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第三十八話 奴隷少女との出会い


俺たちが入った貴族特区は非常に穏やかな暮らしをしていた。

夫婦や子供達などが満面の笑みで道を歩き、屋台やらを見て幸せそうだった。


ーこの光景を見ると本当に寒気が走る。


貧民街では子供が泥だらけになりながら食料を確保していた。だが、こいつらと来たらそんなことはどうでも良いと言わんばかりの顔をしている。

苛立ちが収まらない。


その一方、首輪をつけた奴隷がご主人様に鎖を持たれたれながら歩いている。

俺は拳に力を入れると言葉を吐いた。



「助けてやる!」



俺は一歩踏み出し、奴隷を助けようと駆け寄ろうとした時、アリシャが俺の腕を掴んだ。



「待って下さい!いちいち奴隷を解放するなんて無理があります。ここはひとまずティアや明日香を助けることを優先しましょう」



ー悔しいがアリシャの言う通りだ。仕方ない従うしかないな。俺はより一層拳に力を込めた。

奴隷制度はやはり廃止にすべきだ。強い奴が弱い立場の奴を従わせてなおかつ痛い目に遭わせるそんなことあってはならない。



「あぁ、そうだな」



俺たちが走り出そうとしたその刹那、先程俺が助けようとした奴隷に罵声が浴びられているのが聞こえた。



「おい!亜人で奴隷の分際で私の言うことが聞けないと言うのか!」



この声はとても聞き難く、俺の嫌いな奴の口調だった。



「す、すみませんご主人様...。働きますから働きますからどうか許してください...」



獣耳をつけ、尻尾を生やしたとても可愛い少女が這いつくばりながらご主人様を担いでいたのだが、疲労のせいか、獣耳の少女は地面に転がりご主人様も倒れてしまったのだ。そのせいでひどい罵声を浴びられていた。



「だったら今夜は覚えているんだな。たっぷり味合わせてやる」



ご主人様は少女を舐め回すような目線を送る。



「ひっっっつ。はい。かしこまりました」



一度獣耳の少女は怖がったが、諦めて従った。


俺は走り出していた。アリシャが必死に止めに入っていたがそれを無視して拳を振りかざす。



「クソ野郎が!のたれ死ね!」



俺の拳がご主人様の顔面に当たり、獣耳の少女の背中から転げ倒れた。



「なっっ、何する!私を誰だと思っているのだ!」



「興味ないね。女に手を出す非道な奴は死ねばいい」



「はっはっはっ。こいつは私の奴隷だ。何をしたってどうって事はない。非道はお前のほうだ!私の所有物を奪う気か!おい!そいつを殺せ!」



ご主人様は獣耳の少女に向けて命令する。

すると、首輪が青く光り、命令を強制する。



「わかりましたご主人様。すぐさまこいつらを殺します」



獣耳の少女は左腰に携えていた短剣を取り俺に迫り来る。

走り出した少女は俺の腹目掛けて短剣を刺そうと試みるが俺はその短剣を右手で握り、止めた。

右手には血がぽたぽたとこぼれ落ちているが、今は怒りの感情が上回り、痛みを感じない。


奴隷は山程いるのはわかっている。だけど目の前で虐げられていたら助けないわけにはいけない。もし見逃してしまったら俺の何かが狂ってしまうかもしれない。これ以上、誰も傷つかないで欲しい...。



