どうぶつ村とひみつの穴ぼこ
どうぶつ村に春がやってきました。桜の花びらが、ひらひら、ひらひら。
ふわふわ、ふわふわ。お外は、とってもいい天気です。
ネコのミューは、どうぶつ村のどうぶつ学校にかようぴかぴかの1年生。
ウサギのリクとキツネのロムは、大のなかよしのお友だち。
今日は休みじかんに何をしてあそうぼうかな?
みんなで校庭にあつまってそうだんをしています。
「かけっこがいいよ!」
「なわとびがいいよ!」
こまったな。ネコのミューはどちらも好きじゃありません。
教室のなかで本をよんだり、ごろんごろんって草むらでみんなでおひるねをしたいと思ってます。
だって、どうぶつ学校に入るまでは毎日おひるねのじかんがあったのに。
今はおひるねのじかんがなくなっちゃったんだもの。
大きくなって、おひるねができなくなるなら、ずーっと小さいままがよかったなぁ。
ミューはおひるねしたときにみる、たのしいぼうけんのゆめが大好き。
だってゆめのなかでは、ネコなのにお空がとべたり宇宙せんにのったり。
いっぱい、いっぱい楽しいことができるから。
がっこうなんて、おべんきょうなんてだいきらい。
ミューは、耳をしょんぼり。
しっぽは、だらりん。
そんなミューたちが、そうだんしているところへ、おさるのミックが手に大きなスコップをもって歩いてきます。
リクがミックに声をかけました。
「ミック、そんな大きなスコップもって、どこへ行くの?」
「そうだねぇ、どこに、行こうかな? お砂場で穴をほってみたんだけど、すぐに地面がみえちゃって、もっともっと、ふかーいところ見てみたいんだよ」
「ふかいところ?」
「そうだよ、大きくて、ふかーい、あなぼこの中へ入って、ぼうけんの旅にでたいんだ。みんなも手伝ってよ」
「ぼうけん!」
ネコのミューは、しっぽがピーン。
おさるのミックがいうぼうけんのたびにいっしょに行ってみたくなりました。
みんなとぼうけんの旅なんて、きっと楽しいね。
「ねぇねぇ、みんな! ミックといっしょに穴ほりしようよ!」
ミューは、みんなをさそいます。
「でも、そんな大きな、あなぼこなんてほったら、先生にしかられないかなぁ?」
リクはしんぱいそうにみんなのかおをみました。
みんなのあたまに、ワニのルリ先生のおこったかおが、うかびます。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。ひみつ、ひみつ、ひみつのあなぼこ、みんなでほろうよ」
スコップとバケツをもって、みんな、しゅうごう。
ミューは、みんなの手をひいて、うら庭へ。
ひみつ、ひみつ。ひみつの、あなぼこ。
みんなで、みんなで、旅にでる。
みんなで歌いながら、ぼうけんの旅にしゅっぱつだ。
うら庭にはミューたち以外だれもいません。ここなら、ひみつのぼうけんができそうだね。
おさるのミックは、にっこりしました。
はじめは、ちいさなスコップで。
みんなで、いっしょうけんめいに、穴をほります。
どんどん、どんどん、穴ぼこは、おおきくなって。
おおきくなって。
大きなスコップで、どんどん、どんどん、ひみつのあなぼこは、おおきくなって。
おおきくなって。
バケツにお砂を入れて、お外へ、お外へ。
ミックは、あなぼこのなか。
ミューはバケツに入ったお砂をミックからうけとって。
リクとロムは、その砂でお山をつくります。
おおきな穴ぼこと、大きな砂のお山。
わくわく、わくわく。
もうすぐ、ちがう世界へいけるんだ。
ミューのしっぽは、わくわくとドキドキで、楽しそうにゆれています。
そこへ、休みじかんがおわるかねの音が、ひびきます。
「たいへんだ、おべんきょうに戻らないと」
ロムは、みんなをよびました。けれど、困りました。
大きなひみつの穴ぼこから、ミックがでられなくなってしまったのです。
「どうしよう」
きづけば、みんな、砂とどろで、まっくろ、どろこんこです。
きっとこのまま、教室にかえったら、先生にしかられます。
けれど、そんなことよりも、おさるのミックをみんなで助けなければいけません。
先生にしかられるのはこわいけれど。
「ぼうけんはまだおわっていないよ」
ミューは、あなぼこへ手をのばします。
がんばって、もうすこし。
がんばって、あとちょっと。みんなで、手をつないで、ミックを助けよう。
なんとか、みんなで、ミックをあなぼこから助けると、みんなは、おおわらい。
だって、みんな、どろんこで、まっくろ。
楽しかったね、おべんきょうがおわったら、またひみつの穴ほりしようね。
みんなで、ゆびきりげんまん。
けれど、楽しい、きゅうけいじかんは、とっくの昔におわっています。
きょうしつにかえると、先生は、カンカン。
そんなに、汚してどうしたの?
でも、ひみつの穴ぼこは、お友だち、みんなのひみつ、ひみつ。
ミューは、先生にしかられても、へっちゃらでした。
おべんきょうがおわったら、また、みんなで、ぼうけんができるのが楽しみだったから。
おべんきょうのじかんがおわると、みんなはうら庭へ、走ります。
ところが、ミューたちが、がんばってほったひみつの穴ぼこはなくなっていました。
「きみたちかい、ここに大きな穴ぼこをほったのは、ダメだよ、こんなところに穴をほっちゃ、だれかがおちたらあぶないからね」
そこにいたのは、どうぶつ学校でおそうじのおしごとをしている。クマのジョーさんです。
ミューたちは、がっかり。
せっかくのひみつの穴ぼこは、ジョーさんにうめられてしまいました。
みんなは、とぼとぼ、それぞれのおうちへかえっていきます。
またあした。またあした。
ミューもがっかり。しっぽは、だらりん。せっかくぼうけんができるとおもったのに。
おうちにかえった、ミューは、おとうさんとおかあさんに、がんばってみんなでほった穴ぼこのはなしをしました。
おかあさんとおとうさんは、ミューのはなしをきくと、にこにこ、にこにこ、わらいます。
「お父さんも、ちいさいときに、穴ほりしたよ。こーんなに大きな穴だったんだ」
「そうね、穴ぼこはなくなっちゃったけど、みんなでぼうけんの旅できてたのしかったわね」
「うん、とっても、とっても、たのしかったんだよ」
ひみつのあなぼこはなくなっちゃったけど。
いつかまたみんなとぼうけんができるといいな
その夜、ミューは、ぐっすり。スヤスヤ スヤスヤ。
ふわふわ ふわふわ。
おともだちと、楽しいぼうけんに行くゆめをみました。
おしまい