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第三十九話 絶望への入り口


俺、アリシャ、ミーニャは大きな城の前に来ていた。夕暮れ時の空はオレンジ色で、幻想的な雲はゆっくりと進んでいる。


貴族特区の中心には一際目立つ大きな城がそびえ立つ。その城は王族が住む場所とされていて、市民や貴族さえも入ることが許されない。

まさかここにティアや明日香がいるなんて想像もしなかったが、ルナの本の地図を記憶で辿るとここだと示していた。

俺たち三人は下から上まで眺め、その大きさに驚いたが、今は目的を果たさないといけないと思い、歩みを進める。

巨大な入り口には二人の衛兵らしき人が両端に立っている。貴族特区に入るときにいた衛兵とはその風貌やオーラがまるで違う。金色の鎧を身に纏い、赤く光る剣を左腰に携えていた。剣からは赤い靄がその付近全体に広がり続けている。それは剣の特性なのだろうか。少しの間、立ち尽くしていたら、俺たちの存在に気づいたのか、衛兵らしき人が声をかけてきた。



「君たち、ご用件はなんだい?」



鎧は目だけ縁取られているので、こいつが青色の瞳をし、凄くイケメンなのがわかった。



「どうします竜二」



衛兵らしき人に背を向け、コソコソと小さな声で作戦を練る。



「そうだな...追手もそろそろ来そうだし、もう倒すしかないだろ」



こいつらにあの時使った中級魔法を使い、眠らせることは不可能だ。そしたら選択肢は一つしかない。



「ですね。やりましょう」



「竜二のなすがままに私は従います」



アリシャとミーニャは俺に賛同し、向き直る。



「えーと、そこ邪魔だ!」



俺は油断して話しかけてきた衛兵らしき人に斬りかかる。光の速さにもなる攻撃はそのまま左手を切り落とす。やはりまだ俺の方がレベルは上みたいだな、さすがに魔王レベルは無理だったがそれ以外は余裕みたいだ。



「っっっくっ!な、何をする貴様!こ、殺す!」



大量の血を左腕から流れ落ち、今にでも気絶しそうだ。俺は反撃する暇も与えず右手も切り落とした。その痛みに耐えきれず衛兵らしき人は気絶した。このままじゃ大量出血で死ぬかも知れないので一応、傷を塞ぐ程度の治癒魔法はかけておいた。殺さない、それは俺が胸に誓った言葉だから。まぁ、剣士が両手を切り落とされたら死にたくなるかもしれないが、そこまでは関与はできないな。

すると、その様子を見てか、もう一人の衛兵が剣を携えて向かってくる。



「ここで死んでもらう!仲間の仇!この私が!」



衛兵らしき人が剣を振り上げ、切り裂く。後数センチのところで避けたのだが、その斬撃は空間を切っていた。ダークホールみたいな物が空間に現れ、吸い寄せられる。



「いやっっ!」



アリシャが風に飲まれてしまう。ダークホールにアリシャが吸い込まれそうになるが俺が手を差し伸べ、ゆっくりと引っ張る。



「助けてください...」



「今、取り出すから心配するな」



俺とアリシャがダークホールに時間を食っているとミーニャが衛兵らしき人に向かって飛び出した。



「無駄なんだよ。この剣がある限りはな」



またしても衛兵らしき人は空間を削り取り、ダークホールを生成する。ミーニャも吸い寄せられそうになるが、足を踏ん張り、なんとか耐える。



「私はあなたになんかに負けません!自由になったこの身、早く恩返しがしたいのです」



そう言うとミーニャはダークホールを右に避け、右拳にタメを作る。



「な、何故動けるのだ...!」



ミーニャは衛兵らしき人に迫り、そのまま顔面に右ストレートをかます。もちろん後ろにダークホールがある事を確認し、回り込んだ。その反動で衛兵らしき人はダークホールに吸い込まれ消えていった。


