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秘密の物語  作者: 猫なの
9/17

中等部へ入学

10月25日、中等部に入ってから最初の1ページを3ページに分けました。

内容は変えてないです。

読んでくださっていた方、混乱させてしまったら申し訳ありません。

温かい春の陽気が心地良い朝、美月は鏡の前に座ってメイドの理沙りさに髪をセットしてもらっていた。

今日は中等部への入学式であった。


「――お嬢様、帰ってきてからにしては?」


理沙が美月の髪をとかしながらそう言うのだが…………


「本当だったら、昨日読みたかったのです。

昨日買ったはいいのだけれど、読めなかったのです!

――――あああ! どうしてそうなるのです!?

って、ここで終わり!?」


「お嬢様、口調が崩れております」

理沙が冷静に指摘する。


「うわああ、もう、気になるのです! 

どうしてアレもコレも気になるところで終わるのですかあ」


しかし髪のセットが終わる頃にはしっかりと心を落ち着かせて淑女に戻った。

今日の髪型は編み込みのハーフアップ。

入学式、気合いを入れて、お気に入りの髪飾りを付けていた。


読んでいた漫画を片付ける。

広い部屋の中でも、とても大きな3つの本棚にたくさんの本が規則正しくきっちりと敷き詰められている。

几帳面なのであった。

そしてその本棚は実はスライド式になっている。

普段は、美月しか持たない鍵がかかっている。

美月はその鍵で、本棚をスライドさせる。

そうすると、また本棚が現われ、そこには漫画本がズラリと並んでいるのであった。これまたきっちりと。


その几帳面さから本棚には決して手をかけないで欲しい、と掃除に来る使用人たちには言ってあった。


「理沙、絶対に見つからないようにしてくださいね? お願いしましたよ?」

「ええ、大丈夫です」

これを知るのは、美月と達美と理沙だけである。

慣れたものなのであった。



美月が漫画を知ったのは小学4年生の夏休みだった。

璃子に少女漫画を貸してもらったのである。

何度も貸してもらう内に、徐々にハマっていった。

そして美月が少女漫画を読むようになるのと同じく、達美は隼人くんに貸してもらって少年漫画を読むようになり、美月は少年漫画にも手を伸ばした。

美月は漫画というものの虜になったのだった。



◇◇◇



中等部の校舎は、小等部よりも小さい。

単純に人数が減るからである。

今年の中等部のSクラスは32人であった。

しかし、その校舎が豪華であることは変わらない。


Sクラス校舎に入ると、涼香が満面の笑みで近寄ってきた。


「美月様、ご入学おめでとうございます」

「ありがとうございます、涼香先輩」

「ああ、美月様が入学するまでの1年間とても退屈でしたわ。

世界が色褪せて見えました。でも、これから2年はまた一緒ですわ!」


(ああ、なんだか、とっても嬉しそうなのですねえ……)

美月は対照的に少し不安になるのだった。


「美月様のファンクラブ会長として頑張りますわ!!!」

「あ、ありがとうございます、涼香先輩」


今や涼香は美月のファンクラブの会長なのであった。

人気のある生徒にファンクラブが出来ることはあるが、美月のそれは小学5年生の時に涼香によってつくられた。

いくらなんでも小学生のうちにつくられることは稀である。


「美月さん」

話しかけてきたのは、小学5年生の時に転校してきて友だちになった柏木心かしわぎこころである。

「中等部でも、よろしくお願いします」

心がそう言って優しく笑った。

「ええ、これからも仲良くしてくださいね」

美月も嬉しそうにそう言った。


心はショートカットの、ほんわかした雰囲気の子である。

とても優しく穏やかで、美月と同じく料理が好きなので、よくお互いにお菓子を作ってきては一緒に食べていた。


――――

――


入学式は中等部の全生徒が体育館に集まる。

この時ばかりはSクラスの生徒もである。


滅多に見ることが出来ないSクラスの生徒に、一般生徒からの視線が集まった。

そして遠巻きに騒がれるのだった。


「ああ、滅多に見られない尊い方々ですわ」

「よく目に焼き付けておかないと」

「これは眼福ですねえ」


その中で、新入生の美月たちといえば……


「高宮様だわ! 三嶋様と佐倉様もいらっしゃるわ!」

「なんて素敵なの!」

「格好いいですわぁ」

この3人はやはり目立つのである。

そして女子人気も高いのであった。


「百々瀬様、ああ、女神のような美しさなんだ……!」

「美月様、なんて凜々しくお綺麗なお方……。憧れますわぁ」

美月もまた同じくらい人気である。

男子人気はもちろん、女子の憧れでもあるのであった。


歩みを進めるごとに集まるキラキラとした視線……。


(注目されていますわ……。

途轍もなく、目立っているのですわ。

うぐ、緊張してしまうではありませんか……!)


美月は人前に出るのが苦手なのである。


――――――

――――

――


無事に入学式が終わり解散となると、あの不思議な図書館に向かった。

精霊図書館、と美月は呼んでいた。


そこは花の匂いで充満していた。

普段よりもどこか甘い匂いであった。


(精霊たちが、入学を祝福してくれているのかしらね? フフッ)


美月は精霊図書館に着くと、あの狭い通路を通って図書館の奥まで進んで行く。


そこではいつものように、慎が本を読んでいる。

美月に気が付くと、これもまたいつものように優しく微笑むのであった。

それに美月は少しはにかんで答える。


美月は慎と向かいの席に座る。


二人で静かに本を読む。


ふと顔を上げて窓を見ると、たくさんの桜が豊かに咲いているのが見える。

桜の花びらがゆっくりと舞っている。

思わず目を細めて、僅かに口角を上げた。


(とっても、綺麗なのです……)


しばらく本を読んだ後、もうそろそろ帰らなければ、と立ち上がる。


「またね?」

「はい、また」

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