アメリカの『正義』
Justice has been done!
アメリカの正義はまたもや執行されたのである。
さる7日、地中海・シリア沿岸に展開した米駆逐艦2隻から射出された「正義」五十九発が空高く舞い、そしてシリア国軍基地に着弾した。
これが彼の国の「正義」なのだ。一主権国家に対する、一切伝達のない明確な侵略行為。国防という国家の基幹を標的としたテロ行為に等しい。
そもそも、米国を筆頭とした欧州が支援する反政府派というのは、言うなればテロ集団だ。統治している政府に対して戦闘行為をしているのだから、それは内容如何に関わらずそのようになる。そして、欧米の反政府派に対する支援が、結果として今回のような惨事に繋がったのである。
圧制を理由とした「正義」の支援であったかもしれないが、それによって内政が乱れ、無為に人が死ぬのは誰のせいか。政府が悪いという西側の論調もあるだろうが、しかし欧米の支援による抵抗の長期化が、結果として早期解決を望む政府軍の「化学兵器の使用」を招いたことには違いがない。そして何より。その攻撃の根拠である「化学兵器の使用」はまったくもって、少なくとも今の時点では、政府軍の犯行とはわかっていないのである。しかし、調査するべきだ、などといった安保理などの意見を一切無視してアメリカは今回の攻撃に踏み切ったのである。米国連大使は安保理で「安保理で否決されるなら独自の行動をする」といってのけた。これはどのようなことか。
これはまったくもって国際秩序に対する挑戦という他になく、国連や安保理といった存在を蔑ろにする到底許容しがたい蛮行だ。彼の国の大統領曰く、「かわいらしい赤ちゃんが殺された」。そう、かわいらしい赤ちゃんが殺された、だから攻撃したのだ。無論、それは感情的アピールであって公式には「自衛権の行使」ということである。攻撃されるリスクもないような国で科学兵器が使用され、それに対して自衛の攻撃とは実に面白い理論である。米国連大使は「完全に正当化される」と声高に叫んだ。つまり、法的根拠は関係なく、感情的にどうであるか、という理論だ。
しかし、これがポピュリスムだ。今回の攻撃決定は、そもそもアメリカの世論がある。このような残虐な行為は許せない、正義の鉄槌を下すべきだ、という世論だ。そしてそれに、大統領就任以来思ったように政権運営や法案通過がうまくいかないトランプ政権が反応したのである。オバマ大統領は過去にシリアで同様なことが起きた際、実際的な行動を起こさなかった。それと対照的印象を民衆に与える機会としてはまさに絶好だったのだ。
つまり、今回の攻撃というのは反体制派への援護でも、シリア政府への宣戦布告でも何でもない。ただのアメリカ国民に対する「アピール」なのである。そのような「アピール」の為だけに、内戦状態で混迷極まる国へミサイルを撃ち込む。これが彼の国の「正義」なのである。
そして今、トランプ政権は北朝鮮に対しても同様の圧力をかけている。もし北朝鮮にまで「正義」が執行されればどうなるか。ただ日本と韓国のみが危険に晒されるのである。嗚呼、素晴らしき哉同盟国。
今回のアメリカによる蛮行は、実に国際情勢を危険なものにするのみならず、北朝鮮に正当性を付与さえしている。シリアは核を持っていないから、ミサイルの雨が降ったのである。では核を持っている北朝鮮はどうか?ミサイルの一発でも撃ち込めば核による報復があるとわかっているから、未だに攻撃を受けていないのである。もし仮に北朝鮮が攻撃される日が来れば、それは東アジアの平穏の幕引きとなることだろう。
私には、今回「化学兵器」を根拠に正義の遂行をしたアメリカの姿が、「大量破壊兵器」を根拠とした時のブッシュ政権と重なり合うように見えるのだ。




