表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Doggy House Hound  作者: ポチ吉
ガン・ドッグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/159

閣下といっしょ

 閣下の居らせられる司令部が天幕だが、僕等に与えられた待機場所には土を混ぜて造られた簡易トーチカが立っていた。

 撤退前提の今回の作戦に置いて態々こんなものを造った理由は簡単だ。

 子供達と、そのモノズ達の訓練の為だ。

 今回の仕事は小隊規模での依頼だった。

 小隊は四つの分隊からなる。そして一般的に分隊は一人、若しくは二人の人間と、その契約モノズ達からなる。結果、今回の仕事にはキャンプ地から二人ほどの子供が同行していた。


「おかえりなさい、トウジ隊長。報告、どうでしたか?」


 帰ってきた僕を出迎えたのはそんな子供達のうちの一人だった。見張りなのだろう。AKを持ち、モノズを引き連れ歩いていた。

 名前はキリエ。リカンの人間村で保護した子供の一人だ。実戦経験持ちであり、眼が良い彼は僕の仔犬候補としてこの戦場に来ている。

 黒い髪と日に焼けた肌、にっ、と笑うと見える歯の白さが印象的だ。


「まぁ、それなり程度には最悪だ。……シンゾーは?」

「さっき戻ってきてました。今、中で食事を摂ってます」

「そうか」


 言うだけ言ってトーチカの中に入る。テーブルで食事を摂っていたシンゾーが『おぅ!』と片手を挙げて挨拶をする。声は出ない。口の中に食べ物を詰め込んでいるからだ。

 それに僕も片手を挙げて返事をする。食べ物が積まれたテーブルに付き、トマトを手に取る。ドロリとした青い蛍光色と言う食欲からはほど遠い所にあるカラーリングの栄養液による水栽培を用いることにより、この戦場で種から育てられたトマトは、栄養源の色とは関係なく、真っ赤に色づいていた。

 齧る。ぐしゅ、と水っぽい感触。口の端から零れそうになった汁を袖で拭う。あぁ、ムカデ着たままだった。汚れてしまった。

 完全に脱ぐのは面倒なので、上半身だけ外す。タンクトップのまま、コンビーフの缶詰を開けて行く。台形に固められた肉の塊の中に見える白い油がてかてかと室内灯の明かりを受けて光っていた。


「どうだったよ?」


 こちらに水の入ったグラスを差し出しながら、シンゾー。


「駄目だな。彼等には日本語が通じない。翻訳コンニャクを出してくれ、シンえもん」

「……テメェが何をもじって俺をそう呼んだかは分かるけどよ、ソレはソレで名前っぽいから止めろや」


 それは失礼。

 言いながら肉の塊に被りつき、トマトを齧る。その果汁で喉を潤した。


「先に済ませるぜ。こっちは問題無しだ。任務は引き続きの物資輸送、経路の確保も出来てる」

「こっちはアホのせいで最悪だ。敵を発見したら、もう一度偵察をすることに成った」

「将校斥候って奴か?」

「今回の場合、将校が無能であらせられるから意味は無いのだがな。……撤退の用意を頼む」

「おぅ」

「それと、出来れば次の偵察に付いて来て欲しいのだが……」

「そっちは無理だ」


 無言で食べかけのコンビーフを差し出してみる。


「……いや、要らねぇよ」

「何故でしょうか?」


 経路が確保で来てるなら良いじゃないか。こっちは将校斥候と称して閣下と作戦参謀殿がいらっしゃるのだぞ? 僕一人で面倒を見られるわけがないだろう。


「見習い共を付けてやる」

「超要らないです」

「経験積ませる為だ」


 えー……僕は露骨に面倒臭そうな顔をした。

 ユーリ然り、師匠然り、そして僕然り、自分で言うのも何だが、天才型だ。残念ながら教えると言うことには向いていない。







 分厚い装甲から機械の作動音が響く。

 ファンが回る音だ。クーラーが作動しているのだろう。

 アロウン社製 強化外骨格 シャーロッテ。

 上流階級向けに造られたその強化外骨格は車で言うならベンツの様なものだ。固く、頑強で、快適。この蒸し暑い気候の中でも快適なのだろう。


「さぁ、行こうか!」


 ふぁさぁ、と髪をかきあげる作戦参謀殿。

 ぶぉぉぉぉぉぉ、とファンの音。歩く一歩は重い。


「……」


 ここがベンツと違う部分だろう。

 ベンツは車としても優秀だが、シャーロッテはムカデとしては欠陥を抱えている。

 司令部でふんぞり返っている分には問題ないが、こうして偵察に向かうような場面だと足手纏いでしかない。


「……」


 三秒、考える。

 これを連れて行くのは流石に無理だ。とても助けて欲しい。凄く助けて欲しい。

 軍曹殿に視線を向けると、頷いてくれた。流石にこれを連れて行かせる気はないらしい。


「よろしく頼むぞ、猟犬!」

「微力ながら、最善を尽くします」


 それでも閣下は付いてくるのは阻止できなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