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秘密の物語  作者: 猫なの
10/17

始めのテスト

美月は、漫画という楽しみを覚えたが、変わらず習い事に忙しい日々は過ごしていた。

学院でも、心という友だちができて時々は雑談をするが、基本的にはほぼ1日中勉強というスタイルを貫いていた。

当たり前に勉強ばかりする美月に、心が合わせてくれただけではあるが。


「もうすぐテストですわねえ」


勉強していると、ふと心がそう言った。

その言葉に美月はピタッとペンを止める。


「そ、そうですわねえ」

美月は冷静を装って言う。


「ま、まあ、ら、楽勝ですけれどねえ」

「さすが美月さんですわ」

「いつもちゃんと勉強していますし」

美月はメガネをカチャカチャと何度もあげるのだった。


(絶対1位ですわ、1位でないなんてあり得ないのですわ、ええ、絶対に)


入学してからすぐにテストがあるのだった。

それは、掲示板に張り出される。

小等部ではそうではなかったので、実際に皆どれほどの学力を持っているか分からないのであった。

ここ最近は寝る間も惜しんで、漫画も封印して猛勉強しているのである。


「私は頑張らないとですわ」

心はそう言ってほんわかと微笑むのだった。

そんな心に美月は、テストで張り詰めていたものが溶かされていくように癒やされるのだった。


その時、一人の男子が近づいてくる。

「心さん、これ、ありがとう」

そう言って心にお菓子の箱を渡した。

「朔太さん」

望月朔太もちづきさくた、心の婚約者である。

心がよく作ったお菓子を朔太にあげているのであった。

とても中睦まじい二人である。

「美味しかったですか?」

「ええ、とっても」


朔太もとても優しい人柄であった。

二人はどちらもほんわかした雰囲気をしている。


(癒やしですわ。これは最強の癒やしなのですわねえ~)


美月はそんな二人が、穏やかに、特にとりとめもない会話するのを見て、とても温かい気持ちになるのだった。


(眠くなってくるのですわ)

そして最近の寝不足もあって、眠気が襲ってくるのだった。



◇◇◇



テストが終わると美月は完全燃焼したようにぐったりとしていた。

それを見て心は思わずといったように苦笑していた。


「ま、ま、まあ、らら楽勝でしたわねぇ~、え、ええ、簡単でしたわ」

「そうですか、さすがですねえ」


――――

――


テストの結果発表の日。

一般校舎前の掲示板と、Sクラス校舎近くの掲示板に張り出される。

それに載るのは1年生285人中の上位50名である。

美月と心は掲示板に結果が張り出されると、それを見に来た。


美月はその結果を見て目を見開いて、固まる。



1位 佐倉慎

2位 高宮晃樹

3位 百々瀬美月

――――

12位 柏木心

――

15位 望月朔太



心は嬉しそうに口を開きかけたが、美月の様子を見ると何かしら察したようで口をつぐんだ。



「――おお、慎も晃樹もすげえな」


晃樹と明、慎も掲示板を見に来たようで、美月の後ろから明の声が聞こえた。


明の言葉に慎は意地悪く言う。

「そういえば、明って何位なの? ええっと、どこに載ってるのかな?」

「う、うるせえな。

全く、晃樹はともかく、何でお前が1位なんだか、理解できねえ。

うん、晃樹はさすがだな」

そう言って明は晃樹の肩を叩くと、晃樹は少し照れたように言う。


「――――いや、大したことない」


その言葉は、美月の耳にやけに響いて聞こえた。


(た、た、た、た、た、た、た…………!!)

心の中でさえ、言葉にならないのである。


美月は思わず振り向いて、晃樹を睨み付けた。

晃樹はそんな美月に気が付く。

「う゛……」

そして思わず唸ると、またやってしまった、というような顔をした。


晃樹はこうやって定期的に美月に余計なことを言ってしまっては、反感を買っている。


「た、た、大したことないのですか、へえ~、フーン、そうですか、なるほどお。

私はそれ以下だったのですけれどねえ。

ま、まあ、私は、全然勉強なんてしていなかったので、仕方がありませんね。

勉強していたら、貴方の上だったのですからね!!

勘違いなさらないでくださいね!!!!」


美月はそう言って、晃樹の足を踏みつけて去って行くのだった。

それに心は苦笑してついていく。

いつものことなのであった。


「痛ッ」

「また、アイツも性格悪いなあ、負けたからって」

その言葉はもう校舎に向かっていた美月の足を止めた。


(ま、ま、負けた、ですって!?)


「50位以内にも入っていない貴方に性格悪いだなんて言われる筋合いありませんわ!!」

美月は振り返って言う。

「フハッ」

それに慎は思わず吹き出して笑った。

「いや、順位関係ないだろ!?」

明はその八つ当たり気味な美月に抗議するように言った。


「フンッ」

美月は今度こそ早足に去って行くのであった。


(あんなに勉強したのに、いつもいつもあれだけ勉強しているのに。

もしかして、小等部でもずっとコイツに負けていたのでしょうか……)

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