表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界と鍵  作者: はぐれメタル
16/16

アリス



ーー神の間ーー




本来 静寂に包まれているはずの神の間に、この日は幾多の悲鳴、それに次ぐ爆音が響き渡った。




『も〜、なんの騒ぎなのさー?


穏やかに爪を研いでたってのにまったくー。』



入り口から最も奥の広間にいる人物がそう呟いた。



その男の名前はゼウス。



この世界を創り、人々を前世界から連行してきた張本人。




『‥‥まぁ、大体は察しが付いてるんだけどね☆


こんなところに結界をぶち破って乗り込んで来る変わり者、僕は一人しか知らないし。』




爆音は次第に奥の部屋に近づき、ついにドアを吹き飛ばす。





『こんにちは、久しぶりだね〜



元気してた?アマテラスさん。』




彼の視線の先には、両手に焼け焦げた神官の襟を掴み引きずる 一人の少女が居た。



艶やかな黄金の髪を携え、白いワンピースのようなものに身を包む。



彼女は太陽神、アマテラス。




「やっほーゼウス、相変わらず神官の数多いねぇ。

どつくのに時間かかるから減らして欲しいって言ったじゃんかー。」




『どつかれる前提で神官を見張りに置いてるわけじゃないんだよ?』




上辺は気の抜けた会話だが、お互いに心を許しているわけではない、むしろ逆ーー憎しみあっていると言っても過言ではない。


笑顔の裏には多くの感情が渦巻いていた。





『‥‥で、何しに来たのさ。


喧嘩でも売りに来たの?』




「んー‥当たらずとも遠からず、って感じかな。


で、お探しの物は見つかったの?

【神擬き】の器は。」




『君に言う筋合いはないと思うんだけど。』




「連れないなぁゼウス、一緒に育った仲じゃないか。」




『‥‥僕はもう、君を家族だとも友だとも思ってない。


潰すべき《敵》だ。


あの日から、ずっと。』




彼の目には、底知れぬ憎しみが浮かんでいた。



『君が彼女を‥アリスを殺したんだ。』




「‥‥やっぱりまだ諦めてないんだね。

禁忌と知りながらも生き返らせるつもりなの?」




『当然じゃないか。

‥‥そのためにこの世界を創って、彼らをこの世界に連れて来たんだから。』




「そっか‥‥けど、君だけのハッピーエンドなんて アタシが認めるとでも思ってるの?」



笑顔の彼女はいつも通りの口調でーーしかし、確かな邪気を含め そう言った。




『邪魔するんだね、アマテラスさん。


何もかもを自分の手の内に置いておこうとするその感じーー


昔から、大嫌いだ。』




憎しみを露わにするゼウスの手に、眩い光が灯される。




「知ってるよ。」



同じくアマテラスの手にも輝きが生じ、姿勢を低く構える。



両者の光に共通するのは、互いを潰すという殺意が込められているということだった。






刹那ーー両者の手がぶつかり合い、激しい衝撃が発生する。




神の間の壁に亀裂が入り、崩壊が始まる。



僅か数秒間後、その輝きは収まった。





『僕は君を許さない。


邪魔するつもりなら、徹底的に潰すよ。

君のお仲間も含めてね。』




「あはは、あの子らは仲間じゃないよ、利用してるだけさ


アリスの復活は絶対に阻止するよ。



今日はそれを言いに来ただけ。」





彼女は振り返り 来た道を戻る。



その姿は爆煙の中に隠れ、消えていった。





『ゲリラ豪雨みたいな人だなぁ相変わらず‥』


彼はため息と共に呟き 壁にもたれかかった。

すると突如、壁に指紋認証のマークが浮かび上がる。




『怪我でもしてたら どうしてくれるんだまったく』



一人でに呟き、ゼウスが手を翳すと、壁が綺麗に消滅する。




奥の空間に現れたのは、一つの大きなベッドだった。


その周囲には、美しく それでいて落ち着いた印象の花々が整えられ置かれていた。


丁度、棺に花を備えているように。




その中央に横たわる人物は、透き通るような肌にブロンドの髪を持ち合わせた少女。



暗闇に包まれたその部屋の中で、彼女の姿だけが光り輝いているかのように隔離されている。




『怪我はないかい、アリス。



‥‥もう少しだよ、もう少しで 君の待ち望んだ世界が完成するんだ。



あとは【神擬き】の器と、どこかに憑依している君の精神さえ見つけ出せればーー‥‥』




ゼウスは、少女の手を強く握りしめた。




『絶対に邪魔はさせないよ‥‥アマテラスさん』




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