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Epilogue⇒Prologue

一体どれだけの時間、年月が経過したのか、最早私には分からない。


少なくとも50年ほど、様々な世界を彷徨い、その度に殺されかかり、殺して、壊してきた。

私の名前は…一番古い記憶では、私は藤森椎奈という、女子高生だった。

とても大きな胸と、長い身長だったけど、どうにも目立つのが嫌だった。

幸いにも、あるいは不幸なことに私は全く目立たず、たまに水泳や身体測定の度に男子の注目を

浴びる以外は、声をかけられることもなく、ただただ読書を楽しんでいた。


今は…ディートリンデ。ディートリンデ・ウェステッド。

最強最悪の魔物「ウェステッド」の最後の生き残り。

何故こんなことになってしまったのか。その記憶は曖昧で、でも誰かを助けなければと思った

感情は鮮明に残っている。それが友達なのか、家族なのか、名前も知らない人だったのかは、分からない。

そうして私は誰かの代わりに死に、別の世界で転生した。

ウェステッドという、その世界で最も恐ろしい怪物へと。


その力は、魔法とか、呪いとかではなく、鎧をいとも簡単に粉砕できる虫の脚のような腕。

何処までも伸びていき、透明にすらなれるムカデの様な触手。

カマキリの鎌のような盾も、鎧も、剣も、持ち主ごと刺し貫き破壊する腕。

口のどこに収納されているのか、想像もできない、ムカデの様な触手と、一対の細い虫の腕。

右手を裂いて現れる、拘束と拷問を可能とする無数の腕。

そんな怪物の使えるパーツだけを取り込んだ、人間の姿をした怪物。

それが私が転生した、ウェステッドという怪物だった。


お腹が空いた。ウェステッドになってからというものの、私の理性は次第に食欲に包まれるようになった。

同時に、何もかもを壊してしまいたい衝動にも支配されるようにもなった。

こうして見つけた紙とペンに言葉を遺している間にも、私の、なけなしの理性はどんどん、どんどん

なくなっていくような気がして、怖い。


あの世界から脱出する数週間前の記憶は完全にないが、元の世界へ

家に帰りたいという気持ちを強く、執着するように持っていたのは覚えている。

学校でいつものように、誰とも話さず、誰にも構われず、普通に本を開き、読みたかった。

家に帰り、何気ない会話を家族として、夕ご飯を食べて、お風呂に入って、テレビを見て、そして柔らかい布団に入って眠りに就きたかった。


私の願いは叶う事もなく、数日間の記憶が完全になくて、気がついたらどことも知れない世界に立っていたことを見るに、どうやら私は、別の世界に転生したか、別の世界に転送されたのだろう。


そしてその時に強く思っていたのは、安住の地。

何処にあるか分からないし、もしかしたら私は永遠に全ての世界から拒絶されてしまうかもしれない。

だけど、きっとあるはずだ。私が、誰にも迷惑をかけずに、過ごせる世界が。


その場所に辿り着くまで、私は生き続ける。


Dietlinde Wasted

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