ましろ
吐いた息はどこまでも白く伸びて行って、ある瞬間消える。
その瞬間が、少し物悲しい。
けれど、そんな景色を映す冬が、私は大好きだ。
「ねぇ、このまま飛びたいって思う事無い?」
「何だよ、突然。」
まぁ、特に意味はないのだ。
思春期特有の、軽いうつ症状だと捉えてもらって構わない。
そう話せば、案外真面目に考えて、ゆきは答えた。
「飛びたくは、ないかな。」
「理由は?話したくなければ、構わないけど。」
少し、ほんの少し意外だった。
ゆきは、私よりも飛びたいと考えているだろうと、即答とまではいかなくとも、それ位の早さで答えてくれるだろうと思っていただけに、驚きは隠せなかった。
「別に、鈴が思うほど、深い考えは無いよ。」
ゆきは、ほんの少しだけ口元に笑みを乗せると、そう言った。
では、深い考えでないとするなら、どんな考えなのだろうか?
「飛んだら、鈴に会えなくなる。」
「それだけ?」
「それだけ。」
何ともあっけない回答。
「あっけないけれど、僕にとっては何より大切なことだよ。」
「そんなものかしら?」
「そんなものですよ。」
ゆきは、ほうと息を吐く。
それは、高く高く白く色付いて、そして消える。
「あぁ、本当に飛ぶつもりはなかったんだけどなー。」
「さようなら、鈴。」
ついさっきまで隣に腰掛けていた少年は、そこにはいない。
まるで、始めから誰もいなかったように、一人分の隙間を作ってそこは空いていた。
「飛ぶつもり、ないって言っていたのに・・・」
はらはらと降る雪は、彼の涙だろうか。
私は、ただぽっかりと空いてしまった空間に、そのまま寝そべって空を見上げた。
「来年も逢えるか?ゆき・・・」
その昔、豪雪地帯にありながら、冬でも雪があまり降らぬ山があった。
そこには豊かな土壌があり、作物が鈴なりに実る事から、鈴鳴様と呼ばれる神が奉られていた。
鈴鳴は、もう一度息を吐く。
その白は、とても暖かだった。
人の恋愛は苦手な作者です。




