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Doggy House Hound  作者: ポチ吉
猟犬
42/159

ワンショット/ワンキル

今日は四話同時更新(3/4)

 僕は、僕のモノズ達の質問に答えを出した。

 モノズ達は「ならば我らに任せておけ」と言った。

 迫撃砲の雨はもう降らない。

 十二機の僕の友人は今、眼下の戦場を駆け抜けている。

 携帯端末には、最後にやり取りしたメッセージが映っていた。


 宣言:必ず道を造ってこよう


 僕はそれを信じるだけだ。

 右でスコープを覗き込む。

 先に有るのは指揮官がいると思われるテントだった。

 左のヘッドセットに投影したミニマップの光点を見ながら、僕は世界を切り取った。

 息を、吸う。息を、吐く。大きくそれを三回繰り返す。

 痛む左足も、無視した。必要なもの以外の全てを捨てる。

 撃つ為の銃と、戦況把握のためのミニマップ、見る為の眼、引き金を引くための指、そして当てる先である的だけが有ればいい。


 イメージ。


 ただの白い世界にB型伍式狙撃銃がある。左目のミニマップで戦況を把握しながら、そのスコープを僕の眼が覗き、その引き金に僕の指が掛かっている。

 今はまだそれだけだ。

 音を拾う。

 誰かが近づいてくる音だった。誰かはトゥースの兵隊の様だ。

 狙撃手である僕の死亡確認、もしも生きていたら捉える為だろう。

 彼等は銃を構える僕を見つけ、銃撃を開始した。

 無いはずの頬を銃弾が掠める。肩に弾丸が突き刺さる。それでも僕は構えを崩さない。だから問題ない。

 邪魔なので無視をすることにした。

 音も捨てた。

 最後にルドの唸り声と、相手の悲鳴が聞こえた。だから大丈夫だ。きっと。

 時間が経った。

 どれ位かは分からない。

 未だに世界には銃と、マップと、眼と、指しかない。

 また時間が経った。

 不意に、ソレが映った。

 ミニマップに赤のタグが付けられる。

 右目が捉える。

 “誰か”から事前に聞いていたターゲットだった。慌てた様子で走っている。

 少しだけ“先”を狙って引き金を引いた。

 当たった。

 殺した。その瞬間、世界が帰って来た。







 ショットガンのバックストック叩きつけられる。伏せ撃ちの最中だったので、頭が地面に叩きつけられる。ボロボロになったルドが見えた。生きてはいるようだが、拙いかもしれない。


「ルドの、その仔犬の治療をさせて下さい」


 僕を打ち付けたトゥースにそう言う。

 キチン質の外殻を持つ二足四腕の異形だった。それでも言葉は通じる様だ。


「ッ! い、いや、それは、構わないが……自分は良いのか?」

「自分?」


 言われて、自分の身体を見る。

 ムカデに結構な数の孔が開いていた。血が流れている。痛い。


「できれば自分の治療もさせて貰いたいです」


 害意が無いことを示しながら、モノズ達を呼び戻す。大破が十機、中破が二機、死亡は無し。中破が丑号と未号だと言うのが有り難い。丑号は運搬が出来るし、未号は治療ができる。だが、そのモノズ達も何時殺されてもおかしくない状況だった。

 あぁ、と言うかシンゾーも取り押さえられているじゃないか。

 直前の戦闘ログを確認したらシンゾーはしっかりと牧羊犬をやっていたらしい。指揮官を追い出したのは彼だった。そして、そのシンゾーも無茶をしたツケを払っていた。


「後、降伏しますので、同僚とモノズを回収させてください」

「構わんが、狙撃手が捕虜になるとどう(・・)なるかは分かってるのか?」

「えぇ、まぁ、一応は」


 リンチにあって、拷問に掛けられて、「殺してくれ!」と懇願する。差し詰めそんなルートだろう。


「その割に、随分と落ち着いているな」


 四本腕がやけに警戒している。


「まぁ、指揮官殺しと言う目的は達成しましたので」


 勝負には既に勝っているから問題は無い。


「はぁ? 嘘つくなよ、何時だ?」

「さっきですが?」


 四本腕が慌てた様子で何処かに連絡を取る。五分程放置された。ルドを回収して抱き上げる。僕の匂いを、ふんふん、嗅いで安心したのか、眼を閉じた。慌てた。だが、心臓の鼓動が伝わって来たので、大丈夫そうだ。

 ルドも頑張ったようだ。周りに黒焦げの死体が多数ある。


「……今、確認した。お前、あの状況で当てたのか?」

「? あの状況が分かりませんが、当てましたよ」

「――――――――――――――――ッ!」


 酷く驚いた様子の四本腕。


「お前はあの時、撃たれていたんだぞ?」

「そうなんですか?」

「……それ以前からその犬の攻撃で周りは悲鳴が上がっていた」

「そうなんですか?」

「直前に、その犬を俺が地面に叩きつけて悲鳴を上げさせた」

「……それに気が付かないとか、少し正気を疑いますね」


 腕の中のルドをそっと撫ぜると、眠りが浅かったのか、眼を開いた。まだ寝てて良いよ、と頭を撫でてやる。


「……俺は大分前からお前の正気を疑っているよ」

「そうなんですか?」

「そうなんだよ! ……ったく、調子が狂うな。おい、気が代わったお前とその犬、それとお前のモノズには捕虜に成って貰う。勿論、治療もする」

「シンゾー……同僚は、どうなるのでしょうか?」

「……俺はお前たちがどうしてあそこの廃都市に居るかは知っている。守りがいるだろ?」

「助かります」


 僕は頭を下げた。

 こめかみを撃ち抜いた指揮官の首に僕のヘッドセットを掛け、気絶したシンゾーの横に転がしておく。

 この軍も引き上げるそうだ。手土産としては十分だろう。

 僕はトゥースのレオーネ氏族に捕虜として捕らえられた。

 多分、生きてここに戻ってくることはないだろう。

 最後だと思って、廃都市を目に焼き付け、歩き出した。


 一応、これで第一章が、完です。

 やっと主人公が本音をしゃべったなぁー、と思ってます。

 と、言う分けでこれから他人にしっかり関わって行って欲しいです。関われ。

 このままだと割と消化不良化と思いますので、続きもお付き合い頂ければなぁー。と、思います。

 ただ、二章はちょっと書き貯め期間を頂きます。多分、1~2ヶ月。なので、一応、完結にさせて貰いました。

 リハビリ的に書き始めた作品でしたが皆さんの、お気に入りやら、コメントやら、ポイントやらを励みに一応の区切りまで書けました。ありがとうございます。





 因みに次の話はただのおまけですので、本編とは関係あるけどありません。

 もし、モノズが好きなら覗いてみてください。


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― 新着の感想 ―
[良い点] モノズとルドが一緒なのは少し安心します! 本当にトウジがカッコよすぎる!!大好きです!!! [一言] 今後も応援しています!
[良い点] とても……とても面白かったです!第一章を読み終えた今あっという間に駆け抜けた気がします。 トウジがカッコよすぎました!!!大好きです!!!
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