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秘密の物語  作者: 猫なの
13/17

変装

休日、美月が璃子の家に行こうとすると、悠彦が近寄って来て手招きをする。


「美月ももう中学生だ。

お転婆もそろそろやめような。

庶民の友だちと庶民の遊びをすることは、美月にとっては普通のことで、見られても構わないと思っているかもしれないけれど、僕たちを取り巻く環境下にいる皆からすると、あり得ないことであり、人によっては軽蔑さえされることだ。

外ではしゃいでいるのを誰かに見られたら、嫌な噂をされるかもしれない。

小学生であったらまだ可愛らしいで済むかもいしれないが、中等部に上がったからにはそろそろそういうわけにもいかない」


「う゛……」

美月はしばらく考えた。

(璃子ちゃんと遊べなくなるのは絶対に嫌なのです)


「うぅ…………」

考え込んでいる美月に悠彦は、仕方がない子だ、というような眼差しを向けている。


そして美月はハッとひらめくと言った。

「――では、私であると分からないのでしたら良いのですね?」


悠人は目を丸くした後、面白げに美月を見る。

「そうだねえ」

「だったら、変装をしますわ!」

「変装?」

「ええ、私だと分からない変装をすれば大丈夫だと思うのです」

「うーん……」

「お願いします、お父様!」

「……絶対分からないようにできる?」

「できます!!」

「……じゃあ、それは柊に見てもらって。後で報告を受けるから」

「はい。今日だけはその友だちの家に行ってはいけませんか?」

「この百々瀬家に来てもらったら? 今日は縁もいないから大丈夫だよ」

「なるほど」

「お別れのあいさつね?」

悠彦が意地悪な言葉を言うと、美月は否定する。

「それは違いますわ、それは絶対に嫌なのですわ!」


その後、美月はメイドの理沙りさにあれこれ変装に必要そうな物を用意してもらうのだった。


――――

――


美月は璃子に電話した後、百々瀬家の門の前で待った。

縁は庶民的なことが嫌いで、美月はよく璃子と遊んでいるのも縁にバレないようにこっそりであるため、璃子を家に入れるは初めてであった。


璃子が来ると、美月は璃子を招き入れる。


「うわあ、美月の家に入るの初めて! いいの?」

「ええ、今日はお母様がいませんし、お父様には許可をいただきましたから」


門から家まで1キロほどあるため車に乗る。

それには璃子も顔を引き攣らせた。

「マジかあ、どんだけ庭広いの……」

「確かに、我が家の庭は自慢なのです」


電話では多少事情を話したが、美月は改めて話す。

「でも、認めてもらえればこれからも美月と遊べるんだもんね? よし! 頑張ろう!」

「璃子ちゃん……!」


そうして家に着くと、その家がまた凄まじい豪邸であり、中に入るとまた……と、璃子が色々と驚きながらも、ようやく美月の部屋に入った。


理沙は、カツラや帽子、メガネなど変装アイテムを出す。

「おお……!」

璃子はテンションが上がったようである。


「理沙も何か意見があったら、言ってくださいね?」

「はい」

理沙は美月の言葉に頷くと、冷静に言う。


「お嬢様はその美貌だけで目立ってしまわれます」

「び、美貌……」

そんな普段使わないような褒め言葉に、璃子は思わずといったように漏らす。

美月はいつものことであったので、何とも思ってはいない。


理沙は続ける。

「ですから、あまり顔が分からないように帽子をかぶるのがいいかと思います。

それだけで、少しでも離れていれば顔はあまり分からないと思うのです」

その言葉に璃子は頷いてから言う。

「それじゃあ髪型も、いつも美月がしないような髪型にするといいと思う!」

「なるほど」

「後は服装も――――」


その後も意見を出していき、美月の髪や服をいじる。


「ふむふむ、これもこうして……」

「それならば、ここも……」

「そうですねえ、これはどうでしょう……」


ふと、璃子が思い付いたように言う。

「――――てか、この美月のチャームポイントをとってしまえば――」

璃子が美月のメガネに手をかける。


「それは……」

理沙が何か言いかける。


「コンタクトデビューもいいと思うよ」

「そうですねえ」

美月が頷くと、璃子がメガネをとった。

そして固まる。

――――

――

「うん、やっぱり、やめておこうね?」

「?」

璃子は何事もなかったかのように、メガネを美月にかけ直した。


「そうでしたでしょう?」

「はい、そうでした」

「?」

理沙と璃子が謎の会話をするのを聞いて、美月は首をかしげるのだった。



それからしばらく試行錯誤して、ようやく美月と璃子は満足そうに頷く。

理沙も「お嬢様の美貌が……」と若干嘆きながらも頷いた。



――――美月は柊を呼んだ。


「失礼致します」


そう言って入って来た柊は美月を見て、キョトンとする。

「これは…………」

そして思わずといったように笑う。

「ハハッ、も、申し訳ありません。

そうですね、ええ、これならば大丈夫でしょう。

写真を撮っておきましょうね。旦那様に報告しておきます」


「よ、良かったですわ!!」

「良かったね!」

「フウ、やりましたね」

とりあえず3人でハイタッチしたのだった。


「しかし、笑うところがあったでしょうか?」

美月が聞くと柊は言う。

「いいえ、普段のお嬢様を知っているからこそ、そのギャップに驚いてしまっただけです。なるほどそうきたか、と思っただけですので。おかしくはありませんよ」

「それならばいいのですが」


美月の今の姿は、ツバのある帽子に三つ編み、少し大きめなオシャレメガネ、服装はTシャツにパーカー、半ズボンである。

いつも髪型は大抵下ろしていて、時々ハーフアップかポニーテールで、メガネは知的な薄いデザインであり、服装はスカートで、半ズボンはほとんどはいたことがない。

おそらく誰が見ても美月であるとは分からないだろう。

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