを皆で森林エリアへと運ばせた俺だったが……
突然の出来事で、俺は分娩室の前で何も出来ずに、オロオロ、オタオタする父親に成った様な気分で、新しい生命の誕生を待っていた。
偶に洞窟迷路エリアに出掛けて、スライム達は引っ掛からずで、的確に敵の阻止をする罠を考えたり、設置したりして、気持ちを落ち着けながら、俺は知らせを待ったり、気に成って戻ったりしている……
家出して喧嘩した娘を気遣う父親が病院前で彷徨き、娘からウザいと言われた様な気分で、ん?俺は何を言っているだよ?兎に角、行ったり来たりしながらその時を待っていた。
まあ覗こうと思えば、俺はコッソリと見たい放題なのだが、何となく気分を出してスライム達に任せていた。
良く考えたら父親は俺達が殺したアイツ、何だよな……何だ……何も俺が心配する必要が無いじゃ無いか、バカバカしい話しで面白く無いが、生まれてくる命に罪は無い……チャンと生まれて元気に成れば、どうせ出て行くんだから、俺は真面目に仕事をしようと決心をした。
しかし間の悪い事に、新しく名付けた赤い色が薄らと付いたスライム、コメットが慌てて俺の所に来た「創造主様、どうやらあの雌、ゴブリナの事ですが栄養不良で死にそうなのです。どうしましょう?」何となくキツメの物言いだが、俺は彼女が女性個体だと確信して、赤いからコメット、彗星で良いやと名付けてしまった。
俺は現場まで移動して、息も絶え絶えのゴブリナを見た……可なり具合の悪そうな感じだが、栄養を与えれば何となく元気に成る気がして虹色リンゴの果肉を絞って飲ませてみた。
俺は切り札だと思いながらも反射的に使い、何故か人命救助優先と、不思議な事に勿体ないなどと、一切考えてもいなかった……
ゴクリと飲んで後から流されてくるジュースを、飢えた子供が夢中で飲む様に全て飲み干し、口の周りを舐め取る徹底ぶりで、暫くして元気に成ると目を開けた。
残った絞りかすの果肉も、俺の触手から奪うようにして食べて、申し訳無さそうに種を俺に返すと、我に返ったものか土下座して頭を下げた。俺は立つように促してゴブリナを観察する……
妊娠しているとは言っても、此のゴブリナは痩せ細って胸も萎み、お腹もそんなに膨らんで居なかったので、下半身からの出血で妊娠とは、単なる1号の思い込み、いや、1号ではもう無いのだ。
青い身体をしている元1号は、1番俺に懐いていて最初に話した個体だったから、特別な思いを込めて名字も付けちゃった、ウォルフ・ライエと……こんな迷宮内が大変なときではあるけれども、約束は約束、俺は口約通りにちゃんと名付けた。
羨ましがった他の個体にも、ハイハイ、だったら名前の後に皆ライエと付ければ、良いだけだろう、俺をこれ以上煩わせるなよなぁ、などと俺はその場を放置したのだが、喜んだのは黄色い身体のウンウンとしか言わない、女性個体のエバだった。
緑の男……何となく雑魚キャラポイのだが、そこが又捨て置けない魅力の量産型、ウォルを兄貴と呼ぶので、そんな感じがして俺はザコとでも呼ぼうかと考えたが、チョット可哀相な気がして量産ならマスプロダクションか……マスプ、スプいや、スプロの方が響きが良いか?俺は何となくスプロと名付けた。
実にいい加減な物である……が、一応俺は真剣で、センスの無さを克服?した。
元々此奴らの名付けは手柄を立てた後の筈だったが、ウォルに付けた名前を聞いて「かっけー兄貴、かっけーぜ」「何だかアタシも名前が欲しい」「ウンウン」と、こんな展開でゴブ共の掃討戦では活躍もして貰ったし、まぁ良いかと勢いに任せて名付けて仕舞って後悔をした。
名付けで力を奪われたのだ……どの様な理でそう成ったのかは不明だが、暫くして此奴らの存在が進化すると、俺の中からゴッソリと持って行かれた。
