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世界と鍵  作者: はぐれメタル
15/16

距離





なんて身勝手な言葉なのだろうかーー


けれど、それが私の本心だ。






少しの間の沈黙の後、蒼は口を開いた。





「‥‥分かったよ、約束する。


その代わり、その‥‥





これからも、俺と一緒に居て欲しい、。」




俯きながら、彼はそう呟いた。



嬉しさが込み上げて、それは笑顔に変換される。



「うん‥‥!!」




「あの、あと、手‥‥」




手?



そう言われ、ふと自分の手を見下ろすとーー







蒼の手に、私の手が重なっていた。








「うわぁぁああぁぁあごめんごめんごめん!!!」




瞬時に顔が紅潮し、頭が真っ白になる。





一体いつの間に‥


恐らく、私が蒼に怒鳴ったときに昂ぶって重ねてしまったのだろう。



とてつもない羞恥心に襲われ、居ても立ってもいられなくなってしまう。




「え、えっと、じじゃあもう部屋帰るね!!

おやすみ!!」



私はそそくさと立ち上がり、部屋へ向かおうとした。


が、呼び止められる。



「な‥七瀬!」



「ふぁいっ!?」



声が裏返った。なお恥ずかしい。




「その‥ありがとうな」



月明かりに照らされた彼は、少し照れながらそう言った。






ーーーーそうだ。



蒼に言いたかったことがあったのだった。



前はちゃんと言えなかったが、今なら勢いで言えるかも知れない。





後悔するだろうか?


いや、自分で動かなければ、なにも変わりはしない。



言うんだ。




「‥‥ねえ、蒼。」




「‥‥?」






「あのさ、今日は神官のせいであんなことになっちゃったからさ‥


明日、埋め合わせしない?



街探索‥‥‥今度は、二人で。」




言った。言えた。



顔から火が出るほどに緊張している。

けど、言えた。



これはきっと進歩だ。





「わかった、10時に校門前でいいか?」





「う‥うんっ!」



蒼と、心の距離が縮まった気がした。


この夜のことはきっと忘れないだろう。





「じゃあね、おやすみ!


ーー‥‥春樹!」




下の名前を呼ぶだけでこんなにもこそばゆい。



頬が緩み、笑みが零れる。




やっぱり、好きだ。




私は振り返ることなく、寮へと軽い足取りで走って行った。



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