黄金の髪
ーー蒼 春樹ーー
「いっ‥‥てぇ‥‥‥!!!!」
足が、何かに貫かれる感覚。
俺は一瞬で悟った
俺たちは今、神官の襲撃にあっていると。
撃たれた足に目をやると、貫通した部分から多量の血が溢れ出している。
激しい痛み。
早くも、頭がクラクラしてきた
周囲から、複数の悲鳴。
神が作り出した人でも‥‥そういう感情はあるんだな‥‥
「あっ‥‥蒼!蒼!!」
同時に
ーー‥‥七瀬の声
これが神官の襲撃なら、すぐに俺に接近してくる筈だ。
何せ 狙われたのは、俺が神であるカグツチと接触したことが原因なのだから。
七瀬が俺の関係者だと知れたら、紗理奈のように襲われるかもしれない
だからこそ神官が来る前に、七瀬を‥‥
「‥‥‥七瀬‥‥‥‥」
「‥‥!蒼!!」
「‥‥ここからーー逃げろ‥!
今すぐに‥‥!」
「は‥‥!?何‥‥言ってるの‥‥!?」
「‥‥多分もうすぐ、神官がここに来る
この前話した、ゼウスの刺客だ
七瀬も巻き込まれるかもしれないから‥‥
ーー早く‥‥!」
これ以上、友達を巻き込めない。
これは俺の、勝手な事情なんだから‥‥
「‥‥‥嫌だ」
なっ‥‥
「何言ってんだ!!早く逃げろ!!」
「‥‥友達を置いていくなんて 出来ないわよ‥」
その時
後方から、巨大な羽音がした。
振り向くと
純白のコート、同じく白のボトムス。
髪は赤で、オールバック。
体型は細め。
そんな男性が、翼を背に立っていた。
「‥‥蒼 春樹、だな」
男は冷たい声で言った。
ーー神官。
俺は足を撃たれたせいで 立ち上がれない
つまり、逃げることができない。
ーーこの状況で、神官に太刀打ちする手段なんて一つしかない
俺は制服のポケットを探り、ドクロの鍵を取り出す。
‥‥カグ、頼む‥‥!
鍵を握り締めた
その時だった。
俺の右手に衝撃が走り、鍵が遠くへ弾き飛ばされる。
衝撃の正体は、赤髪の神官が放った紫のレーザーだった
それは俺の鍵だけを狙い、弾き飛ばした。
「お前が炎神カグツチを呼び出すのをーー私が大人しく眺めているとでも思ったか‥‥?」
ーーマズイ‥‥!!
鍵が弾かれた
これで、カグを呼び出せなくなってしまった。
このままでは、死を待つだけ
万事休すかーーそう思った
その時
倒れる俺の前に立つ、一つの人影
ーー七瀬
「何やってんだ!逃げろって言っただろ!!」
「嫌だ、って言ったでしょ」
そう言った彼女の声は とても震えていた。
「絶対 見捨てたりなんかしない」
何言ってるんだ
震える程恐いのなら、逃げろよ
頼む
逃げてくれ
「私の前に立ちはだかるか‥人間」
「‥私の友達に‥手を出さないで‥!!」
声を振り絞り、彼女は言った
「そうか
それが貴様の遺言でいいのだな?」
そう言った赤髪の神官は、右掌を七瀬にかざす。
掌には、邪悪な光が灯される
やめろ
俺は
自分のせいで
友達が殺されるところを
こうやって黙って眺めてることしか出来ない
どうしてこうもーー
俺は、無力なんだ
「死ね」
神官の掌の無情な輝きが、頂点へと達する
ーー動け
俺の足
立って
七瀬を助けないといけない
なのに
どうして動かない
このままじゃ
七瀬がーー‥‥
思考とは裏腹に、身体は全く言う事を聞かない。
誰か
誰か‥‥!!
七瀬を‥‥!!
男の右手から、レーザーが撃ち出されようとした
その時だった
疾風の如く現れた
髪の長い、1人の女が
赤髪の神官の、頭部右側を
音高く、蹴り飛ばした
「おっと~‥‥危機一髪、って感じかなー??」
黄金の髪を優雅な動作で後方に払い、彼女はそう言った。
「みなさん、ごーきげーんよーう☆」