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Doggy House Hound  作者: ポチ吉
ラチェット

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55/159

悪魔めー

 所詮は僕だ。

 取り零しは、当然ある。

 弱者に優しく、強者にへつらわない。

 あの判別方法だと、そんな二番目位に欲しい人材を取り零す。一番欲しい『子供達の為に恥も外聞も捨てられる人材』は確保出来たので良い様な気もするが、そのままにしておくのは勿体ないし、その人が色々と不憫だ。

 まぁ、取り零してしまったものは仕方がない。もう一回拾いなおせば良い。

 そんな訳で僕は『腐っていても頭が良い』連中をトーチカの自室に集めた。五人程居た。

 彼らは頭が良い――と、言うか空気が読める。他人がどういう人間かの把握は上手いだろう。……そう思って呼んだのだが、空気が読めるが故に殆どが、集められた面子の顔ぶれで共通点を見出し、硬い表情を浮かべていた。

 僕に始末される未来を想像したのかもしれない。


「負傷兵達の真ん中に居たギブスの男と、興味なさげに壁に寄りかかっていた若い男、エプロンをした恰幅の良い女性、それと杖を突いていた婦人、この四人がお探しの人材でございます、はい」


 そんな中、頭一つ抜けた対応をして見せた女が居た。

 開いているのか、開いていないのかが分かりにくい細い目。腰まで黒髪を伸ばし、コスプレの様に、深いスリットの入ったチャイナドレスを纏った女だ。


「――そうですか」


 少し、面食らった。彼女が言った者達の内、三人はヴァルチャーからも聞いている。

 ここまで先読みできるものなのだろうか? 凄いな。

 似合い過ぎて、作り物感がする笑顔の中華系美人さんは、読めない表情でニコニコしている。

 三秒、考える。


「では、その四人をこちらに呼びます。ご協力、有り難うございました」


 もう用は無いので、帰っていいですよ、と僕。ぞろぞろと立ち去る皆さん。


「おや、あっさり信じるのでございますか?」


 一人、残った。チャイナさんだ。


「……」


 僕は彼女を一瞬見て、それ以外のリアクションを返さなかった。僕はあまり彼女が好きではない。子供の様な対応で申し訳ないが、無視させてもらうことにした。


「ワタクシはマーチェと申す者でございます、ラチェット様」


 ――いえ、


「トウジ様?」


 何で僕の名前を知っているのだろう? 不思議に思いながら、僕は彼女に視線を向け直す。護衛に付いていた戌号と寅号が庇う様に、少しだけ前に出た。


「何処かで、お会いしましたか?」

「いえいえ。ハジメマシテ、で大丈夫でございます」


 すっ、と優雅に一礼。


「そうですか。では、はじめまして」


 僕も、同じ様に頭を下げた。多分、優雅ではない。


「……」

「……?」


 軽く小首を傾げる。目の前の女性は何故かニコニコして立っている。


「……………あの?」

「はい、何でございましょうか?」

「出てってもらって、良いでしょうか?」


 一人の時間が欲しいので、と僕。寝床で転がっていたルドが話の終わりを察知してボール咥えているので相手をしなければならないのだ。


「……なるほど、噂通り、でございますね」


 何故か一瞬の硬直の後に、彼女はそんなことを言った。


「名乗った覚えが無いのに、相手が名前を知っていたら、警戒すべきかと」

「成程」


 そう言われたら、そうかもしれない。


「ですが、僕は余り貴方に興味が無いので、正直、どうでも良いです」


 だからさっさと出ていけ。

 僕は軽く腕を振って彼女を追いだす。


「これはこれは、下手に勿体ぶって失敗しましたね。では、次の機会があればワタクシの有用性を示し、貴方の興味を引くとしましょう」

「そうですか」


 頑張ってください。

 もう既に名前も忘れてしまいましたが。








 僕の小隊に組み込んだ皆様にはトーチカに住んで貰うことにした。

 テントでも良いが、正直、数が足りないし、あれは人間村の持ち物だ。

 準備は面倒だが、モノズ達にトーチカを造らせるしかなかった。

 無論、材料は土なので、戦闘には耐えられない。まぁ、ここが戦火に晒される様な事があれば退避しているので問題ないだろう。

 だが、問題が起こった。

 土は幾らでもあるが、混ぜ込む建材が無くなったのだ。

 人間の生活圏であれば容易く補充が出来るものの、現在位置はそんな人間とは敵対関係にあるトゥースの集落だ。

 簡単に補充は出来ない。

 それを知ったリカンが、蛆虫を持って嬉しそうに訪ねて来たが、僕は丁重にお帰りを願った。あの家に住む気は無いし、住まわせる気もない。

 そんな訳で一番の豪邸に住む僕の家に何人かがやって来た。


