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Doggy House Hound  作者: ポチ吉
猟犬
3/159

モノズ

 大型一機、中型二機、小型三機。

 それが僕の部下の種別。

 残り六機。

 僕が持てる部下の数。

 暗闇の中、指折り数えていたら、つい欠伸が漏れた。

 移動の為に詰め込まれたトラックの荷台は、あまり睡眠をとるには適していない。幌の隙間から漏れる光のせいかもしれないし、揺れるからかもしれない。いや、ただ単純に硬いからか。先輩社員の何人かがクッションや毛布を持ち込んでいた理由が分かった。僕も次回は持って来よう。

 起床の合図は未だ無い。ならばせめて目を閉じて居よう。そう考えて目を瞑った。

 半年の訓練で学んだことの一つに休憩の大切さがある。

 ダラダラ休んではいけない。きっかり休むのだ。

 そうでないと動かなければいけない時に動けない。歩兵にとって休憩とは神聖なモノなのだ。


「……」


 ――なのに。

 ピ、ピ、ピピピ! と電子音を上げながら座ったまま眠る僕の足元を転がる灰色の球体がある。僕の覚醒を感知して部下の一機が寄って来たらしい。

 モノズ。丸い金属製の人間の友。プラスチック盤の奥にツリークリスタルと呼ばれる生きた鉱物の眼球を持つ一つ目の彼らは空を見るのが大好きだ。

 そんな彼らは人間と契約して働いてくれる。

 人手不足なこの時代には無くてはならない労働力と言う訳だ。

 そして個人でモノズと契約できる数は決まっており、それは生涯変動しない。因みに僕は十二機のモノズと契約が出来る。

 差し当たっての初任務に向けてダブCから与えて貰ったのは三機だったが、ユーリが「心配だから」と三機追加してくれた。

 何れもボディは戦闘用モデルだが、ツリークリスタルにより命を持つモノズ達は、やれること、やれないこと、やりたいこと、やりたくないことが結構バラバラだ。

 取り敢えず大型の一機には荷物を積み込み、小型の一機に周囲の索敵を頼み、他は好きにさせておいた。その結果、一機がモーニングコールの任に付いていたらしい。


(彼は……索敵向きかな)


 何となく、そう思う。

 個性を見て、中のクリスタルと外側の殻の相性を合わせてやらなければならない。ユーリに言わせれば、部下であるモノズ達の特性把握こそが僕の『本当の』初任務だとのこと。

 初任務。そう、初任務だ。

 背骨がプラスチックになれば強化外骨格――ムカデが着られる。ムカデが着られるなら働け。

 それが我が社の方針だ。

 一応、訓練期間があるのでブラック企業ではない。多分。


「さっさと起きろ兵隊どもっ! 仕事の時間だっ! あ? 車酔いで起きれない? じゃ、死ね! 俺が殺してやる! 使えない屑どもめっ!」


 ……多分。きっと。

 突然の軍曹殿の乱入に、僕と違って未だ寝てた同僚の誰かが蹴り飛ばされてるけど。多分、きっと、めいびー……ブラックではない。

 まぁ、もたもたして蹴られるのも面白くない。欠伸を噛み殺し、結果として滲んだ視界の中、明かりだけを頼りによたよた進み、トラックから飛び降りる。

 降り立った地面は草木が無い赤色だった。この時代、緑は酷く少ないらしく、当然、会社から支給された野戦服もソレに合わせた土色だ。


「……っ」


 地面から、少し視線を上げるだけで、酷く太陽がまぶしい。出来ればヘッドセットを被りたい。あれのゴーグルはサングラスにもなる。だが、点呼が終わっていないので、被れない。伸びもできない。直立不動の姿勢を取るしかない。地味だが、辛い。


「各自、左手――前へッ!」


 軍曹の言葉に従い、左手を前に。埋め込まれたクリスタルにアクセスの感アリ。読み取りを許可。自分の技能が軍曹殿の手元のタブレットに読み込まれていく。これから更に持っているスキルによって班分けがなされるのだろう。

 因みに僕のスキルは――【潜伏:1】【狙撃:4】【モノズ指揮:1】――と、いった具合だ。ランクは1から始まり5が最高、1で一人前、5になれば達人。そんなんだ。そして、ダブCの新入社員なら五個以上の技能を持っているのが『普通』で、その上で一つでも2が有れば『使える』と判断して貰える。

 そう言う目で見ると僕は特化型と言う奴なのだろう。

 スキルの数で言えば落第モノ。それでも飛び出したランクのスキルがある。

 バリバリの近接型のユーリを担当官に持つ僕の才能は悲しいくらいに遠距離型だった。

 『ここまで露骨だと運用で間違われることはない』。それがユーリの言葉だった。僕は狙撃手として使われるだろう。僕自身にもそんな確信があった。


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