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第二十九話 螺旋迷宮ギルディア


俺は今壮絶な戦いを強いられている。

何故かというと、俺の口元には紫色の液体がスプーンで運び込まれてようとしている。

いかにも危険なんですけど、もしかしたらこれを食べたら死人が出てしまうよ?と俺は思念をリーナに送っていたがそんなことは知らず、満面の笑みを浮かべて、



「あーん」



と徐々にだが、俺の塞がった口に無理矢理、入れこもうとしている。



「ま、待て、言いたいことはいくつかあるが、これは本当に食べてもいいんだな?」



「味は保証できないけど、体には良く効くから食べないといけません」



「わかった、食べる、、、けど、なんでリーナが俺に食べさせてくれるの?俺は自分で食べれるぞ」



「ダメ!竜二くん。竜二くんは病人だよ!こんな美人なお姉さんが食べさせてあげるんだから文句言わないの!」



「それ、自分で言うのかよ。まぁ、本当だから何にも言い返せねーが。わかった。俺もこんな美人なお姉さんに「あーん」してもらえるなんて光栄だ」



「びっ美人って認められた...」



小さな声でボソボソと言うリーナの顔は赤く、耳まで侵食されている。



「何か言ったか?」



「な、なんでもない。では改めて、あーん」



俺は大きな口を開け、紫色の液体を口に入れようとした時、どでかい足音が聞こえ、勢いよくドアが開かれる。



「おーい。リーナはいるか?」



それはちょうどリーナからのあーん状態のタイミングの時で、銀色に光る装備を身につけた少年は気を使ってか、まるで何も見なかったかのようにドアを閉めた。



「ってお邪魔したみたいだな」



「ま、ま、待ってよ!か、勘違いしないでよねギル!」



それまで、あーん状態だったリーナが俺の口にスプーンごと押し込み、すぐさま立ち上がった。

リーナ、ひ、酷すぎる...。俺は紫色の液体を無理矢理飲まされ、口の奥に刺さったスプーンを取り、その弾みで、むせて咳き込んだ。

薬をそのまま液体にして飲んでいるかのようで、不味すぎて吐きそうなくらいある。


それでリーナはというと、ドアを開いてギルと呼ばれる少年に誤解を訂正していた。



「いやいいんだぜ。お前も女だ。好きな人も出来て当然だよな。俺は嬉しいぜ、リーナにも、こういう時期がやってきたことが」



鼻を鳴らすこの少年はトサカみたいな赤色の髪をしていて、目も赤に染まっている。顔はどこか野生を思わせるように鋭いが、整っており、イケメンだ。

俺はベットに横たわりながらその二人の会話を聞くことにした。



「だーかーらーギル!本当の本当だから!違うんだよ!それに勘違いをしたまま憶測するのは良くないぞ!」



リーナはギルに向かって必死に自分の意見を訴えかける。



「本当なのか?」



「だから、そうだって言ってるでしょ!」



「なーんだ。せっかくリーナにも乙女な時期がやってきたのだと思ったのになー。それでお前はあいつのことどう思ってんの?」



「何にも思ってないよ!なんで急にそんなこと聞くのよ!」



ちょっ、ちょっと...何も思っていないって、なんか、心細くなるだろうが。



「ふーん。そうなのか。いや、別に、ただの気まぐれだ」



「それでギルは私に何の用?」



「あぁ、そうだ、今ヴァイスとイナ、そしてアリーシアが螺旋迷宮の洞窟。ギルディアに行ったらしいぞ、丁寧に置き手紙を置いてな」



「な、なんだとーー!?まだ、ギルディアはあいつらでは危険だ、早く...早く私たちも行かなければ」



リーナは驚きの形相を隠せないでいる。



「おう、そうだな。一刻も早く、あいつらを止めに行かなければ。やっぱり昨日、口論になっちゃったのが原因だな」



リーナとは別に、ギルは特に焦った様子もなく呑気にしている。



「そもそもギルが、お前たちではBランクモンスターも倒せないとか言うのが悪いんだよ」



「それもそうだな。少し言いすぎたかもしれないな、あいつらに会ったら謝っておくか」



「それが良い。では、行くぞ!ノーラもそこに隠れていないで、準備しろ!」



リーナに指摘され、ベットがビクンと揺れる。多分指摘されて驚いたのだろう。

すると、ノーラはベットの下から姿を現し、立ち上がった。



「ば、バレていたのだな。仕方ない、私も行くとするか」



「うわ、ノーラ。そんなとこに隠れていたのか、気持ちわりー」



ギルからの罵倒の言葉を受け取り、ノーラはすぐさま反論する。



「き、気持ち悪い?私に向かっていい口答えだな。ギルいつかバチが当たるぞ。お前のトサカ頭の方がよっぽど気持ち悪い」



「俺のこだわりのヘアースタイルを侮辱するとはノーラ、覚悟は出来ているんだな?」



「あぁ、ギルこそ、覚悟は出来ているのか?」



ばちばちと炎が燃え上がろうとしてしまうくらいの睨み合いが続くが、その間にリーナが立つ。



「なんだよ、リーナそこどけ!」



「リーナ姉、すまんが、どいてくれ」



「君たちーー。今がどういう状況かわかっているのかな?仲間たちが死ぬかもしれないんだよ!こんな下らないことで争ってる暇わない!早く準備して来い!」



「そ、そうだな。仕方ないが今回は許そう」



リーナの大きな声が響き、二人とも縮こまってしまった。



「ふっ、私は一生根にもってやるがな」



「なんだとー?」



「二人とも!早くして!」



リーナが再度、声を上げるや否や二人ともそそくさと準備しに自分の部屋に戻るのだった。


二人が去った部屋では静寂が訪れていた。

リーナは心配そうに落ち着かない様子だ。

すると、リーナはこちらを向き、真剣な顔で言う。



「竜二くん。ごめんね、私急用が出来たから行かないといけない。しばらくはこの部屋にいて欲しい。もし困ったことがあれば、二階の書庫に行けば人がいるから、そこで何か聞いて」



「わかった。それより仲間は大丈夫なのか?」



「大丈夫ではない。あいつらは十分に強いが、ギルディアはそれ以上に攻略が難しいダンジョンだ。もし敵にでも遭遇したら...」



「そうか...俺に出来ることは何かないか?」



「竜二くんは客兼病人だ。出来ることも何もないし。何もしなくていい」



「そう...だな。俺はお留守番でもしておこうかな」



「お願いだ」



そう短い言葉を口にして、ドアが閉まった。

俺は誰も居なくなった一室で、ドア越しから微かに聞こえるリーナやノーラ、ギルの声に耳を貸すのだった。

ふと窓越しから空を眺めると、いつもは快晴なのだが、今日に限って、喧騒に包まれているかのような暗い曇りだった。



…………………………………………………………………

※お読みいただきありがとうございます。何か違和感や不思議な点、疑問点など、教えていただければ幸いです。また感想を書いていただけるととても嬉しいです。

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