第十話 ここの冒険者たちはろくにクエストを受けてないらしい
「何者ってもよくわかない、けどあの怪物を倒したからかもしれない」
「怪物ってどんなですか?」
「マンモスみたいにでかく、鼻にツノがはいていて曲がっていたやつかな」
俺はあの時の情景を頭に思い浮かべながら答える。
だが、思い返すだけでも胸が痛い。
「え、それってガースドマンモスではないでしょうか?Sランク指定危険モンスター、まだ誰も倒したことがない、倒せないモンスターなんですよ」
「多分そいつかな」
「やっぱり!だから、こんなにもステータスが高いんですね!納得です!でもどうやって倒したんですか?こんな怪物を」
「俺もわからないんだ、勝手に力が湧いてきて、気付いた時には殺していた」
「そうですか...でも聞いたことはあります。人は逆境に晒されるほど人外の力を出せると」
「確かにあの時は必死だったな」
「竜二、貴方は勇者だったんだな。正直私も驚いている」
俺の横にいたエリシアが会話に入ってきた。
「いや...おれ、」
「竜二さん私もビックリですよ、もしかしたら竜二さんならこの国、いや世界を救ってくれるに違いないです」
「お前って勇者なんだってー」「勇者様が現れましたの⁈」「勇者様⁈勇者様ー私と結婚してくださいー」「みんなーこっちきて祝おうじゃないか」
酒場の方から沢山の人たちが集まってくる。
なんなんだこいつら。一人変なことを言っていた気がするが。
「勇者様が現れたということで、みんな分かっているな」
「え、そんな急に...」
数人に取り押さえられ胴上げの状態にさせられてしまった。
「では、みんな盛大にー」
「えっ」
「バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!」
「ちょっっ、やめて下さーーい」
なおも胴上げが止まらない
「バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ!」
「そんな高くしたら落ちますよ!」
酔っているか知らないが、胴上げの高さが尋常じゃない。天井までは床から10メートルぐらいあるはずなのに、今はその天井が目の前まで来ている。
案の定、俺が言ったとおり、高くしすぎて、誰も受け止めれずに、真下に落ちた。
「何してくれてんだーー!」
「すまん、うちらも嬉しいすぎてつい調子乗っちまった見てぇーだ」
貫禄のある、いかつい形相のおっさんが謝罪をして来た。
「まぁ、大丈夫ですよ、これからは気をつけてくださいね」
「あぁ、悪かった」
酒場にいた人らが、酒場に戻っていった。
「竜二、散々だったわね」
参加せず、傍で見守っていたエリシアに声をかけられた。
「俺は一生、この人らとは馬が合わない気がする」
「私からも謝罪します。この国では最低限のことしか冒険者は働かず、それ以外はいつもああやって騒いでいるんですよ、だから勇者様が現れたと聞いてみんな嬉しがってたんです。仕事を押し付けられるって。だから気をつけてくださいね、この国の冒険者さんには」
「いえ、そんな、お姉さんまで謝罪してもらわなくても、ですが俺はクエストたくさん受けるつもりです!お金も稼ぎたいし、自分の力も試したい」
「ありがとうございます!クエストが溜まりに溜まって大変で...とても助かります」
「竜二、私は貴方を選んで正解だったみたいね、私の魔眼のおかげだわ」
「こっちのセリフだって、俺もエリシアで良かったよ。それと魔眼って?」
「そうなんだ、なら良かった...私の魔眼はね、人のマナを見れるってそれだけなんだ、だけどマナの動きで相手が嘘を言っているのかぐらいはわかるわ」
エリシアは少し頬を赤らめる。
「エリシアってすげーな!強くて魔眼まで持っているなんて」
「そんなことないわ、強さで言ったら竜二にかなうものなんて誰もいないわ」
「強いのかはまだ試さないとわからないが早く試したいな」
ティシフォネの件もあるから自分の力を過信してはならない。
実際に確かめるまでは自分が強いのか判断できない。しかも自分が勇者だなんて。
「では、竜二さん、これで冒険者登録は完了しました。この紙は絶対に無くさないでくださいね、再登録はとてもめんどくさいので」
「おう、わかったよ、ありがとねヴィーナスさん」
「はい、竜二さんも冒険者として頑張ってください、それとエリシアも」
「おう」「はい」
「これからどこ行くんだ?エリシア?」
「さっき言ったじゃない、食事に行くって私が奢ってやる。そこで色々情報交換しようじゃない」
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