オッとそんな話しをしている場合では無い……又話しが脱線して仕舞ったが、ゴブリナは元気を取り戻し、暫くすると全体が光輝いた。収まると身体が巨大化して、背丈が1メートリ30セチ程に成っていた。
俺がリンゴを食べた時も迷宮が光輝いたそうなのだが、全く気が付いて無かった。
どうやらウチの子達が巨大化したのと同じく、ゴブリナも巨大化していや違うな、1メートリ一寸なら大きく成ったと言うべきか、兎も角健康な状態に戻り、ボン!キュウ、ボン!のナイスバディに変貌して、ゴブの顔付きは醜い小鬼の様だがゴブリナはやや優しい感じする?程度の顔だった。しかしより人間に近く成っていた。
見様によっては可愛い容姿……何となく色気も在って、俺の大人心を擽るのだが、ひょっこりと下腹部を見ると少しだけ膨らんでいた。
因みに耳長でも愛嬌が出て居る……時間毎に変貌して不思議だな、だが解せぬ……
もうスッカリと産気も落ち着いて、ン?男のウォルが判断した話しを鵜呑みにした俺が馬鹿だった「どうやら元気に成った様子だな……もうここを出て行くのか?」話すスライムを初めて見た様な顔をして驚くので「何だよ、そんなに驚く事も無いだろう、出口で逃げる様に言ったのは俺だぞ」
漸く思い出したゴブリナは「話す、初めて、憶えてる、アタシ、感謝、アンタに」単語の順番は妙だが話は俺に伝わり「それでお前はどうするんだ?」「戻る駄目、変わった、アタシ、この姿、帰れない、苛められる」「そうか、だが一人では辛いだろう?」「危険、外、弱かった、アタシ、在った、酷い目」
何となく暮らしぶりが理解出来て俺は「まあそれなら子供が生まれる迄は、ここの果物でも食べると良いさ、裸でもここなら誰も見ないし恥ずかしくは無いだろう、快適な温度だからお前にも住み易いぜ」見ればボロ切れが、申し訳程度に残骸だけ残っていた。
スッポンポンのゴブリナは、懸命に考えながら先程の様に口を動かして「居たい、アタシ、ここ、感謝、お願い」「そうかまあ好きにしろ、だがスライム達に危害を加えるなよ」ゴブリナが頷くと「理解、働く、感謝、アタシ、いい人、アナタは」「褒めても何も出無いぞ」先ずは会話を済ませて、俺は自由にさせる事にした。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ゴブリナはよく働いた……迷宮の中の果実を木に登って採取すると、落ちて熟した物よりも、中には美味しい物があり、スライム達がしている行動を真似て、祭壇に捧げてくれる様に成った。
妊婦がそんな事していても良いのか?とも思わないでは無いが、身軽に動いて居るので、それとなくスライムに命じてクッションに成る様に下で遊んでいろ、などと気遣うと、上から食べ頃の果実を落として、分けて上げている模様だった。
良い所があるじゃ無いかと感心した……そうなってくると俺も、気遣う様に成り、服を何とかしたい、などと柄にも無く考える様に成った。今度猪か何かの動物でも来たら、毛皮でも上げ様かと考えたりもした。
だがゴブリナは、お腹が膨れると、何やら森の中で見付けた物を加工して、繊維を作り出し、器用に織って、数時間後には布で上下を隠した。
此れなら安心かと考えて、手元に残った虹色リンゴの、種の考察をする事にした。
何とも不思議な果実で味の方は、リンゴと桃を足して二で割った様な、両方の味が楽しめる様な、兎に角美味かった。
種はリンゴとは違い、桃の様に一つだけ大きめの種が残って居る……最初に食べたときは丸々消化したので、中味の種がどの様な形をしているのかは不明だったが、見ればスライムの様に涙型だ。
さて此れを如何するかな……絞った時には触手を使ったが、今は真上に向けて種を打ち上げ、落ちてきたところで、再び口でキャッチする……