「なんで...」



少女は困惑の表情で俺たちを見つめ、やがて地面に崩れ落ちた。すると、その様子を見てか、ご主人様は怒ったご様子でさらに命令を少女に強要する。



「な、何してるんだお前!早く立ち上がってこいつらを仕留めろ!この使えないクズが!」



「す、すみません。どうかお許しを...。痛い目だけはしないでください...」



少女は倒れていた体を起こしゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。



「それはお前の結果次第だな。あいつらを殺せばご褒美をあげよう」



「ありがとうございます...。頑張ります」



そして、少女は徐々に距離をつめてくる。



「なんでそこまで従うんだよ!アリシャお前、こいつを捉えていろ!俺はあの屑を脅して、奴隷の首輪を外させる」



「しょうがない人ですね。わかりました竜二。こちらは任せてお願いします」



「おう!」



俺は少女から屑の方へ向きを変える。周りには騒ぎを聞き、沢山の貴族のお方が俺たちを囲む。

屑は今の現状に少し冷や汗をかいているが、俺が睨みつけているのを確認すると、威勢のいい言葉が飛んできた。



「わ、私にこれ以上危害を加えてみろ。王国騎士がお前を殺しにくるぞ!それに奴隷解放なんて死罪だぞ!わかっているのかお前は!」



「知らねぇーよ。傷ついている少女一人救えないなんて俺は死んだ方がマシだ。そんな奴俺は嫌いだ。だから助けるそれだけだ」



「綺麗事並べるだけでは救えないんだよ」



そう言うと屑はアリシャの方へ目を向ける。アリシャは暴れている少女を捕まえた所だった。



「クソが!使えないならさっさと死ね!」



その言葉は少女に向けられたもので、少女の奴隷の首輪が青い光り、閉まりつつある。



「くっっっぐるしい...」



少女は涙目を浮かべ、息苦しそうにしている。



「アリシャ!早く首輪を壊せ!」



「無理です!首輪はその主人でしか解除できません」



「貴様!!!殺す!」



俺はすぐさま屑に駆け寄り、腹に思い切り蹴りを入れる。



「ぐはっっ...私は偉いのだぞ」



聞く耳持たず、転がった屑を俺はさらに顔面に蹴りを二発入れると気絶しない程度には意識があるようで助かった。今から拷問して早く解除してやるのでもし意識が失ったりしてしまったら困るものだ。



「やめろぉぉぉぉぉ!!!やめてくれ!これ以上は死んでしまう!」



俺の殺気が屑を包みこみ、恐怖をより一層高める。



「なら早く奴隷を解放しろ!さもなければ指を切り落とすぞ!」



「わ、分かったからやります」



屑は諦めたのか、俺に敬語を使い、従う。



「早くしろ!」



「は、はい!主従の関係よ。今ここで断ち切る」



屑がそう告げると、必死にもがいていた少女は首輪が外れ、息を整える。



「これで気が済んだか」



「あぁ。それじゃアリシャ行くぞ!王国騎士とやらが来るかもしれないしここからおさらばだ」



「ですね。行きましょう」



俺とアリシャはここから立ち去ろうとした時、奴隷だった少女は俺たちに声をかける。



「あの、さっきはすみません。そして、ありがとうございます。このご恩は一生忘れません」



にこやかな表情を浮かべ、俺たちに礼を言った。



「お前も早く逃げろ。このままじゃ、また捕まるぞ」



「はい!」



元気な返事をし、もうしがらみに囚われない少女はとても嬉しそうに笑った。



「そこで何をやっておるのだー!」



遠くから複数の鎧の音と共に声が響き渡る。



「逃げるぞ!」



俺たちは群衆をくぐり抜け、ティアが待つ場所へ目指す。



道を通る人が少なくなった時、俺は一つの疑問を口にする。



「それで何で君は付いて来るんだ?」



「私は行く場所がないので、責任とって下さいね。それに私はあなたの力になりたい。これでもある程度は戦力になれると思いますよ」



獣耳の少女は可愛いらしい顔をこちらに向け、問いてくる。確かに、漫画やアニメやラノベなどでは少女のような亜人は戦力に秀でていると言われている。なのでこの世界でも同じなのかもしれない。

しかも付いて来るときたもんだ、危険な目には会わせたくないが、置いて来ることも出来そうにない。



「しょうがない。でも、君の安全は保障出来ない。それでも来たいのなら止めはしない。君には来る理由がないしな」



「私はあなたの力になりたいって言ってます!それだけでは付いていく理由にはなりませんか?」



「はー。わかったよ。勝手にしろ。俺は佐倉竜二。君は?」



「私はミーニャ・ラタトスクです。よろしくお願いします竜二さま」



「呼び捨てで構わない。よろしくなミーニャ」



「はい!頑張りましょう竜二!」



「私も居ますよ竜二!私はアリシャ。よろしくですミーニャ」



「よろしくお願いしますアリシャ!」



そして、俺たちは一人仲間が増えたのだった。



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※お読みいただきありがとうございます。不思議な点や率直な感想とても欲しいです。書いてもらうと嬉しいです。これからもぼちぼちと更新していきますのでよろしくお願いします。

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