そいつが居なくなると(あるいは剣が)ダークホールが消え、俺たちは安堵の息を吐く。



「ありがとなミーニャ。今回はお前のおかげで助かった」



「ミーニャありがとうございます。私死ぬところでした」



「いえいえ。役に立ちたかった...ただそれだけです。それより早く行きましょう」



「そうだな」



そうして、俺たちは入り口に行こうとしたのだが、一つ良いことを思いつき、立ち止まる。

両手を失った人の剣はまだあるはずだ。あの剣は強力な力がある。持っておいて損はないだろう。俺は両手を失った人の左腰から鞘とその中に携えている剣を取り、自分の右腰につけると、城への入り口を潜っていった。


入り口を潜るとまず大きな広場があった。赤い絨毯が床一面に敷き詰められていて、その広場には大きな階段が見える。壁には絵画が一枚一枚俺にはよくわからないのが飾られている。

天井に大きく光るのはシャンデリアだ。ダイヤモンドかそれに似た何かで作られているようでとても腹立たしい。それ以外は何もないが、奥へと続く廊下は少し気味が悪い。

俺たちは一階を後にして二階へと上がる。二階も特には何もなかったので三階へと上がると何やら黒く薄汚い瘴気が漂っている。暗くてよく前が見えない。それでもいち早く助けるために進むしかない。この城のどこにいるかまではわからないけど一番上の階にいる可能性は高い。



「なぁ?何か聞こえないか?」



壁を伝い、慎重に歩いていた俺たちは前からくる足音に反応した。

沢山聞こえる足音に俺は身構える。それは二人も同様に。

そして、そいつらは姿を現した。数は15人。青いマクスを装着して顔は見えない。服は青いマントを羽織り、その中は黒で飾らせている。前に槍を突き出し、俺たち三人は取り囲まれた。



「くっっっ!何なんだよお前ら!すぐさま消えろ!」



俺が魔法を唱えようと手を翳した時、クラっと視界がぼやけていく。薄れゆく意識の中、俺は残りの二人を視界に入れるが二人とも倒れていた。


ーこの瘴気は毒か...。息も苦しいわけだ...。クッソーーー!!!またしても俺は...。


そして、俺は意識を失いその場に倒れた。


目がさめるとそこは真っ黒い部屋だった。真っ黒いと言っても暗くはなく明かりは等間隔ごとにロウソクの燃えてる炎があった。壁一面が黒く、扉は約20メートル先にある一つしかない。横、縦、高さが約20メートルの四角い部屋の中に俺はいた。

俺は立ち上がろうとして手を動かそうとしたが、何かが変だ。手が一向に動かない。何度も動かしても結果は同じだった。それもそのはず、壁には鎖がつけられ、俺の手には手錠がはまっていた。それは頭上に取り付けられているので手には血が通いづらくなり、少し痛い。

足にも足枷がはめられていて身動きが取れない。

こんな物すぐさま破壊しようとしたのだが、何故か破壊出来ない。


その後一時間程度、試みたが失敗に終わった。

俺が疲れ果てていると、扉の開く音がした。そして、何者かが部屋にへと入ってくる。

俺は下を見ていて、興味はない。今更顔を上げるのも面倒だ。だが、その声を聞いたからには顔を上げずにはいられなかった。



「こんにちは竜二。元気にしてた?」



闇が渦巻いていて、吸い込まれそうな目。艶々とした綺麗な黒髪、それとほのかな甘い香り。整った美しい顔は誰もが魅了される。

俺はゆっくりと顔を上げる。

こいつのことは信用してなかった。だけどここまでする奴だとは思わなかった。それが俺の甘さだ。こいつは殺人鬼だ。憎しみや復讐心はあったはずなのに俺は油断してしまったんだ。

そして、俺はその声の主を見る。

黒いローブに包まれた彼女は満面の笑みを浮かべこちらを見ていた。



「明日香...いや殺人鬼。お前裏切ったな」



そうして俺は殺人鬼に捕まったのであった。



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※お読みいただきありがとうございます。不思議な点や修正点など教えてくれたら幸いです。感想を書いて下さったらとても嬉しいです。これからもぼちぼちと更新していきますのでよろしくお願いします。

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