そんな遊びを俺はしながら考えて居ると、まぁ落とす事も在りまして……変な跳ね方をして彼方に行ったり、戻ったり、丁度力が増して急激に拡張した森エリアに、木々がポッカリと空いた場所へと転がって行った。
「ズニュウ!ズニュゥゥゥ―――――――――――――――――――ウ!」あれ?俺が取り込んでもいないのに、勝手に俺の中に入ってくるぞ?何でだ?俺は、俺は混乱する……
「「「グワ!グガガ――――――――――――――――ァァァアアア!!!」」」
どう言う理屈なのかは不明だが、最初に取り込んだリンゴの実は、アッサリと消化されて此の俺の力に成ったのに、こ、こいつは一体何なんだよぉ――――――お!此の儘ではここが破壊される……
何とか……何とかしなきゃ、駄目だ!考えろ俺、考えるんだ!そうだ抵抗するから駄目なのかも?この力は俺よりも遙か高みに居る存在だ……もうどうせ逆らっても無駄なら出たとこ勝負!成る様に成れ!と俺は全身の力を抜いた。
それから暫くの間の俺は、深く掘り下げて進む根と高く伸びる木をぬぼーと、後でゴブリナに聞いたら何時までも見上げていたらしい……
何故彼女に聞いたかと言うと、俺はゴブリナに抱き抱えられて、胸の中で何時迄も静にジッとしていたらしい……恐怖に打ちのめされて……何も出来なかった自分が悔しくて心の中で泣いた。
漸く頭が働き出した俺は、現状確認を始める……成る程な、いや、ここはそうなのか?違うよな……あれ?此れは……あ!こう繋がるのか、やっと理解が出来たよ、こいつは何て奴だよ、参ったな……俺の中心、迷宮の中心迄が可なりズレてるよ、どうしよう……
俺、枕や寝床が少し変わっただけでも、夜寝られない体質なんだよな……
まぁ考えても仕方ない、成っちゃったものはどうしようもない、だな……確か昔にお祖母ちゃんが溜息を吐いたり、昔を悔やんだりしたら幸せが逃げるよ、前向いて生きよう、明日は幸せに成ろう、明日は成ろう、あすなろだ!何て言ってた様な、無い様な……
結局気持ちの持ち様だな、くよくよするのは俺じゃ無い、あのリンゴのお陰で俺は生き延びたし、動ける身体も手に入れた。
部下達も感情を持てて、自我も芽生えたんだからな、言うこと無しだしゴブリナも命を繋ぎ、今回の俺をいつの間にかデカく成ったその胸で、危険地帯から遠ざけてくれた。今も現在進行でゴブリナは、見た感じ身体を良い方に変化させている……
強制的に引っ越しをさせられて、建物を改造されても、みんな元気でいるよな……
何だよ♪考えれば良い事尽くめじゃ無いか俺、ヤッパリ凄いぞオレー!空元気でも元気の内、前向こ、俺らしくしようぜ♪などと独り言でも言わなければやってられない程、迷宮は力を増して変貌していた。
ゴブリナの双丘に顔を埋め、スライムらしく、プルプルとした後で(内心では……駄目だ俺の触手!パフパフは未だ早い、鎮まれ俺の触手ぅ~~~!)「ゴブリナ、有り難う助かったよ」ピヨンと降りて俺は仕事に掛かる……俺の理性は頑張った。
デカい木に刺さった俺の身体は、良く言ってもお団子状態で、いつの間にか俺は、無理矢理上下二つに分断されて、その繋がりが断裂している模様だった。
そして外とも現在は繋がりが無い……だが苦しくないな?いや、言い方が悪いか、前は外気の供給が断たれて、俺は力が入らなかったのに、今はそんな事は無い……何故だ?不思議だ。
階層が増えているのだが、元々俺の中に存在した力の様で、出来る範囲の事だったのだが、それ迄の俺も現在の俺と同様に、階層を増やす力が不足している様子だ。
この木が切っ掛けをくれた格好だが、この感じでは現在の俺では、どう頑張っても一大プロジェクトに成る仕事だった。そんな風に考えると幸運?ラッキーだったと思う事にして、先ずは地上で知らせを待って居る部下達への連絡だな……
