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奏いんぐ

靴下くんの策略(2)

作者: 猪口暮露


まずは外堀を固めてみようと思う。



恥をしのんで彼女の友人に彼のことを話し、それとなく藤堂の話題を振ってもらうことにした。











「奏知ってる?藤堂くんの家って金持ちらしいよー」


「へー。それより沙織、次の時間の国語の宿題見せて」









「この間の中間テスト藤堂くん一位だったんだって!!」


「凄いね。で、百合は赤点何個あったの?私は1個だけだった」


「三個…」











「きゃー!凄いよ奏!藤堂くんが点入れた!!」


「ほー。朱理、集中してないと顔面にボール当たるよ、ていうか当てるよ?」










「……。」



その後何度か同じようなことを繰り返すも彼女の反応は変わらなかった。







き、興味すら持たれていないだと… !











偉大なる昔の人は言った。


『失敗は成功のもと』だと!!




というわけで気を取り直して次の作戦へ移ろうと思う。




名づけて“偶然を装って彼女に近づこう!”だ!!





内容はその名前のとおり。彼女の通り道に藤堂を出没させて挨拶を、あわよくば会話をしちゃおうぜ!な作戦だ。




彼女の帰宅時間、休日の過ごし方や習い事の日時を彼女の友人を介して入手。




作戦を知った藤堂は「これってストーカーになるのかな…?」と尻込みしていたが全力で安心させておいた。






(大丈夫だ藤堂。捕まるのは俺じゃない)







とりあえず彼女が入部している手芸部に行かせてみた。





ガラガラ


「こんにちは、部活見学に来ました」





「入部希望?こんな時期に珍しいわね」


「あ!あなた2年の藤堂くんじゃない!?」


「あの成績張り出してるのに乗ってる子?」


「そうそう、いつも上位に乗ってるよね」


「あ、私も知ってるー!」


「何々、手芸に興味あるの!?」


「お姉さんが手取り足取り教えてあげようかー?」


「ちょっとあんた何言ってんのよー」





「えええと、あの…」






結果。



黙々と作業を進める澤村さんと話す機会が無いどころか視線すら一度も合わなかったらしい。




部活終了と同時に教室に駆け込んできた年上のお姉さんに囲まれすぎて青ざめている友人を宥めながら次の作戦を考える。










ある週の金曜日。彼女が帰りに学校近くの手芸屋によるとの情報を得て早速現場に向かう。




藤堂が掃除当番だったせいで若干時間が空いてしまったが、その店に着いてみると彼女は毛糸とにらめっこしていた。




偶然を装って挨拶するために彼女の居る場所の隣の棚でスタンバイ。あとは彼女が毛糸を持って出てくるのを待つだけだ。





「こっちの黄色にしようかな…でもこのレモンっぽいのも…」


「……」





「うーん…やっぱ白にするかなぁ」


「……」






「いっそ思い切ってオレンジとか…」


「……」






「うん、これにしようかな」


「…!!」

(ドキドキ)



「…やっぱ変えようかな…?」



「!?」

(ガーン!!)







結果。




そのまま1時間が経過し、彼女よりも先に藤堂の心が折れたため帰宅。











(く…、なんて手強い女だ!!)





その後もあれやこれやと策を巡らせてみるも毎度彼女はそれを華麗に避けてくれた。




というか。




(単に藤堂のメンタルが弱すぎるだけな気が…)




まあそこは藤堂だから仕方ない。そもそも藤堂のメンタルが強ければ澤村に直接話しかけることだって可能な筈なのだから。










もう打つ手なしかと思った時にそれはやってきた。




神は彼を見放さなかったのだ。






夏休み直前のある日の6限目。


文化祭役員を決めるHRの時間に彼女はこくり、こくり、舟を漕いでいた。






それを見た瞬間に俺は閃いた。

役員は男女一名ずつ。


彼女と彼を役員にしてしまえば嫌でも会話するだろってな!




ノートの切れ端を破り彼と彼女の友人にそれを伝える。




藤堂は勿論、今までの作戦の一部始終を知っている彼女までも流石に藤堂が不憫だと思ったのだろうか。



ちらりと憐れむような視線を藤堂によこして、快く承諾してくれた。







藤堂と澤村は無事役員になった。

黒板を見つめ困った顔をする彼女と対照的に彼の顔には笑顔が浮かんでいた。











準備期間中、友人たちに手回しをしてあえて二人きりにしてみた後日、ようやく友達になったとの報告を貰った。




「良かったな」と言うと嬉しそうな笑顔を見せる友人に、俺は今日もまた靴下を手渡した。





ここまで見て下さりありがとうございました!

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