個人練習
とりあえず、個人個人のレベルアップを図るために個人練習をすることになった。舞さんはヘッドホンをして曲のテンポにあわせながらドラムをたたく練習をしてるみたいだ。叶は窓の近くで、ギターのレッスン本みたいなのを読んで、、、あれ?さっきまで、ギターの弦を押さえながら練習してたはずなのに、フリーズしてる、、、。
大丈夫かな?と思って、叶に近づいてみると、叶はスヤスヤと寝息を立てていた。ちょっと、かわいいなと思ってしまった。しかし、それでは練習にならないので、気はひけるが、起こす。
「叶!起きて!」
肩を揺すってみる。
すると、一瞬、目の前が真っ暗になった。
「ガハッ!」
叶のパンチが飛んできたのだ。痛い。
舞さんが、僕が叶に殴られたのに気づき、「大丈夫か?」と声をかけてきてくれた。とりあえず「大丈夫です。」とだけ答えた。叶に目をやると、まだスヤスヤと寝息を立てていた。もしかして、さっきのパンチは、防衛本能で殴ってきたの?軽く驚きだ。
「起きて!叶!!」
今度はさっきより大きな声で、呼んでみた。すると、
「ふぇ?あさですか?おはよ~」
と完全に寝ぼけた感じで、叶が返事をしてきた。
「もう、夕方だよ!っていうか、練習するんでしょ。」
そういったら、ハッとしたような顔をして、
「いかんいかん、私としたことが眠っていた。」
叶が軽く自分のでこをこつんこつんとたたく。
「おお、修司!修司に聞けば分かるかも。」
と、突然言い出して、ギターのレッスン本を開いて、見せてきた。
「ここが、分からないの。教えて。」
と、コードAの弦の押さえ方が書いてある部分を指差した。僕は、一度、ギターを弾けるようになろうとしていたときがあったので、それくらいは知っていた。
「ギター貸して。」
叶のギターを貸してもらう。
「ここと、ここと、ここをね、、、」
コードAの弦の押さえ方をやってみせる。そしてギターを返す。
「ここと、ここと、ここか!」
叶が、さっきの弦の押さえ方らしきものをやったが、少し違っていた。
「違うよ。ここだよ。」
僕は正しい位置を指差す。
「ん?違うの?わかんないよ!」
僕は、叶の指を正しい位置に手で握って動かした。少しどきどきする。叶の指は細くて、やわらかくて、、、やばい、これじゃ、ただの変態じゃないか。あくまで、教えるため、教えるため。
下心100パーセントで叶えの指を、動かすと、
「なるほど、ここかー!」
と、叶が子供みたいに喜ぶ。
「ありがとう!」
と、叶がにっこりと笑ってこちらを見る。
軽くキュン死しそうだった。
その後、しばらくそれぞれで練習して、帰ることになった。