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第二十八話 青髪の少女


ぼんやりとした意識の中、俺の耳に優しい声音が伝う。どこか懐かしいその声は俺に向かって呼びかけているようだ。



「大丈夫ー?」



意識を取り戻したのか、俺は重い瞼を開けた。

すると、俺の真上にいる少女が手を振っていた。



「おっ、気がついたみたいね。もう死んじゃったのかと焦ったよ」



俺が目を覚ましたのを確認すると手を振るのをやめ、その少女は落ち着いたようにホッとしていた。



「ここは?」



俺は目をこすりながら横に座っている少女に尋ねた。



「えーとね、ここは私のギルドの住処だよ。私のギルドは皆ここに住んでいるんだけど、後で紹介するよ」



彼女は金髪ロングで黄色い目をしていて、ほんのりと甘い香りがする。顔はどこか大人びていて、可愛いというより美しいと言った方が似合う。華奢な体はモデルのように美しく、カッコ良さが漂う。



「そうか、それで君は?」



「私はリーナス・アーカイル。リーナと皆はそう呼ぶわ。君の名前は?」



「俺は、そうだな...竜二だ」



まだ頭が痛むが、記憶にあった俺の名前を絞り出す。



「竜二くんね。よろしく」



「俺はもう行かないと...い、いっったー」



俺はベットに横たわる体を起き上がらそうと試みるが、思うように起き上がれず、体全体に痛みが走る。



「えっっ!ダメだってまだ安静にしていないと、竜二くんは大怪我だったんだよ!瀕死寸前でもし私が助けなかったら...死んでいたよ」



「それは助かったな...ありがとう。リーナが俺の傷を?」



「うん。まだ傷跡はあるかもだけど、大分良くなったと思う。でも後三日は安静にしていないといけないけどね」



「みっ、三日だってー?」



「仕方ないでしょ。生死を彷徨うような大怪我を負ったんだから、後三日で回復するのだから文句は言わない!」



「そうだな...すまない。リーナはずっと俺の看病をしてくれたのか?」



「当たり前でしょ!私が拾ってきたんだもん、それを放ったらかしたらいけないよ!まぁ、ギルに文句言われたくないのもあるし」



「子犬かよ俺は...でも本当にありがとう。リーナが居なかったら俺はもう...」



「礼はいらないよ。私がしたくてやったんだから」



「リーナは優しいな」



と俺が言ったと同時に「ぐーーー」と大きな腹の音が響き渡った。



「はははっ。竜二は二日も何も食べてないんだから仕方ないよね。ちょっと待ってて、今何か作るから」



「リーナ、今聞き捨てならない言葉があったんだが」



「どうしたの?」



「俺はもしかして二日も眠っていたのか?」



「そうだよ、何か用事とかあったの?」



「い、いや、別になんでもない」



二日も眠っていたということはエリシアやアリシャが俺のことを探し回っているのではないだろうか?凄く心配だ。それに明日香やティアだって放っておけるわけがない。連れ去られて今頃ご主人様に何をされているかもしれないし、早く回復して助けに行かないといけない。



「そう、なら私は料理作ってくるから、くれぐれも安静にしていてね。絶対だよ!それと味には期待しないように」



「あぁ、何から何まですまない。期待しとくよ」



「だから期待しないでってー」



そう言うとリーナはドアを開け行ってしまった。



この部屋は六畳間程の広さで、机や椅子、ベットやクローゼットなどの家具が充実しており、不自由なく使えそうだ。

そうしてベットに一人、上半身だけ起き上がらせた状態で部屋を見渡し、窓から見える空を眺めようとした時、ベットの下からもぞもぞと音を立てながら、青い髪をした頭が現れた。



「ねぇ、これ食う?」



突然の少女への物言いに困惑を隠せないが、渋々青髪の少女からパンを受け取った。



「あぁ、ありがたく頂くよ」



そして、青髪の少女から貰ったパンを口を運ぼうとした時、青髪の少女は目を輝かせ、物欲し顔をした。



「これ欲しいのか?」



「い、いや。そんなことない...早く食べろ、私が欲しくなる前に」



「今でも十分に欲しそうな顔してるけどね。なら半分あげるよ」



「しょうがないお前がいらないと言うのなら。仕方なく私が食べてやろう」



本当に何がしたかったのかわからないが、俺がパンの半分を渡すと満面の笑みでパンを頬張る。



「それで君は何しにきたんだ?」



「それはな、聞いたら驚くぞ!」



「いったいなんだよ」



「えーとね。私はお前に興味がある」



「全く驚かなかったんだが」



「ふふーん驚いただろ!ってえ?驚かなかったのか?」



俺が驚かないのがそんなに想定外だったのか、青髪の少女の方が驚きをあらわにしていた。



「別になんとも思わないぞ。それより俺も君に興味がある」



「な、なんだと!お前も私に興味があるのか!」



「色々と聞きたいしな。それにお前はどこから現れたのかとか」



「えーとな。私はお前を驚かそうと思って昨日からずっとベッドの下に隠れていたのだ」



「それは驚いた。君は暇なのか?」



「暇とは失礼な。私は端くれではあるが真っ当に冒険者をやっておる。先週だってBランクモンスターのグラードマンを倒したのだ!凄いだろ!」



こんなに目を輝かせている少女を見るとSランクモンスターを倒したんだとは到底言えない。



「よくわからないが、君も冒険者だったのか、実は俺も冒険者なんだよ」



「察しはついておったがな。そこにある二本の剣は相当良質なものだが、お前は弱そうな見た目をしておるな」



俺の膝下、左隣の机に金色に光る剣と鋼の剣が置かれてある。



「その通りかもしれないな。実際、自分一人では何一つ守れないんだ。だから理沙もリアも...」



「お前は落ち込んでるのか?」



「いいや、なんでもない。それより名前を教えてくれ!俺は竜二だ」



「変わった名前をしておるな。私はノーラ・ラーカス。ここのサザンラースのメンバー。よろしく竜二」



「よろしくノーラ。えーと、サザンラースって何だ?」



「私が所属しているギルドだよ。皆優しくて、凄く強いんだよ!良かったら竜二も...」



「俺はパーティーを組んでいる人たちがいるから無理だ。ごめん」



「そうか、それは残念。もし解散したら私のギルドに来るがよい」



「あぁ。絶対にないと思うが、覚えておくよ」



俺がそう言うとドアからトントンと聞こえる音がした。



「やばい!リーナ姉が来る、隠れないと!」



ノーラはドアの音を聞くとすぐさまベットの下に身を隠した。



「入るわねー。私の特製のリーナス流、体が安らかになる料理ができたわよー」



俺は鍋の中を見たら驚愕した。なぜならそれは紫色のスープに加え、目玉やハチ、それにカエルも入っていたのだ。



「えっっっ。えーーーーーー」



俺の声がギルドホーム中に響き、眠っていたギルドメンバーたちも叩き起こされたのだった。



…………………………………………………………………

※お読みいただきありがとうございます。今回は新キャラが二人登場しましたが、次回はギルドのメンバーが続々と登場しますので期待してくれれば幸いです。

感想欲しいので、よければ書いてくださると嬉しいです。

これからもお付き合いお願いします。

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