「よろしくお願いします、ラチェット様」


 女中頭さんがそんなことを言って頭を下げた。


「……こちらこそ」


 全員、若い女性だった。

 要らない気を回されている気がして仕方がない。……が、別の意図も有りそうだ。

 目が死んでいる女性たちが居た。中には腹を膨らませた者もいる。まぁ……そう言うことだろう。

 若い女性を僕の周りに集めたのは、要らない気を回した、と言うのも有るだろうが、僕を番犬代わりに使っていると言うのもあるのだろう。

 序列第七位の僕の上には六人しかいない。そんな僕が囲っている女だと言うのならば、それ以外の連中は手を出しにくいだろう。

 僕は軽く頬を掻き、気が付いたその二つのことに、気が付かなかったふりをすることにした。


「トイレと風呂はありません。そこの突き当りが僕の部屋ですので、それ以外の部屋をご自由に――ルド、待て。今のは君に言ったのではない」


 タオルを引き摺って移動を開始するな。テリトリーを持とうとするな。

 首根っこを捕まえ、抱き上げる。鼻をぺろり、と舐めて円らな瞳でこちらを見てくるルド。可愛さをアピールしても駄目だ。


「では、そう言うことで」


 このままここに居るとルドが悪さをする未来しか見えないので、さっさと部屋に引っ込むことにす――


「なぁ、おにぃさん、今日の夜、ウチで良いかなぁ?」


 何時ぞやのサイドテールのお嬢さんがニコニコしていた。

 僕の気遣いは一瞬で無駄になった。 垂れ気味の目と、ポワポワした雰囲気がマッチしているこの美少女さんは天然さんなのだろう。


「ほら、ウチ、この前助けてもろたやろ? そのお礼やー」


 にっこりしながら、両手を胸の前で合わせる。意識しているのかどうかは知らないが、胸が強調された。


「あぁ、ウチはアカネいいますー、初めてだから優しくしてなー」

「……」


 小悪魔めー。

 僕はルドを抱き直し、振り返る。肩に乗せたルドが頭目掛けて登頂しだした。とても迷惑だ。


「えーと、女中頭さん」


 助けて下さい。

 そんな気持ちを込めてリーダーに声を掛けると――彼女達に電流が奔った。


 ――ウチの負けやー、おっぱいが原因や! 男は全員巨乳好きなんやー! ――大丈夫だよ、アカネ! アカネはある方だよ! ね! ――おいこら何故私を見たのかを説明しろ! ――そうだよ! アカネ、ちゃんとおっぱいあるから触らせれば一発だよ! 触らせる胸が無い子もいるんだからっ! ねっ! ――お? また私を見たな? どういうことだ? どういうことなんだ? ヤるか? ヤんのか? あぁん!? ――いや、もしかしたら単純にワンコ先輩が年上好みかもしれないよ? ――あー、年上にリードされたいタイプかぁー、……うわ、マザコンっぽくない? ――ウチの負けやー、ウチがピチピチのティーンなのがあかんのやー! クリスマス所か大台を超え、近々大晦日を控えたコウコさんには敵わんのやー! ――ちょっ! アカネ、あんたッ! ――コウコさん! 待って! この子、動揺してるだけだから待って下さい! ――あだぁ! ――アカネ? アカネっ? アカネーっ! ――くそっ! バイタル低下っ! んメディーック!


 そして、聞いていても良いのかが分からないガールズトークらしきものが展開された。あと、僕のあだ名らしきものも聞こえた。ワンコ先輩ってなんだ。

 ……本当に、僕は聞いていて良いのだろうか?


「んんっ! ……失礼しました、ラチェット様」

「……いえ、お気になさらず」


 振り抜いた拳に闘気オーラらしきものを漂わせる女中頭ことコウコさんは、多分、僕よりも強い。怒らせないようにしよう。


「それで、ですね――」


 そんなコウコさんは、照れたように顔を伏せ――


 ――本当に、私で良いんですかっ?


「……」


 何か乙女みたいなことを言いだした。ちょっと、ぐっ、と来たことを記しておく。

 大悪魔めー。

 だが、僕が望んでいるのはそう言うリアクションではない。


「そうではなくて、ですね……」

「そっ、そうですよね! 三十超えた私なんかに、そんなこと――」

「いえ、コウコさんは魅力的な女性だと思います」


 泣き黒子とか、おっぱいとかがとても素敵です!

 あと、女の人は三十を超えてからが良いのだ。ガッ〇ャマンのリーダーである健もそう言っていたから間違い無い。


 ……話が逸れた。


 兎も角。この話題は兎も角として、だ。


「知らない人が傍に居ると、僕は寝れないタイプなので、就寝中は誰も近づけないで下さい」


 言うだけ言って、僕は歩き出す。

 何度も言うが、僕は純愛派なのだ。

 そう言うのは、要らない。



モノズ達が新しいスレを立てました!

【肉食系】我らが友の恋愛事情を観察するスレ5【現地妻←並乳】


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