五夢 異世界:Ⅴ
…………ん?真っ暗だな。何も見えないぞ。どうやら俺は真っ暗な闇の中に1人で立ってるみたいだ。全然見えないけど。
お⁉︎いきなり明るくなった!
「おや?お目覚めか?」
暗闇の中から1人の男がカツンカツンと靴音をたてて現れた。
「お前は!」
「思い出したか?久方ぶりだな……クックック……」
気味の悪い笑い声を暗闇に響かせながら近づいてくる。その男には見覚えはあったが、セオリー通りいかせてもらうぜ!そういう小説なんでね。
「どなたですか?」
「そうくると思ってたさ、なんせ俺はお前なんだぜ?自分のすることぐらいわかるさ」
「だろうな、それくらいバカな俺でも分かるぜ!それより、なんで現れた!」
こいつが現れるとろくな事がない、前だってそうだった。あいつのせいで妄想が夢のなかで悪夢に変化した。
クソ!俺最強美少女イチャイチャハーレムルートだったのに!
「また下らない事を考えてるのか……ハッ」
「鼻で笑うな!そしてバカにするな!俺のくせにウザすぎだ!俺はもうちょい爽やかだ!」
「戯言をほざくな、俺はお前のまともな部分とネガティヴでできてるんだ。俺はわざわざ現実の見えていないお前に現実を見せようとしてるんだぞ、さあ!見ろ!これが現実だ!」
眩しい光が暗闇の中できらめき、だんだんと大きくなっていく。
「眩しすぎて見えないぞ!おい!俺!どこだよ!」
目が光に慣れてきた。光の先の景色が目に映る。
「いや……学校じゃん……」
そこは見慣れた、いや、今となっては久しぶりといえるだろうが。時間帯は多分夕暮れか……なんでこんな所に連れてきたんだ俺は…………ん?ていうかここって!
「話って何?」
やっぱりかよ……性格悪いな!俺!
「ねえ!聞いてる?」
しかし!これはチャンスだ!夢の中だとしてもあの時の失敗をやり直せるからな!ザマァ俺!
「あ、あ、あの……」
「何?」
おい!なにキョドッてんだ!俺!まさか!あれを繰り返させるつもりか!くそう!
「だから何?」
「ああと、ええと、その……」
そうだよ!早く言えよ!俺!って伝わらないけども!
「実は春の事が……」
「私が?」
こいつの名前は斉藤春芽俺をフッた女というか幼馴染だ、まず幼馴染がいるだけでも勝組だと今は思う。可愛かったし。うん、いるだけでよかった。うん、絶対そうだ。多少は話しかけてくれてたし。
「春がす、す、好きです!」
「あ、ごめん、聞いてなかった。ちょっともう一回言って。ホントゴメン」
「あ、あの、春が好きって言おうとして……その……」
「え、無理だけど」
ハイ!終了〜!終わりでーす!ハイハイもういいから!いいよもう!やめて!傷口を抉らないで!死んじゃう!
「私のことそういう目で見てたんだ……言っておくけど、オタクはイヤっていうか、そういう目で英くんを見た事ないし、どちらかというと遠い親戚的な?」
「え、あ、あの」
「じゃ!私用事があるから!じゃね!」
「あ、うん、バイ……バイ……」
はあ……これを見せる為にこんな事したのか……。
「おい!出てこい!俺!」
「…………おやおや、気付いたか?」
「そんな精神攻撃効かないぜ!」
「顔色悪いぞ?大丈夫か?」
「そんな事ない!決してだいじょばない!」
「どっちなんだ……やれやれ、だがずいぶん効いたみたいだな!現実を見てみろ!これが惨めなお前の現実だぞ!」
「うるさい!現実なんて見たかない!」
「はあ……もういい……周りを見ろよ……」
「何を言ってんだ……ってナニコレ?」
周りには大量の気持ち悪い虫がうじゃうじゃと俺を囲んでいた。
何これ!怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!
「やれ」
「ちょ、何言って……って、いやあああああああああああああああ!虫の感触がああああああああああ!かじ、齧られてるうううううううううううううううううううう!」
「未だ、鍵は見つけられず、か……」
虫達に喰われて薄れゆく意識の中俺の声が聞こえた、鍵ってなんだ?って痛い痛い痛い痛い!バカバカバカバカ!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!
「いやあああああああ!ああ……虫の感触が……」
それより俺の言ってた、『鍵』ってなんだ?悪夢に関係ある事か?もしかして脱出の鍵って事か⁉︎
その日は虫がさらに嫌いなり、希望が見えてきた。