途切れた繋ぎ目を一つ一つ丁寧に繋いで、さて出入り口をどうしようかと考えて、急に困って仕舞った。何故なら木のど真ん中に元の出入り口が在るからだ。
この木は、不思議な構造をしている……俺の目にはチャンと認識しているのだが、スライム達やゴブリナは、何故か木の中を素通りして行き来が出来ているのだ。
どうやらこんな巨木が迷宮内でそびえているなどと、考えてもいない模様だった。
恐らく地上でもそんな感じなのだろう……異空間にでも生えている巨木、ヒョッとして俺の方が異空間で存在しているのかも?知れないが、徐々に大きく成っている事は間違い無い……
最初程の勢いは既にもう無いが、何処までも大きく成って、此の俺が何かの影響を受けるかも知れない、しかし、今更どうすることも出来ず此れも何かの意思、啓示なのかも知れない……などと思うことにした。
俺は万が一を考えて遠く離れた場所に、新たに迷宮の出入り口を作る事にした。
俺は現状の力で届く限りの距離を目指して、出入り口を繋げるため手を伸ばす様に念じ、可なり時間は必要としたが、何とか地上に迄俺の手は届いたのだ。
俺はゴブリナを呼んで彼奴らに事情を知らせて、ここへ迎え入れる伝令を頼んだ。
ゴブリナ「はい創造主様」もうチャンと話せるのか?「未だ少しですが、この程度なら何とか」そうか、なら助かる、俺は地上に残って居る彼奴らを我が家へ迎えに行きたい、だが現状何が在るか未だ不明でな、だからお前に頼みたい……頷くゴブリナに、そうか頼んだと俺は再び告げた。
此処に残って居る者は、正確に俺の話を伝えれそうに無い様子でな、今のゴブリナならばチャンと伝わるだろう、現状を知らせて連れ戻してくれ「理解出来ました。創造主様、畏まりました」「良かった」
ドンドンと話し方が流暢に成ってくる……此れもあの実の力なのか……そしてこの木も……もう無関係などと一切思えない……なあゴブリナ、未だ短い関係だが俺とお前は命の貸し借りをした仲だ。
種族の元に戻る気持も無い様だし、正式な仲間に成らないか?「そのお言葉は嬉しいです、此方からもお願いします。アタシは勿論、お腹の中の子供達も創造主様に屹度忠誠を誓う事でしょう」
そうかならば君に名前を授けよう、瀕死になりながらも手放さなかった鎚、お前は優しさの中にも強さが見える……戦士だったのだろう?「はい、そうでした」鎚はツイとも発音が出来るんだ。
君に相応しいと俺は思うがどうだ?「嬉しいです創造主様、今からアタシの名前はツイです」そうだ今からお前は『ツイ』だ!あ、流れでツイやっちゃったよ俺……
ゴッソリと力が抜けて、一瞬気を失いかけたが俺は頑張った【ツイ、新しい仲間、俺は改めて頼みたい、ツイの新しい仲間達、俺達の仲間をこの新しい階層に連れ戻してくれ】「畏まりました創造主様、必ずやその使命、果たしてご覧に入れます」流暢に話せる様に成ったツイは、地上へと向かった。
その手に名前の由来となった鎚を持って……
此処まで読んで楽しかった。何じゃこりゃ変な物語。駄作しょ。
等々の感想を始め、出来ればブックマーク登録をお願いします。
厚かましくも評価を頂けたら、最高に幸せな作者で御座います。
次回の更新予定日は、04月05日の午後5時に投稿致します。
俺様偉い!の足跡……(迷宮内の理)
中にいる生物を支配出来る事が判明した。何れ他の生物も支配出来るかも?
生物を自在に生み出したり、中で生物などを育てたり出来る事が判明した。
部屋、空間などの模様替えが、任意で可能なのかも?現在考察中である……
迷宮内で意思疎通が出来る生物は、或る程度の知識を分けている事が判明した。
階層を増やす力が潜在的に在る事が判明したが、現状では力不足である……
スライムがご都合主義的に作者都合で扱える驚きの能力……
分裂、合体、変形、胃袋、胃酸、触手、吸収、念話、圧縮