1話 ゾンビに噛まれた記憶
「は?」
俺は今まででの人生で最も心の底からそう思った。
「だから噛まれてゾンビになった君は世界を救う予定だった救世主を食べちゃたんだよ。責任とってよ」
目の前のおじさんはそれが当たり前かのように話を進めた。
「本当ならゾンビに効く抗体が入ったカプセルをゾンビの騒動を起こした親玉のところから奪ってきた救世主によって世界は救われるはずだったんだよ。」
「それを君さ食べちゃうかね?普通」
おじさんのため息まじりの話を聞きながら俺は死ぬ直前の記憶が少しずつだが思いだしていた。
確かに俺は噛まれたんだ。
大学3年生だった俺は講義を受けている途中いきなり後ろの席のやつに首を噛みつかれた。すぐに振り払ったがいきなりで俺も周りの人間もその後すぐに動けなかった。騒ぎが大きくなりパニックになったのは講義をしていた講師がそのゾンビ化した学生を取り押さえようと近づいて顔を噛みちぎられた後だった。
その場は怒号と叫び声に包まれて我先にと50人余りの人間が2つしかない出口に殺到した。
俺は噛まれた痛みとよくわからない頭痛と眠気でその場に倒れこんだ。友達が何か叫んでいたが俺はその時を最後に何か記憶を思い出すことは出来なかった。