表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王のいる日常  作者: 境一
3/4

昼下がりの魔王様

私が体験した実話を元にしています。

今日は病欠の人が出たので、急遽(きゅうきょ)朝からのバイトであった。

初めて朝のシフトに入ったのだが、夜勤明けの者たちが大変グロッキーであった。これから登校するというのだから、見上げたものである。

我輩の普段のシフトより大分早い為、相方も違えば勝手も異なり、四苦八苦したものの、無事に仕事を終えた。

そんな訳で、昼からは晴れてフリーの身となったので、ビールとツマミを購入し、帰宅しておる途中に事件はおこった。

「おじちゃん。助けて‼︎」

(わっぱ)が我輩の服を引っ張り、せがんで来るので、

「そこな(わっぱ)よ。どうした?」

訊いてみるも、

「救急車!おじちゃん、救急車かな?」

中々要領を得ん答えしか返らぬので、同行することにした。

(わっぱ)に手を引かれて付いて行くと、そこは公園であり、ブランコに1人の(わっぱ)が座り、その周りを幾人もの(わっぱ)達が囲んでおった。

皆、心配そうに顔を曇らせ、中には泣き出しそうな者もおった。

怪訝(けげん)に思って見てみると、ブランコに座っておる者の下には赤い(しずく)が点々と(こぼ)れており、ズボンにも赤黒い染みが出来ておる。

こっちに来てからは(ほとん)ど目にする機会が減ったが、紛れもなく血であった。

我輩はハンカチを取り出し、流血しておる(わっぱ)の額の傷に当て、氷替わりにビールで冷やしてやる事にした。

「何故、こやつは怪我をしたのだ?」

「ブランコで遊んでたら、この子がペットボトルを投げて、それが当たって…」

我輩をここまで連れて来た(わっぱ)より2周り程大きな(わっぱ)が答えてくれる。

「ふむ。悪ふざけの結果か…」

子供というものは、何処の世界でも似たような悪さを働くものだと苦笑する。

「して、誰かこの子の家を知らぬか?」

先ほど我輩に説明をしてくれた(わっぱ)が挙手をし、

「こいつ、俺の弟」

ならば、話は早いと思い、(わっぱ)に母親を連れて来るように言う。少しばかり傷を縫わねばならぬと感じたので、一緒に保険証も持ってくる様に言伝(ことづて)る。

暫くその様子を(うかが)っておったが、血が止まり始めたのと、大人が来た安堵からか、(わっぱ)共は一部を除いて、各々遊び始めた。

傷を負った者の近くではあったが、我輩も手持ち無沙汰になり、傷を押さえながら、一服点ける。

そうしておる間に、自転車に乗った男が通りかかり、それを見た(わっぱ)の何人かが

「先生‼︎」

と駆け寄って行く。

年上の者も混じっており…いや、駆け寄ったのは年上の者達ばかりで、上手く説明出来たのか、先生とやらがこちらにやって来る。

「ありがとうございます!」

礼を述べ、次いで携帯とやらで何処ぞに連絡を始める。

そのタイミングで先程、自宅へ駆けて行った(わっぱ)と母親らしき人物が戻ってくる。

「ありがとうございます。おかげで助かりました。あら、先生」

礼を述べてから、気付いて先生とやらに向かう母親。

「血は止まっておるので、心配は無いと思うが、少しばかり傷口が大きいので、2針位は縫わねばならぬかもしれん」

伝える事を伝え、我輩はその場を去る。このまま留まっても他に出来る事が無さそうであるし。

先生は、担任とやらに連絡をつけ、その人物?人物でよいのだろう?が来るまで待っているとの事であった。

さて、我輩は帰ってキンキンに冷えたビールで喉を潤す事にしよう。

あ…そういえば、冷やすのに使っておったので、ヌルくなってしまったか…

この後、子供達に慕われた魔王様はよく絡まれる様になりました。コンビニも駄菓子やジュースがよく売れるようになったとか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