残酷な教師のテーゼ
僕たちは、ライブが決まったということで、とことん練習に打ち込んだ。
ただひたすらに。
そして、ここで注意してほしいことがある。
僕たちは、今中3で、冬で、とにかくいろいろ切羽詰った時期だ。
そろそろ、どこの高校にすすむか決めなくちゃいけない。
もちろん僕の進路は決まっていた。が、しかし、叶や舞さんはどうするのだろう?
別に一緒の高校に行かなくてもいいが、その場合、TAIは解散ということになるのでは?
別に僕は、かまわないけど、かまわないけど、もうちょっといいバンドになれるんじゃないか?
このバンドは、練習すればするほどうまくなっていくと僕は思う。
だから、このバンドが解散するのは少し、名残惜しいような、、、
それだけじゃない。もちろん、叶や舞さんと離れるのがつらいというのもある。
これは、友情的な意味が99パーセントを占めている。
べ、別にそんな、やましいことなんて考えてないんだから!
そんなことを最近僕は考えていた。
けど、あえて気づかないふりをしてきた。
みんなが練習にただひたすら打ち込めるように。
そんな時、、、
教師というのは、残酷だ。
あまりにも冷酷すぎる。
いつものように、練習を終え、ライブまで、あと4日。
そして、音楽室から、みんなで帰ろうとした瞬間に、教師が現れた。
3年生の学年主任だ。
「おう、お前ら。まだ学校にいたのか。そろそろ鍵閉めるから、さっさと出なさい。」
そこまではよかった。
「はい」
と、それぞれに返事をした、次の瞬間!
「そういえばお前ら受験生だよな~。進路決まったのか?」
その言葉で、叶と舞さんの表情が、少し変わったのに気がついた。
「まあ、きっと決まってんだよな。そろそろ決めないとまずいしな。」
叶と舞さんの額から、大量の冷や汗が湧き出してる気がする、、、気のせいか?
「受験勉強がんばれよ~」
そして、教師は去っていった。
このリアクションからして、進路なんてまったく決まってないという感じだった。
「ま、まあでも、修司も舞も進路なんて決まってないんでしょ?」
「も、もちろんだ。修司くんもだよな?」
二人が、苦笑いしながら聞いてくる。
仲間を作って安心しようとしているようだ。
「僕は進路は決まってるよ。」
僕は、正直に答える。
ここで、嘘をついてもよかったが、僕は正直者だから嘘はつかない。
叶と舞さんが、ガーンっていうSEが後ろでながれそうな表情をする。
「修司はどこの高校に行くの?」
叶が気を取り直して、苦笑いしながら聞く。
「えーっと、、、S高あたりを目指そうかな?と思ってるけど。」
叶と舞さんがあからさまに驚く。
「あんな頭いい学校を受けるだと?!」
舞さんが叫ぶ。
別に、普通の進学校レベルだけどね。
「じゃあ、勉強しなくちゃ!」
叶がなぜか張り切りだした。
「TAIは絶対に解散しないから!」
いまから勉強してどうにかなるレベルなのか?
っていうか、舞さんもいつの間にか勉強することになってるけど?
舞さんは、あからさまに無理無理と心の中で言っていた。